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白雪様と二人暮らし  作者:
第二章 のんびりとした日常

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9/15

9話 春の桜見物

 春が本格的に訪れたある土曜日。

朝から空は澄み渡り、風は柔らかく、桜のつぼみが一気に膨らんだという予報が出ていた。


 私はキッチンで、昨夜から準備していたお弁当をバスケットに詰めていた。

卵焼き、唐揚げ(白雪様のリクエストで多め)、ミニトマト、ブロッコリーの胡麻和え、おにぎり(梅と鮭)、フルーツサンド、クッキー等。


 白雪様は後ろから覗き込んで、目をキラキラさせている。


「綾のお弁当、すごい! 全部綾が作ったの?」


「うん……白雪様の好きなもの、たくさん入れたよ」


 白雪様は私の背中にぎゅっと抱きついて、


「嬉しい……綾とピクニック、夢みたい!」


 私は照れながら、白雪様の頭を撫でた。


「今日は鶴舞公園に行くよ。名古屋で一番きれいな桜が見られるって言われてる場所」


「鶴舞公園……桜がいっぱい!?」


「うん。今日は満開の予報だから、ちょうどいいタイミング」


 バスケットに保冷剤を入れて、飲み物をペットボトルで詰め、レジャーシートとクッションも持って準備完了。


 白雪様は今日はジャケットを羽織って、銀色の髪を軽く三つ編みにして準備完了


「綾、かわいいかな?」


 円満な笑顔で私に聞いてくれたので、私は白雪様の三つ編みを優しく触れながら言葉を紡ぐ。


「可愛い……白雪様、今日もきれいだよ」


白雪様は頰を赤くして、


「綾の方がかわいい……」


 ふたりで顔を見合わせて、くすくす笑った。家を出て、名古屋駅まで徒歩で向かう。

道中、白雪様は私の手を握って、春の風に髪をなびかせながら、


「綾、外の空気、春の匂いがするね……桜の匂い、楽しみ!」


「うん……白雪様と一緒だから、絶対に楽しくなると思う」


 名古屋駅から地下鉄に乗って、鶴舞線で鶴舞駅まで。車内は春休み前の家族連れやカップルで少し混んでいて、

白雪様は私の腕にくっついてきた。


「綾、ぎゅってして……」


 私は白雪様の腰に腕を回して、守るように抱き寄せた。白雪様は私の胸に顔を埋めて、少し恥ずかしいかも。


「綾の心臓の音……聞こえる」


「恥ずかしいよ……」


「でも、好き……」


 地下鉄が鶴舞駅に着いて、地上に出ると、すでに桜の花びらが舞っていた。

駅の出口から公園の入り口まで、桜並木が続いている。


「わぁ……!」


 白雪様は目を丸くして、立ち止まった。ピンクの花びらが風に舞って、白雪様の銀髪に落ちる。

白雪様は花びらを手に取っていた。


「綾、見て! 桜の雪だよ!」


「本当だ……きれい」


 私は白雪様の手を取って、公園の中へ進む。入り口の桜はもう満開で、トンネルのように枝が広がっている。

白雪様は私の手を強く握って、


「綾と桜の下を歩くの、夢みたい……」


「私も……白雪様と一緒だから、特別だよ」


 公園の中は、家族連れやカップルで賑わっていたけど、少し奥へ進むと、静かな場所が見つかった。

芝生が広がり、桜の木が密集したエリアにレジャーシートを広げた。


 ここは少し人気が少なく、桜の枝が頭上を覆うように広がっている。

満開の桜が風に揺れて、ピンクの花びらがひらひらと舞い落ちていた。

結構穴場の場所なのかもって思うぐらい。静かだった。


 まるで雪のように、静かに、優しく。あの時白雪様に会った時を少し思い出してしまった。


 白雪様はシートに正座して、バスケットの蓋を開けた瞬間、目を輝かせた。


「わぁ……! 綾のお弁当、全部可愛い!」


 卵焼きは黄金色にふっくら、唐揚げはこんがり揚がって、ミニトマトは赤く輝き、

おにぎりは梅と鮭の二種類で、表面に海苔で小さな桜の模様を描いてみた。


「白雪様の好きなもの、たくさん入れたよ。唐揚げは多めに作ったから、たくさん食べてね」


白雪様は唐揚げを一つ手に取って、


「綾が作ってくれた唐揚げ……いただきます!」


 ぱくりと小さな口の中に入れちゃった。頬が膨らみまるでハムスターみたいだなぁって思えた。


「んっ……! 外はカリカリ、中はジューシー! 最高!!」


 白雪様の耳がぴょこぴょこ出てきて、尻尾もシートの下でふわふわ揺れている。

ご満悦されたので私もほっとした。


 私は笑いながら、卵焼きを箸でつまんで白雪様の口元に。


「白雪様、あーん」


 白雪様は目を閉じて、口を開けた。


「綾のあーん……幸せ」


 ふたりで交互に「あーん」し合って、


 おにぎりを半分こ、全てを分け合って食べる。こういうものもいいもんだよね。


 桜の花びらがシートの上に落ちてきて、白雪様はそれを手に取って、


「綾、見て! 桜の雪だよ……」


 花びらを私の髪にそっと乗せて、


「綾の銀髪に桜……きれいすぎる」


 私は白雪様の髪にも花びらを乗せて、


「白雪様の髪にも……もっときれい」


 ふたりで顔を見合わせて、くすくす笑う。


 お弁当を食べ終わって、飲み物を飲む頃には、白雪様は私の膝に頭を乗せて、桜を見上げていた。


「綾と桜の下でこうしてるの、すごく気持ちいい」


「私も……白雪様と一緒に桜を見れて、嬉しいよ」


 白雪様は私の手を握って、指を絡めた。


「綾……ここで、キスしてもいい?」


「え……外だけど……」


 白雪様は隙あればキスをねだってきている。このシチュ何度目だろう。それでも嫌な気持ちは全くなく胸の中が暖かく感じるほどだった。


「誰も見てないよ……桜が守ってくれる」


 白雪様は体を起こして、私の顔を両手で包んだ。金色の瞳が、桜のピンクを映して輝いている。


 私は目を閉じて、白雪様の唇がそっと触れた。

柔らかくて、甘くて、桜の香りが混じったようなキス。

花びらが舞う中、ふたりの世界だけが静かに輝いた。

キスが終わると、白雪様は私の胸に顔を埋めて、


「綾……大好き」


「私も……白雪様、大好き」


 そのまま、シートに寝転んで、桜を見上げた。白雪様は私の胸に頭を乗せて、私の手を自分の頰に当てて、目を閉じる。


「綾の心臓の音……桜の音と一緒に聞こえる」


 私は白雪様の髪を撫でながら、桜の枝が揺れるのを眺めた。

花びらがひらひらと落ちてきて、ふたりの上に優しく積もっていく。

時間はゆっくり過ぎて、午後の陽が少し傾き始めた頃、

白雪様が眠そうに目を細めた。


「綾……ここで、少しお昼寝してもいい?」


「うん……一緒に」


 私は白雪様を抱き寄せて、シートに横になる。白雪様は私の腕枕をして、


「綾の匂い……桜の匂いと混ざって、幸せ」


 私は白雪様の額に軽くキスして、


「おやすみ、白雪様」


「おやすみ……綾」


 桜の木の下で、ふたりで眠りにつく。

夢の中で、桜のトンネルを白雪様と手をつないで歩いている。

花びらが雪のように舞って、永遠に続く道。


 目が覚めたのは、夕方近く。

桜の花びらが私たちの上に積もっていて、

白雪様はまだ私の胸で眠っている。

私はそっと白雪様の髪を撫でて、


「起きて、白雪様……そろそろ帰ろうか」


 白雪様は目をこすって、


「ん……もう少し……綾とここにいたい」


「また来ようね。来年も、再来年も」


 白雪様はにぱっと笑っていたけど、何か違和感を感じてしまった。

寝起きかなって思って一旦目をこすってもう一度見たらいつもの無邪気な白雪様のお日様笑顔だった。


「約束!」


 シートを畳んで、バスケットを持って公園を出る。

帰り道も、手を繋いで歩く。桜の花びらが道に散らばって、ピンクの絨毯みたいに感じた。


 白雪様は私の腕に絡みついてきた。


「綾、今日もありがとう……桜の下で綾とキスしたの、ずっと忘れない」


「私も……白雪様と過ごした花見は、素敵な宝物になったよ」


 家に着いて、玄関を開ける。


「ただいま」


「おかえり」


今日のピクニックは終わったけど、桜の香りと白雪様の温もりが、胸にずっと残っていた。

また来年も……ずっと何回でもいっしょに行こうねと心の中で私は問いかけていた。

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