↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】虐げられた死神令嬢ですが、陽気な騎士団長に溺愛されて幸せになりました。〜一方、私を捨てた元婚約者は知らない間に破滅してました〜  作者: ぷきゅのすけ
最終部 死神令嬢、幸せになる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/100

90・モクレン様にプレゼントです!

「⋯⋯モクレン様。ついに、教皇王になられるのですね」



根源の大樹破壊から数カ月後。


モクレン様の屋敷の食堂にて。


見慣れた食堂には、豪華な教皇王の祭服に身を包む見慣れないモクレン様が、窓から差す朝日に照らされ神々しく輝いている。



私とモクレン様が暴走する根源の大樹を破壊してから、とてつもない変化が立て続けに起こった。



まず、根源の大樹が消滅し、それに伴い死毒の森もだんだんと減少し始めた。

魔獣はまだまだ生き残っているが、二十年もすれば過去の存在に出来るだろう。



次に、聖騎士団は解体され、人に危害を加えたり私に酒瓶やシケモクを投げ付けたりしたような連中は、全員暴行罪でしっかり裁かれ豚箱送りとなった。



その次に、レンゲ様がモクレン様の協力の元マグノリア地方に魔道具研究所を設立し、彼は所長となった。

ファウストの凶行をしっかりと後進に伝え、二度とこのような悲劇が起きないようするためである。



そして最後。


ついに、ユーフォルビア様の冤罪が晴らされたのだ!


レンゲ様によって解読されたドクトルの日記と、地下研究所に残された情報という証拠により、国は正式にユーフォルビアは無実であると認めたのである。



そして教皇王は歴代のユーフォルビア一族に謝罪するという形で、教皇王の座を次の世代に譲ることを決定。


その次の教皇王こそ――




「モクレン様。教皇王の祭服、よくお似合いです。麗しい美青年らしく、何でも着こなしてしまわれますね」


「そ〜でしょ〜? ありがとねツミキちゃん♡」




三日前、前教皇王は次世代の教皇王にモクレン様を指名したのだ。


公爵家の息子であり、国民の人気も最高潮にある彼は、暴走する根源の大樹から国を護った英雄でもあるのだ。


これ以上の人材はいないだろう。




「モクレン様。教皇王になられる貴方に、私達からプレゼントがあるのです」


「え? プレゼント? なになに? 嬉しい〜!!」




豪華な教皇王の祭服を着ても、モクレン様は相変わらずである。


そんな彼に頬がゆるむのを感じながら、私は開いたドアの向こうへ視線で合図を送る。


すると、照れたように笑うレンゲ様とサラサ先輩が私の元へやってきた。



しかも、レンゲ様は後ろ手に何かを隠している。


それこそ、私達がモクレン様へ贈るプレゼントなのだ。



レンゲ様は



「ツミキ氏、キミが渡しな。だって、プレゼントの素材はキミが見付けたんだからさ」



と笑う。




「ありがとうございます。レンゲ様」




そう答え、背後からプレゼントを手渡されると、私はドキドキする心臓の鼓動を感じながら、みんなで作ったプレゼントをモクレン様へ差し出した。




「フライパンです。聞きましたよ。貴方のメインウェポンはフライパンであったと」


「!!! ツミキちゃん⋯⋯レンゲくん⋯⋯サラサ⋯⋯ありがとうっ!!!!」




私から『少し熱を帯びたように光り輝く』フライパンを受け取ったモクレン様は、



「すっげ〜!!! しかもなんか熱を帯びてるし、光り輝いてるじゃ〜ん!!! これなら焦げ付かずに炒め物仕放題だわ〜!!! ⋯⋯あれ?」



と、はしゃぎながらもどこか様子がおかしい。




「モクレン様、どうされました?」


「あ、いや、嬉しいんよ? 嬉しいんだけど、このフライパンの素材、ツミキちゃんが見付けたんだよね⋯⋯? あの、どこで⋯⋯?」


「ドクトルの地下研究所です。ユーフォルビアの冤罪の証拠を探す際に発見しました。⋯⋯どうやら『叩き折れた剣の刃』のようですが、とても綺麗で光り輝いており、熱を帯びていたのでフライパンの良い素材になるかと思いました」


「え」




モクレン様の顔が引きつった。


彼はこの後『神剣を手に』新たな教皇王として、国民の前に姿を現す儀式を控えている。


きっと、緊張しておられるのだろう。


モクレン様から喜怒哀楽を教えて頂いた今の私にならわかる。




「モクレン様。⋯⋯ところで、神剣プルトハデスはどちらに? 確か、破損したと聞きましたが、修理はもう済んでいるのでしょうか?」


「⋯⋯これだよ」




顔色を無くしたモクレン様はフライパンを掲げる。




「? それは冗談ですね! 喜怒哀楽を得た今の私は冗談を理解するだけでなく、適したツッコミを返すことも可能なのです。それではお返しします。なんでやねん」


「⋯⋯⋯⋯これなんだよ。神剣、プルトハデス⋯⋯」




すると、レンゲ様とサラサ先輩の顔はみるみる青ざめ



「そういやボクら、神剣なんて見たことないし⋯⋯」


「のじゃ⋯⋯わらわ、暴走した根源の大樹の毒の瘴気で勘が鈍ってたのじゃ⋯⋯」



と呟い⋯⋯ん?



そう言えば、私も神剣プルトハデスなんて見たことが無い。


でも、確かモクレン様が私を助ける際『神剣で腹をぶっ刺した』と聞いた記憶はある。

あの場は確か、地下研究所。


そして、私が『光り輝く熱を帯びた折れた刃』を見付けたのも、地下研究所だ。


⋯⋯まさか。


恐る恐るモクレン様の顔を見上げると、彼は泣きながら笑っていた。




◇◇◇




「モクリエールアレン・ポーラリス。そなたを時期教皇王に任命する。⋯⋯では、神剣プルトハデスを持ち、国民にその姿を見せよ」




新しい教皇王になるモクレン様の戴冠式を、私達も一緒に出席することが出来た。



私達は玉座に座る教皇王に跪く。

こめかみには冷や汗が伝い、心臓は爆発しそうなほど早鐘を打っている。


モクレン様は顔色を無くしており、


レンゲ様は「だって知らなかったしだって知らなかったし」と繰り返し、


サラサ先輩は「わらわもう帰って良い?」と半泣き状態だ。



そんな私達に、教皇王は優しい笑顔を浮かべて


「緊張するでない。そなたらはこの国の英雄なのだ。死刑執行前の罪人みたいな顔をするでないぞ」


と暖かい言葉をくださる。




「そして、教皇王モクレン、神剣を掲げよ。破損した剣はそなたの仲間に頼んで打ち直してもらうと言っておったろう? さあ、次世代の教皇王に相応しい神剣プルトハデスを我に見せておくれ」


「⋯⋯」




モクレン様は、無言で光り輝くフライパンを教皇王に見せた。



教皇王は最初こそ「ここで笑いを取りにくるとは素晴らしい度胸」と笑ってくれた。


だが、私達の顔面蒼白な様子と、レンゲ様の「だって知らなかったし」と言う呟きから、何かを感じ取ったのだろう。




「⋯⋯マジ?」




と震えた声を漏らした。



そんな教皇王に、モクレン様は『フライパンになってしまった神剣プルトハデス』を差し出すと



「あはっ、あはは⋯⋯こんなになっちゃいました。たはは⋯⋯」



と泣きながら笑う。



周囲の偉い人達は「神剣をフライパンにするなど女神への反逆罪で極刑だぞ!?」ざわめき、シスターはバタバタと気絶する。



絶望的な沈黙の中、レンゲ様の「だって知らなかったし」という呟きが響く。



そんな中、教皇王が



「なっちゃったからには⋯⋯もう⋯⋯なあ」



と天井を見上げて呟いた。




「すまぬ、モクレン。この話は⋯⋯無かったということで」




◇◇◇




「やーいやーい!! 三日天下のカスレン!!! 一発屋のカスレーーーン!!! お前なんかマグノリア地方で怪人悪質ホストやってるのがお似合いなんだよバァーーーカッ!!!」


「うるせ〜〜〜クソガキ共がぁッ!!!! テメェの母ちゃんに色恋営業して家庭崩壊させたろかコラぁぁああ!!!」




神剣プルトハデスをフライパンにした大罪により、モクレン様が教皇王になる話が飛んだその帰り。



全ての元凶である私と、いつもの騎士服に着替えたモクレン様と、相変わらずのんびりしたレンゲ様と、相変わらずのじゃのじゃしたサラサ先輩は、実家のようなマグノリア地方の草原でぼけーっとしていた。



すると、クソガキ――間違えた無邪気な子供達がいつものようにモクレン様にちょっかいをかけるので、モクレン様は手加減無しに子供達を追い回し、とっ捕まえて抱き上げ楽しそうに笑い合っている。



よく見ると、子供達も安心しているような顔で笑っていた。

きっと、モクレン様が教皇王になるのが寂しかったのだろう。


⋯⋯私と同じように。



子供達と遊び終えたモクレン様が



「ったく⋯⋯最近のクソガキ共は生意気だよねえ。困ったもんだ」



と笑いながら戻ってきて、私の隣に腰を下ろす。




「モクレン様。大変申し訳ございませんでした。全て私の責任です。後日、正式に私から教皇王に謝罪し、しかるべき罰をお受けします」


「いやいやいや、ツミキちゃんは悪くないよ。それに、教皇王のおっちゃんも『知らんかったのならしゃーない。⋯⋯それに、我らの方こそ数え切れぬほどのユーフォルビア一族への罪があるゆえ、お主を咎めることは出来ぬ』って言ってたからさ」




確かに、教皇王のおっちゃん様は寛大なお心を見せてくださったあと、


『気が向いたらみんなで遊びにおいで』


と言ってくださったのだ。


⋯⋯教皇王の周りにいる偉い人達は全員ブチギレていたが。




「それにしても、教皇王のおっちゃん様に仕えていた枢機卿達はどうなったのです? ファウスト亡き今、彼らは一体⋯⋯」


「ああ、枢機卿のオッサン達はみんな豚箱に入ったみたいだよ。⋯⋯俺が前にパクられた罪状と同じ『危険武器製造法違反』でね」


「危険武器製造法違反ですか!? ⋯⋯だって、彼らは、ファウストの協力者で、つまりホムンクルスに関わっていて⋯⋯」




黒幕であったドクトル・ファウストは、百年前からずっと人型魔道具ホムンクルスを製造しながら、たくさんの人を殺してきたのだ。


そんな彼と行動を共にしていた枢機卿のオッサン達が、『危険武器製造法違反』で豚箱とは一体どういうことなのか。



私の疑問を、モクレン様が答えてくれた。




「この国の法律はホムンクルスを魔道具として定義付けたんだよ」


「そう……ですか」




胸が痛い結末である。



サラサ先輩は耳を下げ悲しそうにして、レンゲ様は苦い顔で「やっぱりか」と呟く。



あれから、ホムンクルス達は全員救出された。

しかし、その命は一週間も保たなかった。


ユーフォルビア一族に臓器を提供するためだけに生み出されたホムンクルス達には、生きる力が備わっていなかったのだろう。


後に、彼らはホオノキ様達プルトハデス教の人々と協力して、海が見える見晴らしの良い墓地園に埋葬し、手厚く葬った。




「モクレン様。⋯⋯ロスベール公爵は、どうなったのですか」




ロスベール公爵には、半分モクレン様と同じ血が流れている。だからこそ、単一の血で造られたホムンクルス達には無い生きる力が備わったのだろう。


だが、そんな彼も、国は魔道具として定義してしまったのだ。



沈む声で質問した私に、モクレン様も沈んだ表情で答える。




「兄貴の裁判は『自分の失態をツミキちゃんに擦り付けるために貧民街に魔獣をけしかけた罪』と『根源の大樹を暴走させた罪』の二種類が行われたけど、結果は無罪。⋯⋯だって、『この国の法は【人】を護り裁くためにある』から」


「⋯⋯つまり、法律上『魔道具として定義されたロスベール公爵に、この国の法が適応されなかった』と言うことですか? ⋯⋯そんなの、ロスベール公爵にとっては極刑になるよりむごいのでは」




なんて言ったら良いのだろう。言葉が見つからない。


そんな私の手の上に、モクレン様が手袋を外した手を重ねた。暖かく優しい感触に安心する。




「それにね、兄貴が無罪になったのは、兄貴派の貴族達の力もあって。だって、兄貴が極刑になったら、芋づる式で自分達も罪に問われるから」


「⋯⋯最後まで保身だったわけですか」


「うん。しかも、証人になった親父は『俺はファウストに殺されかけた。悪いのは全部あの悪魔だ。でも、悪魔は俺の息子を含むこの国の英雄が打ち倒した! ハッピーエンドだ! これからは未来の話をしよう!』って責任逃れしてね」


「⋯⋯⋯⋯そうですか」




モクレン様の父君には会ったことはないが、出来れば会いたくないと思った。




「しかも、母親のベルさんは裁判にすら出なかった。『私は何も知りません。それに、新しい家庭があるからもう関わりたくない』って手紙を一枚寄越しただけ」


「そんな⋯⋯」




裁判中、手紙の内容を聞いたロスベール公爵はどんな気持ちだったのだろうか。


きっと、ロスベール公爵にとってのベルローザ氏は、私にとってのモクレン様だったのだろう。


そんな方から『お前なんかもう知らない』と言われたら、想像しただけで涙が出てしまう。



私の目から溢れた涙を、モクレン様は指で拭ってくれた。




「ツミキちゃんは優しいね。⋯⋯それなのに、連中は全員、兄貴という命の責任を取らなかったんだ。みんな、我が身可愛さに見て見ぬふりをしたんだよ。⋯⋯生まれたときから心を持ってる筈の人達が出した結論が、このザマだ」




ロスベール公爵の恩恵を受けていただろう人達は、全員彼を見捨てたのだ。


これが、生まれたときから心を持つ人の所業なのか。



そう思っていると、サラサ先輩が遠くを見ながら呟いた。




「心があるからこそ、じゃろうな。心と欲望は繋がっておるからのう。元来、心とは醜いものなのじゃよ。勿論、ハイエルフのわらわの心もな」




サラサ先輩はそう言って、草原に寝転んだ。


私もつられて寝転んだ。


四人全員で草原に寝転び、ぼけーっと青空を見上げる。




「心とは、醜いものなのですね。でも、美しい心もどこかにきっとあると、私は信じたいです」




私の言葉に、レンゲ様が



「美しい心⋯⋯って言えば。国一番に美しい心を持ってるってチヤホヤされてたカルミアはどうなったの?」



と続いた⋯⋯その時だ。



修理されたモクレン様のスマホへ、連絡が入った。




「どしたの? え、兄貴が牢屋から脱走した!? それは兄貴の監督をしてたマグノリア騎士団的にヤバい話だね〜! 大丈夫。俺らも探すから、捜索よろしく!」




これは相当不味い事態なのでは!?


私達は起き上がると、顔を見合わせ頷き合い、脱走したロスベール公爵を探しに行ったのだった⋯⋯。








◇◇◇


良い感じにお付き合いありがとうございます!


ちょっとでも

「面白い!」

「先が気になる!」

「ツミキ、やっちまったな!!」

「ロスベールが脱走!?ハムスターかよ!!!」と


思って頂けましたら、下記の星☆☆☆☆☆から★★★★★5評価を入れてくださると嬉しいです!(私のモチベーションが上がります!)

ブクマとべた褒めレビューとご感想とリアクションをお待ちしておりますぞ!



それでは、何卒宜しくお願い致します~!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。