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白雪様と二人暮らし  作者:
第二章 のんびりとした日常

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11話 白雪様ドジエピソード

 夜、ベッドに横になってから、私は枕元のノートを取り出した。

 表紙に桜のシールが貼ってある、手作りの日記。白雪様と出会ってから、毎日少しずつ書いてきたもの。

 ページがかなり厚くなって、指でめくるだけで懐かしい匂いがする。

 寝る前に読み返しながら、パラパラとページをめくると、過去の可愛らしいエピソードが次々と目に入ってきた。


 6月X日


 そろそろ梅雨も始まり、夏の陽射しが強くなったある日の午後。学校が終わり家に帰ると、キッチンから「きゃっ!」という小さな悲鳴と、ガシャン!という音が聞こえてきた。


「ただいま……白雪様、大丈夫?」


 私は慌ててキッチンに駆け込むと、そこはもう惨状だった。床に小麦粉が雪のように散らばり、卵の黄身が飛び散って黄色い星を作ってる。フライパンからは黒い煙が立ち上り、焦げた匂いが部屋中に充満。白雪様はエプロンに粉まみれ、銀髪にも粉がついて、まるで雪だるまの妖精みたいになっていた。うん、笑い事ではないんだけどね。白雪様がこうなってるとなんだかかわいらしいなぁって、そうじゃなくてすぐに白雪様に理由を聞いてみた。


「綾……今日は綾の好きなパンケーキを作ろうと思って……生地はちゃんと混ぜたんだけど、火加減がわからなくて……最初は上手に焼けたのに、次から次に焦げちゃって……」


 白雪様は耳をぺたんと倒し、尻尾もだらんと垂れて、涙目で私を見上げてくる。

 私は思わず笑って、白雪様の頰についた粉を指で拭いてあげた。人の為にこうやって行動してくれるのは本当に心から温かくなってしまう。


「白雪様、可愛すぎる……こんなに一生懸命作ってくれたんだもん。大丈夫だよ」


 私は白雪様を抱き寄せて、粉まみれの頬にキスして安心させてみたら結構効果抜群だったみたい。


「一緒に作り直そう? 今度は私が火加減見るからね。そうやって覚えていけば、次は一人でも作れるよ」


 白雪様は目を輝かせて、キラキラしていた。


「うん! 綾と一緒なら、絶対成功する!」


 ふたりでキッチンを片付けて、新しく生地を混ぜ始める。

 白雪様は私の手を取って来て手順をしっかりと聞いてきた


「綾、こうやって混ぜるの?」


「うん、優しくね。ダマにならないように」


 白雪様は真剣な顔で混ぜるけど、少し力が入りすぎて、ボウルから生地がぴゅっと飛び散った。


「あっ! ごめん……」


「大丈夫大丈夫、服にかかっただけだよ。それにこういうのはよくあるから、そのためのエプロンだしね」


 私は笑いながら、白雪様の手に生地がついたのを拭いてあげて、そのまま白雪様の指を軽く舐めてみた。


「甘い……白雪様の生地、美味しいよ」


 白雪様の顔が、みるみる真っ赤になっていくのをすごくうれしくなってきた。


「綾……! いきなり何するの……」


「ごめん、つい。それにいつもは白雪様の方が先にするんだからいいと思って」


 ふたりで笑い合って、フライパンに生地を流す。

 白雪様がひっくり返そうとして、パンケーキが宙を舞って、天井にべちゃっとくっついた。

 うん、パンケーキって結構飛ぶもんだなぁって思ってしまった。


「……あ」


 白雪様は固まって、耳がぺたんと倒れた。私は大笑いして、


「白雪様、すごく飛んだよ! 天井まで届いたよ。私初めて見たかも。うん白雪様最高だよ」


「もう……恥ずかしいよぉ……」


 白雪様は私の胸に顔を埋めて、


「綾に笑われちゃった……」


「ごめんごめん。でも、本当にすごい」


 私は白雪様の頭を撫でて、


「次は一緒にひっくり返そうね」


 ふたりで新しいパンケーキを焼いて、ようやく成功したものが出てきた。

 黄金色に焼けたパンケーキに、ホイップクリームといちごを乗せて、一緒にテーブルに並べた。


 白雪様はフォークで一口すくって、私の方に出してきた。


「綾、あーん」


 私は口を開けて、ぱくり。


「美味しい……白雪様と一緒に作ったパンケーキ、最高だよ」


 白雪様は嬉しそうに、にこにこしていた


「綾が食べてくれるから、私も幸せ……」



 6月〇 日、


 白雪様が「今日は私が洗濯する!」と張り切った。洗濯機のボタンを押したはいいが、高温コース+長時間脱水を選んでしまった。

 私の制服が縮んで、ミニスカートみたいに短くなった。白雪様は制服を抱えて、泣きそうな顔になっていた。


「綾、ごめん……短くなっちゃった……綾の大事な制服なのに……」


 私は制服を着てみた。


「これ、夏服として可愛くなったよ。白雪様のおかげで、新しいスタイルになった」


 さすがに学校出来て行ったら校則違反で怒られちゃうから来てはいけないけど、これはこれでいいと思っちゃった。白雪様にとって初めての洗濯機なの、ついボタン押せばできるよと言って教えた私のミスでもあったから。


「ほんと……? 怒ってない?」


「全然。むしろありがとう」


 私は白雪様を抱きしめて、頭を撫でた


「白雪様が洗ってくれた制服、特別だよ」


 白雪様は涙目になっていた。


「綾……優しすぎる……」


「私もいろいろな機能があるのを忘れて説明してなかったら、お互いのミスだよ。だから大丈夫」


「うん」


 5月△日


 掃除機をかけようとしたときのこと。白雪様が「今日は私が掃除する!」と張り切っていたので任せてみた。

 こういうのを見ると妹の事を思い出す。そういえば同じこと言ってたなぁって過去を思い出していた。


 白雪様はコードを引っ張りながらリビングを動き回っていた。あれ?これ昔何か同じことがあった記憶があると思った時だった。


「綾、見てて! これでピカピカにするよ!」


 白雪様はスイッチを入れて、勢いよく掃除機を前後に動かした瞬間だった。白雪様の足にコードが絡まってしまった。


「わっ!?」


 足を取られてバランスを崩し、白雪様は前のめりに転倒した。

 転んだ拍子に、掃除機のホースが棚に引っかかり、棚の上に置いてあったクッションの山が、ドサドサッと一気に崩れ落ちてきた。

 クッションが白雪様の上に次々と覆いかぶさり、あっという間にクッションの山ができあがっていた。

 うん、思い出した。妹が同じことをしていた。


「……綾……助けて……」


 クッションの下から、くぐもった小さな声が聞こえてきた。私は慌てて駆け寄って、クッションを一つずつどかした。

 白雪様はクッションに埋もれて、銀色の髪が少し乱れて、耳がぺたんと倒れ、尻尾が弱々しく動いている。


「白雪様、大丈夫!? 怪我はない?」


 私はクッションを全部どかして、白雪様を引き抜き、抱きしめた。

 白雪様は私の胸に顔を埋めていた。

 もう妹と同じパターンで私はにこやかになっているのが自分でもわかった。


「うぅ……恥ずかしい……コードに足が絡まって、転んで、クッションが全部落ちてきて……」


「びっくりしたよ……でも、無事でよかった」


 私は白雪様の髪を優しく撫でて、埃がついた部分を払ってあげた。

 白雪様は涙目になっていた、


(おねえちゃん)に迷惑かけちゃった……」


 一瞬……本当に一瞬意妹がそこにいる感じがした。


「迷惑なんて全然だよ。白雪様が掃除しようとしてくれただけで嬉しいからね」


 私は白雪様の頬を両手で包んで、額に軽くキスをした。


「次は一緒に掃除機かけようね。コードに気をつけて」


 白雪様は少し照れくさそうに頷いてくれた。


「うん……綾と一緒なら、ドジしても怖くない」


 ふたりで残りの掃除をしながら、笑い合った。

 クッションの山に埋もれた白雪様の姿は、後で思い出すたびに可愛くて、これを読み返すたびに笑顔がこぼれてくる。


 5月*日


 夕飯にカレーを作ろうとして、白雪様が「辛いの好きだよね!」とスパイスを大量投入した。

 出来上がったカレーは真っ赤で、激辛だった。うんあれだけ入れたら激辛になっちゃうよね。

 私が止める前に、一口食べて、白雪様自身が涙目になっていた。


「辛い……! 綾、ごめん……」


 私は水を飲ませてあげた。


「大丈夫。白雪様の愛情が詰まってるから、美味しいよ」


 残りは翌日マイルドに調整して一緒に食べた。

 白雪様は私の膝に頭を乗せて、


「綾……また失敗しちゃった……」


「失敗してもいいんだよ。神様の世界はよくわからないけど、人はこうやって失敗して次につなげるんだよ。はじめから出来る人なんてほとんどいないんだからね」


「うん、綾ありがとう」


「味を変えたり、ピザにしたり、いろいろできるから大丈夫だからね」


「いろいろできるんだね。すごいよ」


 白雪様がそのように言ってくれて私はすごくうれしかった


 4月◎日


 夕方、リビングでくつろいでいるときのこだった。白雪様がソファに座って、私のスマホを手に取った。


「綾、最近面白い動画がいっぱいあるって言ってたよね?見せて見せて!」


「実際に白雪様がやってみる?」


「うん、いいの?」


「いいよ」


 白雪様は目をキラキラさせていたので、スマホの画面をタップし始めた。


「どれどれ……これかな? 『猫がかわいい動画』って検索すればいいの?」


 私は隣で笑いながら、


「うん、そうだよ。YouTubeを開いて、検索バーに『猫 かわいい』って入れてみてね」


 白雪様は真剣な顔で画面をタップするけど、指が少し震えてて、操作がぎこちない姿がまたかわいいなぁと思いながら見守っていた。


「えっと……ここ? あ、開いた!動画がいっぱい出てきたよ!」


 白雪様は興奮して、一番上に出てきた動画をタップした。


 次の瞬間——ドーン!!突然、部屋中に爆音が響き渡った。

 動画が自動的に大音量で再生され、猫の鳴き声とBGMが最大ボリュームで鳴り響く。


 白雪様は「ひゃあっ!」と小さく悲鳴を上げて、びっくりしすぎてスマホを落としてしまった。

 スマホはソファの隙間に落ちそうになり、画面が床にぶつかりそうになった瞬間、私は慌てて手を伸ばしてキャッチした。


「危ない!」


 スマホを握りしめて、白雪様の方を見ると、白雪様は両手で耳を塞いで、耳がぺたんと倒れ、尻尾がびくびく震えている。


「綾……! 音が……! 大きすぎて……!」


 白雪様は涙目で、私にすがりついてきた。

 私はスマホのボリュームを急いで下げて、動画を停止させた。

 部屋がようやく静かになって、私は白雪様を抱きしめた。


「大丈夫? びっくりしたね」


 白雪様は私の胸に顔を埋めて、


「ごめん……綾のスマホ、壊れちゃうところだった……私、操作間違えちゃって……」


 私はスマホを無事に握ったまま、白雪様の背中を優しく撫でた。


「白雪様が無事でよかったよ。スマホもこのように割れてないよ」


 白雪様は顔を上げて、涙目で私を見た。


「綾……怒ってないの?大事なスマホなのに……」


「怒るわけないよ。白雪様がびっくりした顔、可愛かったし。それに傷はつくかもしれないけど、そんな簡単に割れたりしないから大丈夫だよ」


 私は白雪様の頰を両手で包んで、額に軽くキスをした。

 白雪様は頬を赤くしていた。

 なんか最近これは癖になっているのかもしれないと思った。

 であってから何回頬やおでこにキスをしたんだろう?まだ4か月しかたってないのに。


「可愛いって……綾、ずるい……」


 私はスマホをテーブルに置いて、白雪様を膝の上に座らせた。


「次は一緒に動画見ようね。ボリュームは私が調整するから」


 白雪様は私の首に腕を回して、


「うん……ありがとう。一緒に観よ」


 私は白雪様の髪を撫でた。すごくサラサラで触り心地がすごくいいんだよね。


「白雪様のこういうところ好きだよ。びっくりしたときの耳の動きも、尻尾の震えも、可愛いしね」


 白雪様は照れくさそうに笑って、私の胸に顔を埋めた。


「綾……大好きだけど意地悪だよ」


「白雪様は可愛すぎていじめたくなっちゃうのかも」


「いじめはよくないよ」


「そうだね。ごめんなさい」


「よろしい」


 お互い笑顔になりながら、猫のかわいい仕草の動画を一緒に静かに見た。

 白雪様は、いつも私を笑顔にしてくれる。



 1月XX日


 白雪様が私の家に来て数日のころだった。

 夜、お風呂で白雪様が「今日は私が綾の髪を洗う!」と張り切って言ってくれた。

 ところが、シャンプーとコンディショナーを間違えて、先にコンディショナーをつけて泡立ててしまった。

 泡が立たず、白雪様はパニック。


「綾、泡立たない……!」


 私は笑いながら、今白雪様が手に持ってるボトルを見て確信した。


「順番逆だよ。でも、白雪様の手で洗ってもらえて嬉しいよ」


 白雪伝説があった時は江戸時代ぐらいの話だから、その時代にこんなものが無いのだから間違えても当たり前だと思った。


 突然、隣から小さな声がした。「綾、何見てるの?」

 白雪様が目をこすりながら、体を起こして私を覗き込んでくる。

 銀色の髪が少し乱れて、寝ぼけた金色の瞳がいつもながら可愛い。


「毎日書いてる日記帳だよ」


 私はノートを軽く閉じて、微笑んだ。


 「私も見せて」


 白雪様は眠そうに手を伸ばしてくる。


 「日記だから恥ずかしいのでダメだよ」


 私は白雪様の頭をそっと撫でて、ノートを枕元に戻した。

 白雪様は「むー」って小さく頰を膨らませて、でもすぐに目を細めて、私の胸に顔を寄せてきた。

 布団に入ったせいか、もう瞼が落ち始めている。

 一緒に暮らし始めて6か月近く。こんな平和で、笑える日が、白雪様と一緒に過ごしていけたらいいなぁ。私は白雪様を抱きしめて、銀色の髪にそっとキスをした。


「おやすみ、白雪様」


「おやすみ……綾……大好き」


 白雪様の寝息が静かに聞こえてくる。私は目を閉じて、今日の日記を心に刻んだ。これからも、毎日少しずつ、

このノートに、ふたりの物語を綴っていこう。

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