32枚入りクッキーひと箱か、12個入りゼリー二箱か
誤字報告、感想いつもありがとうございます。
サイリユウム貴族学校は、夏休み明け初日から授業が開始される。
とはいえ、初日は夏休みに出されていた課題の提出やそれを出題範囲とした小テストなどを行うなどの教師がほとんどで、授業時間の半分を夏休みの思い出語りに費やす教師もいるぐらいだった。
そんな緩い空気の中、休み時間などは各地から持ち寄ったお土産の交換時間となっていた。
夏休みは一月半と長いので、花祭り休暇には寮に残っていた生徒たちも大半は実家に帰っていたようだ。ジュリアン宛のお土産の量が花祭り休暇明けの倍ほどになっていた。
「カイン宛の土産もあるだろう。花祭りの時より友人が増えた証であるな。よきことだ」
初日の夜。ジュリアンがお土産で貰ったお菓子を日持ちするものとしないもので仕分けしながら、カインの机の上に積まれた菓子をちらりと見た。
花祭り休暇の後の時は、ジュリアンからのお裾分けの菓子を机に積んでいたカイン。しかし、今カインの机の上に載っているのはジュリアンが言う通り半分ほどはカインあてのお土産だった。
「ありがたいことです。ただ、私自身は極親しい友人あてにお土産を持ち帰ったのでお返しできない人がいるのが心苦しいです」
カインは土産につけられている送り主の名前を紙に書き出してリストにしていた。後ほど、実家に連絡して何か菓子でも送ってもらおうと思っている。
夏休みの終盤、アイスティア領へとリベルティとティアニアを送った後、ネルグランディ領へと戻るともうサイリユウムへと出発しないと間に合わない日付になってしまっていた。
夏休み開始時に国へ帰る時も下着三枚しかもって出なかったカインである。お土産の用意などまったく頭から抜けていたのだが、叔母であるアルディと領地に残っていたイルヴァレーノ、サッシャがお土産を用意してくれていた。
大麦小麦の栽培が盛んな領地ということで、焼き菓子を持たされた。移動に三日かかる事もあって日持ちのするもの、となるとどうしても一般的なクッキーやビスケットと言ったものになってしまうのは仕方がない。
本当は、クッキー生地をモンブランケーキのように細く絞りだしてふんわり山にしたものをオーブンで焼いたふんわりクッキーがおすすめだったらしいのだが、道中で壊れてしまうだろうということで花の形をしたクッキーを叔母に持たされたのだった。
「土産物は、持ち帰る者の気持ちである。無理に返さずとも良いであろう。気になるのであれば、次に帰省した時に持ち帰ればよいのだ」
「……そうですね。このリストは、次に帰省した時の為の備忘録ということにします」
手紙を送り、わざわざお土産を送ってもらうというのも確かに違う気がしたのでジュリアンの案を採用することにした。
貴族学校なだけあって、カインが前世でよくやっていた「30個入りの饅頭を買っていけば一人二個ずつ配れる」という土産の配り方をしている人はいない。
どっさりと持ち返ったスティック状の干し芋をみんなのおやつとして提供している者はいるが、それは特例である。
「そういえばカイン、夏休み後も引き続きバイトをする予定であるか? 帰省用の資金の為といっていたが結局は家の者が迎えに来ていたであろう?」
「続けようと思います。飛竜で帰省できれば一週間しかない休みでも帰省できますし、迎えと一緒に帰るのだとしても、土産を持ち返れば家族も喜びますから」
「そうか、では一つ。私がアルバイトを斡旋してやろう。学内アルバイトより割が良くて自分の自習時間も確保できるという、カインにうってつけの仕事があるのだ」
ジュリアンが椅子の上でくるりと振り向き、カインの背中越しに声をかけてきた。
カインは顔だけジュリアンに向けて、胡散臭そうな顔をした。
「なんだその顔は」
「ジュリアン様の斡旋するお仕事ですか……」
ジュリアンは、花祭り最終日にカインに女装させて連れまわすというアルバイトをさせた前科がある。しかもその直後には、巨大な魔法陣が設置されている曰く付きの土地へと連れて行って魔獣退治をさせられた。
ジュリアンのいう『割が良い』というのが、どうしても信じられないカインである。
「王族である我からの……というか、王家からの依頼である。少なくとも給金については期待して良いぞ?」
「そこは、疑っていません。花祭りも予定地の視察も頂いた金額はしっかりしていましたから」
「……何が不満なのだ」
「ひとまず、内容をお聞きしてもよろしいですか?」
カインはお土産くれた人リストが完成したので、改めてジュリアンに向って座りなおした。
ジュリアンは椅子の背もたれをまたぐように座っており、大変お行儀がわるかった。しかし、カインもよくこの座り方をしているのであえて注意したりはしない。
親元を離れて同年代と寮暮らしするとは、こんなものなのだろう。カインは前世では、大学から一人暮らしをしていたが、下宿やルームシェアなど誰かと生活を共にしたことはなかった。
「ジャンルーカの家庭教師をやってくれぬか? 語学と魔法の二つで良いのだ」
ジュリアンはニカっと笑ってそういった。
4巻書籍化作業をしております。
週一~週二ぐらいの更新になりそうです。申し訳ありません。




