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番外編.4 A day of rest -royalside

「つっかれたあああ!!」


 セインティア王国王子の執務室で、近衛騎士のアランはソファに倒れ込んだ。

 砂漠の王の一件や、王宮に魔王を侵入させてしまったこともあり、最近は警備が強化されている。王はまた王妃と共に外交訪問に出てしまうため、警備責任は王子ラセインと、その近衛騎士であるアランだ。

 ただ、書類に追われるラセインとは違って、アランは直接警備配置を確認したり、担当者と打ち合わせたり、元々の騎士団の訓練などもあったりーーとにかく身体を動かす事が多い。加えて対魔法での警備のため、日々強くなる魔法障壁も、彼の魔法感知能力に負担をかけている。仕方ない。他ならぬ主君のためだ。

 

 その主君はアランを何か言いたげに見た。


「何スか」

「お前、働き過ぎじゃないのか」


 自分の頬を指差してみせる王子。顔色が悪いと言いたいらしい。


「大丈夫っすよ。それにあとでセアライリアのところへ……」


 はっと口を押さえた。しまった、つい。

 最近ツンデレのデレ具合がいい感じに増して来た、美しい恋人のことを、つい二人きりのときのように呼んでしまった。


「……セアラ様に、呼ばれているので」


 弟王子の顔が、見られない。

 しばらくの沈黙の後。


「そうか。じゃあ少し休んでいると良い」

「えっ!?」


 耳を疑うような、優しい甘い声に。

 アランの隣に座ったラセインが手を伸ばした。彼の頭を引き寄せる。


 は!?何、どゆこと!?

 恐れ多くも世継ぎの王子が、ラセイン様が。国民人気絶大な、聖国の太陽が。

 俺に、ーー膝枕してる。


 焦って見上げれば、ラセインがにっこりと微笑んだ。


 何、すっげえキラキラの優しい笑顔をしてる。

 眩し過ぎてなんだかくらくらする。何これ、至福なんですけど!

 そりゃ本当はセアライリア様にやってもらいたいけど、ラセイン様は姉君にそっくりだし。

 それでなくてもこの距離は、王子が主君からいきなり幼馴染の弟に戻ってくれたようで。やばい、幸せすぎる……?


 大混乱のアランは、固まったまま動けずーー。



 ゴトッ……ガラガラガラ……。


 重いものが落ちて転がる音。

 見れば開いたままの部屋の扉の傍で、パカンと口を開けて固まる、聖国の金の薔薇こと美貌の王女と。


「姫様、お気を確かに」


 その隣で冷静に彼女が落とした魔法道具の水晶を拾う侍女と。


「きゃああああ!!シャッターチャンス!!マリアベルー!ちょっとちょっと来てキャー!!!」


 真っ赤な顔で大興奮している若い侍女。


「は……は!?」


 思わずぽかんとそれを見てからーーアランは今の状況に気付いた。

 王子の、ーー男の、膝枕で。しかも悦ってた、自分の図。ヤバい。


「えっ何ですか、なんかものすっげえ勘違いしてませんか!!?」


 見る見るうちに真っ青になる近衛騎士を他所に、聖国の太陽こと美貌の王子が肩を震わせて笑っている。


「わ、わざとやりやがりましたね!ラセイン様!!

あそこでバシバシ写真撮ってるリリエラさんとマリアベルさんに、王子が執務室で俺に押し倒される薄っぺらい本とか出されちゃったらどうするんですか!」

「この場合、押し倒されるのはお前の方だろう」


 ラセイン王子は涙まで浮かべて笑っている。

 ちくしょう、この人自分が彼女に会えないからって八つ当たりしやがった!リア充爆発しろとか思ったに違いないんだ、このキラキラ腹黒王子は!


「キャーキャー!ラセイン様こっち向いてえ!そこのワンコにチューしてえ!」

「やっ止めなさい、君たち!ワンコって俺のことか!ちょ、ちょっとセアラ様!」


 盛り上がる侍女達を鳥肌を立てた真っ青な顔で、アランがセアラ姫に助けを求めると。

 彼女は氷のような冷たい目線で彼を見下ろした。


「嫌だわ、わたくし二股かける男性はちょっと」

「ーーセアラ様、ツッコミどころはそこじゃありません!!」


 がくりとふかふかの絨毯に膝をついて打ちひしがれる近衛騎士と。

 大爆笑のキラキラ王子様と。

 虫けらを見るような目で恋人を見下ろす王女様と。

 いつの間にか増え続ける侍女ギャラリー達で。


 今日も魔法の国は平和だったという。



「どこがだ!!!!」




fin.

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