Offstage 忘れてたこと
飛んでくると大騒ぎになるだろうし、オレみたいに歩いてくるしかない。姉さん達が来るまでしばらくかかるだろうか。
そう言えば、会った時に風牙の調子を見るみたいな話をしていたなと思い出した。だが、何もないのに街中で抜刀するわけにも行かないし、ましてやここは帝都の貴族街。問題外どころか大の上に冠詞が付きまくるほどの問題だ。
で、その流れで思い出したことがあった。こっちは聞けるな。
「そういえばネレ。フレイアの剣の銘ってなんだった? 聞くの忘れてた」
「銘ですか? いえ、特に決めていませんでした。風牙みたいに一本一本銘をつけたりもしてないですし」
無かったのか。
まあ、ネレの言う通りだな。日本刀だって一本一本に個別の名前があるわけでもないし、西洋剣の銘なんて聞いたこともなかったし。
「というか、今の所は風牙だけが特別ですかね。耐炎剣自体も試作ですし。誰が使うか聞いていませんでしたからね。フレイアさんの要望を加えないとちゃんとしたのは打てませんよ。素材の試験としては十分だったみたいですけど」
「え、これで試作なの? すごいのに」
「ただの一般サイズの直剣ですから。専用品を作るとなると長さや幅の調整まで色々ありますよ」
「職人気質は流石だよな、ネレ」
ほんと、こだわるとこにはこだわるな。妥協を許さない姿はある種病的でもあるかもしれない。
「……どことなく褒められているように感じないのですが」
「なんでだよ。褒めてるって。まあ、遊びで作ったものなんかも見てみたいとは思うけどさ」
「工房に戻ればいくらでもありますよ?」
「それは楽しみだ」
風牙とか破山剣の設計図を見せたときに絶句していたネレのお遊びか。どんなものが飛び出て来るだろうな。
「……はぁ。仲いいなぁ。羨ましい」
と、フレイアが何やらそんなボヤキを。
仲がいいか。そりゃ当然長い付き合い……いや、うーん。
「長い付き合いだから仲いいのは当然って思ったけど、実際に顔を合わせてる時間ってさほどでもないのか」
「いまさらそれ言います?」
ネレに呆れられてしまった。まあそうだな。転生してなかったら十二年一緒に居ただろうし。そういう方から見ると、勝手やって愛想つかされてないのはありがたいな。
「そっか。転生後だとなんだかんだで一番付き合い長くて多いのは私か」
「そうだな。自覚してない部分合わせるとアカネちゃんだけど」
「あ、そうだ」
それでも、フレイアがユリフィアス・ハーシュエスとユーリ・クアドリを一番早く繋げてくれたのは事実だ。そこは変えられない。
「私からすれば、仲が良くて羨ましいのはユーリさんとフレイアさんですね。アカネさんは友達というよりは義理の兄と妹というか先輩と後輩というか叔父と姪というか」
「そういうものかぁ。そう言われるとなんか悪い気がしてくる」
「そこは運もありますからね」
悪い要素あったかな。隣の芝生は青いって奴かな。たぶん的確じゃないし、水を差すだろうから口には出さないけど。アカネちゃんとの関係がどう見えるかについても。
本当に。こうして慕ってもらえるというか、見捨てられないのはありがたい。期待に応え続けられるように頑張らないとな。




