Interlude 彼女はだあれ?
「聞こう聞こうと思ってたこと、いい加減聞いていいかな、ユーリ君」
駅馬車に揺られてボーッとしていたら、セラが真剣な顔を向けてきた。アエテルナを出ていくらも経っていないが、疲れて寝てるのかと思ってた。
「なんだ? 知らないことと答えられないことがあるが」
「それ答えられることないじゃん! って冗談はいいんだよ。レヴさんって何者だったの?」
「そういえば、聞いていませんでしたね」
「そうだね」
「わたくしも、お世話になった身として知っておきたいです」
「たぶんユリフィアスより強い存在。興味しかない」
「アー、ウン。アタシモカナー」
「ええそうですねーきになりますー」
約二名棒読みの人がいる。疲れてるから仕方ないか。
レヴが何者かか。
「知り合いの知り合いの知り合い?」
「なんで疑問形なの……しかもそれほぼ他人じゃない?」
たしかに。言葉だけ聞くとそうかもしれない。間違ってはないんだけどな。知り合いの知り合いがオレで、その知り合いだから。
いや、違うな。オレとレヴの関係は知り合いじゃなかった。
「間違えた。知り合いの知り合いの友人、か?」
「どこか変わったとも思えないんですが……」
「ええ……」
「説明する気ないやつ。これ」
「「……」」
レアとユメさんとティアさんは辟易し、理由を知る二人は沈黙。まあ、何を明かせるわけもないよな。知ってるのはおそらく、ドラゴンだってことくらいだろうし。そこを避けて通れないし。
「でも、不思議な人だったよね。ユーくん、思いがけない知り合いが多いね」
話題を進めつつも、オレのことを話している。話を逸らそうとしているのかな? 姉さんは、レヴの正体に言及する気はないのか?
一応、ここは乗っておくか。
「そもそも、こうして人間も獣人もエルフも魔族も揃ってるオレ達が十分に珍しくないか?」
「それは。ワタシがいる時点で珍しいの極み」
「そうですね、私もハーフなので多少は珍しい部類でしょうし。もっと言うとユーリくんは王族とも知り合いになってしまっているわけですけど」
んー、うん。前世から、魔族のだけど王族とは知り合いだな。アカネちゃんが言及してるのは転生後だろうけど。
「えーと。ステルラには決まった首長がいませんけど、その可能性のあるユメ先輩とも知り合いで。王国ではリーデライト殿下と上司部下のような関係で。共和国のニフォレア・ヴォルラット陛下とも顔見知りになって。聖女様ともですよね。あとは、シュベルトクラフト帝国の皇族に知り合いがいれば……」
「……そうだねー。完璧だよね」
レアの言葉を受け、セラがどこか投げやりに言う。入学試験の時のこともあるし、権力に対するアレルギーでもあるのかな。それとも呆れてるだけか。
「わたくしはその御歴々と並べられるものではないと思いますが……」
「イヤ十分十分。ン? でもソレって、アイちゃんも同じじゃない?」
「え?」
最後に疑問を呟いたミアさんに視線が集まる。次いで、姉さんに移動。
「そう? ユーくんには敵わないと思うけど」
「ンー。でも、アタシたちと出会ったのはアイちゃんがサキだし」
「なるほど、そうですね。ユリフィアスさんとわたくしたちが出会ったのも、アイリスさんを通してですね」
「それに加えて、アカネさんともだよネ?」
ああ、そうか。ミアさんはオレとアカネちゃんが転生前の知り合いだって把握してないのか。
まあ、それがあっても姉さんはアカネちゃんに自力で出会っているわけだが。
「思えば。炎皇も殿下もアイリスが先?」
「フレイアさんは……どうなんだろ。それに、リーデライト殿下と面識ができたって言っても顔を合わせたくらいだよ? ユーくんみたいに面と向かって知識提供とかもしてないし」
フレイアはともかく、殿下は確実に姉さんが先だな。そこの人間関係はユーリ・クアドリにはない。
「魔王様は。同着?」
「そう……カナ? ウン。たぶんネ」
ミアさんの誤魔化しは、前世はもちろん一応その前に会ったことも隠しておこうってことなのか。
実際、アレもコレも隠しているだけでオレの方が邂逅が先の相手もそこそこいる。それでも、転生前に何かしら関わって再会がまだの人なんていくらでもいるわけだから、転生後は転生後で考えるべきなのかもしれない。
「何より。このユリフィアスと姉弟として出会ってる」
「このって……」
どのユリフィアスだ、とツッコみかけたが。たしかに、転生して何よりもまず初めに家族と出会っている。それは逆に言えば、転移者で転生者というこの世界で一番イレギュラーな存在と真っ先に出会ったってことだ。
てことは、オレ達を客観視したら姉さんは物語の主人公の位置にいるのかもな。案外、皇帝の一族とももう出会っていたりして。
「うーん、そうかな? わたし……」
姉さんは否定しようとして、そこで詰まる。
首を傾げていたと思ったら、表情が青ざめていく。
「そんな……やっぱり……」
「……姉さん?」
冗談として受け取るにしても否定するにしても笑うかと思っていた。
「う、ううん。なんでも。恵まれてるよね、わたし。あはは」
なんだろう、この反応。
姉さんは一体、何を考えてるんだ?




