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【完結】虐げられた死神令嬢ですが、陽気な騎士団長に溺愛されて幸せになりました。〜一方、私を捨てた元婚約者は知らない間に破滅してました〜  作者: ぷきゅのすけ
最終部 死神令嬢、幸せになる

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82・禁断の魔道具。その名は――

◆◆◆


プルトハデス人同士の殺し合いによって流れた血とかばねの瘴気が、数日間降り続いた雨によって地面に染み込んだ結果。


プルトハデス国に残された最後の水源は毒で汚染されてしまい、そんな毒の水に根を下ろしていた根源の大樹は枯れて腐ってしまいました。


そこからはもう大変。


毒により周囲の森は次々と死毒の森へと変化して、防衛戦どころではなくなってしまいます。


だけど、私達は⋯⋯ユーフォルビアはプルトハデス人を護るために戦い続けました。


それでも、敵であるペルセフォネ人はとても強かったのです。



疲労困憊になったユーフォルビアは、なんと。


ペルセフォネ人の攻撃を喰らい致命傷を負ってしまい、毒の泉と化した水源へ落ちてしまいました。


あの時の絶望は、今でも良く覚えています。


まさに、愕然! でした。




◇◇◇




「俺はな息子。カラタネちゃんをユーフォルビアの呪縛から救いたかったんだ。彼女と過ごしたのはほんの一時だったけど、それでも、救ってやりたかったんだ」




俺達三人からガン詰めされ、親父は取り調べを受ける犯人の様な雰囲気で真相を語り始めた。


それは、ポーラリス公爵家の屋敷の中でも一際豪華な親父の部屋で行われる、異様な光景であった。




「俺ならカラタネちゃんを救えるんじゃないかと思ったんだ。俺は、元凄腕の外交官で、長年聖ペルセフォネ王国の二枚舌共と戦ってきたんだ。⋯⋯だから、『こんな馬鹿な真似はもう止めろ』って説得しようと思ったんだ」




親父はきっと、本気でカラタネさんを救おうとしていたのだろう。


そんな親父はだんだんと険しい顔をしながら、言葉を続けた。




「ポーラリス公爵家でカラタネちゃんを保護しながら、俺は交渉の成功率を上げるため、プルトハデス教の弱みを握ろうと徹底的に枢機卿達を調べた。⋯⋯勿論、当時の枢機卿長ヨハンもな」


「当時の枢機卿長⋯⋯? あ、ああ。ファウストの前か」




俺がそう言うと、親父は自嘲めいた様子で鼻で笑い「ああ、『前』だな」と呟き、話を続けた。




「ある日、ヨハン達を嗅ぎ回ってた俺は、突然背後から一撃を食らって気絶した。今思えば、雷魔法だったのかもしれない。落雷の轟音がしたんだよ。⋯⋯⋯⋯そんで、気が付いたら、薄暗い魔道具工場⋯⋯? いや、魔道具の研究所にいた。しかも、俺は電気椅子に座らされてたんだ」


「⋯⋯電気椅子? 何だそりゃ一体」




疑問を口にする俺へ、レンゲくんが



「拷問魔道具の一種だよ。人を木製の椅子に座らせゴム布で手足を縛り付けて、電流を流すの」



と物騒なことをいう。



レンゲくんの解説に、親父は「あの時のことは二度と思い出したくない」と青ざめた顔をした。




「電気椅子に縛られた俺は、電流を流され悲鳴を上げ続けた。⋯⋯そんな俺を見ながら、枢機卿長ヨハンは何してたと思う? ⋯⋯アイツ、即席乾麺――カップ麺食ってやがったんだよ」


「⋯⋯終わってんな、色々」


「だろ? しかも、それだけじゃない。⋯⋯今でも、あの研究所の光景は⋯⋯悍ましくて、悪夢みたいで、酷過ぎてもはや滑稽で⋯⋯」




震えた声で吐き気をこらえるように話す親父は、「お前らにも悪夢のお裾分けだ」とやけくそ気味に笑った。




「なあ、息子の友人の天才ガジェヲタのレンゲくん。君に質問だ。⋯⋯『人工』とか『生成』って言葉はガジェヲタ用語で何と言う?」


「え? 突然ボク? ⋯⋯えっと、確かそれは『ホムン』っていう言葉ですけど」




突然始まったガジェヲタクイズに、俺もレンゲくんも戸惑っている。



だが、サラサだけは血の気を無くし


「あの違和感、お主、まさか」


と恐怖したように声を震わせる。



一方、親父は青褪めるサラサに


「さすが自然生命の化身であるハイエルフだな」


と諦めたように笑う。




「それじゃあレンゲくん。二つ目の質問だ。『生命』『知能』をガジェヲタ用語で何ていうかな?」


「それは⋯⋯『クルス』⋯⋯⋯⋯ホムン、クルス⋯⋯ホムンクルスぅう!!!???」




レンゲくんは何かを思い付いたように大声を出し、親父の机から勝手にペンと紙を持ち出してソファーの上に置くと、暗号と思われる意味不明な文字を書いてから、それにホムンクルスと言う単語を当てはめ、愕然とした声を出す。




「⋯⋯禁断の魔道具の暗号⋯⋯ホムンクルスで全部、当てはまるんですけど」




禁断の魔道具。ドクトルの日記にあったやつだ。


いにしえの錬金術師が開発して、国から断罪されたっていうアレだ。


そんで、ドクトルは戦争に勝つためそれを開発しろと国から命じられたんだ。



それが、禁断の魔道具ホムンクルス。


意味は、人工の生命。生成の知能。


だけど、一体なんだそりゃ。


何のこっちゃ? と言う状態の俺に対し、完全に顔色を無くした親父が光の無い目で答えた。




「あの研究所にはな、ホムンクルスが――人型魔道具が、――ロスベールが、大量に生成されてたんだよ⋯⋯っ!」




◇◇◇




「ロスベール公爵が⋯⋯『たくさんいる』!? ファウスト様、何なのですかこれは一体⋯⋯!?」


「困惑! ツミキ様にお見せするのは心苦しかったのですが、致し方ありませんねえ⋯⋯」




ファウスト様の緩い声が薄暗い部屋へ不気味に響く。


この部屋の最奥には、『ロスベール公爵がいた』


彼は、機械がたくさん付いた木製の椅子にゴムで手足を縛り付けられ座らされており、ぐったりと気絶している。



更に、部屋の右側の何やら液体が詰まっているガラスの筒の中にも、『ロスベール公爵がたくさんいる』


正確には、胸に『3.3』だとか『4.5』と焼印を押されたロスベール公爵が、一糸纏わぬ姿で膝を抱えて液体の中で眠っている。



その真反対、左側にも。


『ロスベール公爵がたくさん眠っている』



姿形が全く同じのロスベール公爵が、たくさん、液体に満ちた巨大なガラス管の中で眠るように膝を抱えていた。



なに? 


なんだ?


どういう事だ?


わからない。わからないとしか言えなかった。



思考が止まり硬直する私の背後から、カルミア様が嘔吐する声と共に、ファウスト様の柔らかい声が聞こえる。




「目を覚ましなさーい六・五号!」




すると。バチッッと言う静電気のような音共に、電気椅子が光った。




「ぅぐぁ゙ッ!?」




電気椅子に縛られたロスベール公爵はビクンと体を跳ねさせ、苦しげな声と共に起き上がる。


そして。




「⋯⋯⋯⋯は?」




ロスベール公爵は、気の抜けた声を出した。


そりゃそうだろう。だって、部屋中に敷き詰められた巨大なガラス管の中で、『大量の自分が眠っている』のだから。


青い目を見開き、まるで時が止まったように硬直するロスベール公爵。


そんな彼が縛り付けられた電気椅子がまた輝き、苦しげな彼の声がこの地下室に響く。




「ファウスト⋯⋯貴様、一体あがぁぁぁああッ!!!」


「六・五号、貴方には期待してたんですけどねぇー。だって、貴方は伝説の外交官フランシス・ポーラリスの子種から生成した人型魔道具、ホムンクルスなんですから。脳から出る電気信号を操り極限まで効率化させた人工の知能が搭載されし心無き肉人形。それが貴方なのです」




人型魔道具、ホムンクルス?


ロスベール公爵が、人型魔道具?



意味が、わからない。




◇◇◇




「親父、今なんて⋯⋯ロスベールが、兄貴が禁断の魔道具ホムンクルス!? 何言ってだお前ッ!?」


「本当だ。俺の息子はお前、モクレンだけだ。⋯⋯ロスベールはただ、俺の子種から生成されたホムンクルスに過ぎないんだよ」




親父が口にした言葉が、理解出来ない。


文章としては理解出来るが、会話として咀嚼できない。


頭が真っ白になった。


助けを求めるようにレンゲくんを見たが、レンゲくんも目を見開いて固まっている。



だが。




「何しとんのじゃ人の子がぁぁああッ!!!」




ブチギレたサラサが親父の襟首を掴んで上下に揺すりながら、怒鳴り散らす。




「人工の命じゃとッ!? 命をモノのように扱うとはッ!! 神にでもなったつもりか貴様らはぁあッ!!!」


「仕方無かったんだよ!! こっちは電気椅子で殺される寸前だったんだ!! だから身を護るために交渉したんだよ!!」


「交渉!? 何をしたんじゃお主は!!!」


「ホムンクルス実験に協力したんだ!! 子種を提供してな!!」


「なんてことを⋯⋯」




『怒る気すら湧かない』といったサラサは、親父から手を離すと「乱暴してすまん」と呟きソファーから降りた。



一方、親父はサラサに締め上げられたのを急に解放されたせいで、咳き込みながら上体を起こす。




「死にたくなかったんだよ。⋯⋯だから、電気椅子に体を焼かれながら、生き残るために必死に考えた。そして、コイツらにとって殺すには惜しい存在になれば良いって思ったんだ」




死にたくなかった。


親父の言葉に俺達三人は何も言い返せない。




「俺はまず『伝説の外交官であるこの俺の子種を使ってみろよ。面白い結果が出るんじゃねえの?』って話しかけた」




マジかよ、としか言えない。


俺は黙って親父の話を聞き続けた。




「そして、こうも提案した。『ホムンクルスなんて、隣の文明大国ペルセフォネでもいずれ開発されるはず。やがてホムンクルスは当たり前に魔道具量販店に売られ、ホムンクルス商戦と言う第二次大戦が始まるだろう。その時に有利に立ち回れるよう、伝説の外交官の俺と一緒にホムンクルスを使った商売をしようぜ』ってな」




道徳も倫理も無い発言に、俺達三人はため息を付いた。


だが、これも殺されかけた親父の必死の抵抗と考えると、何も言えなかった。




「俺の提案に、ヨハンも興味を示した。俺は子種を採取され、ホムンクルス実験の共犯になることで生きながらえた。⋯⋯カラタネちゃんを救うどころか、我が身可愛さに悪魔へ魂を売ったんだ。笑いたきゃ笑え」


「笑えねえよ。⋯⋯んで、そん時に採取された子種から生まれた兄貴はその後どうなったんだ?」


「ああ。アレな。⋯⋯カラタネちゃんを救えずに抜け殻になった俺は、ベルローザを娶ることで全て忘れようとした。⋯⋯でも、可哀想にベルローザは子供が出来ない体質でな。その時思い出したんだよ。俺の子種から生成されたホムンクルス、どうなってるかなって。大丈夫そうなら一人養子に迎えようかなって」




親父はサラサが言う通り、中途半端善人の無責任クソジジイである。

こんなのが俺の親父なのかと顔が引き攣る。




「ヨハンのとこに行くと、俺の子種から生成されたホムンクルスは細胞の塊から赤子になっててな。俺はヨハンに言ったんだ。『人型魔道具が人の世に溶け込めるかどうか、実験してみよう』って。そんで、その赤子をベルローザに『遠い親戚から養子をもらった』って嘘付いて渡した。ベルローザの立場を護るためってことで、彼女派の使用人達と口裏合わせて、ベルローザが産んだってことにした」


「⋯⋯マジかよ」




あまりの事実に頭が痛くなって来た。


親父の話を全部聞き終わる前に気絶しそうだ。





「その後、ヨハンが死んで、新しい枢機卿長に若い男が就いた。ヨハンから解放されたと思った束の間、俺のとこに挨拶に来たファウストが、カップ麺食いながら言ったんだ。『新生! 今度もよろしくお願いしまーす』ってな。その時思い知ったよ。あ、本物の悪魔ってコイツのことを言うのかってな」




この時。思い知った。


俺達の敵はロスベールでもカルミアでもなく、正真正銘の本物の悪魔なのだと。









◇◇◇


……良い感じにお付き合いありがとうございます。


「は」

「うそ」

「いや、え?」

「まじ?」と


思って頂けましたら、下記の星☆☆☆☆☆から★★★★★5評価を入れてくださると嬉しいです。


ブクマとべた褒めレビューとご感想とリアクションと悲鳴をお待ちしております。


また、本日は二話更新です。ロスベールとカルミアの断罪回なので、何卒よろしくお願いいたします。

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