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【完結】虐げられた死神令嬢ですが、陽気な騎士団長に溺愛されて幸せになりました。〜一方、私を捨てた元婚約者は知らない間に破滅してました〜  作者: ぷきゅのすけ
第三部 死神令嬢、ひたすら愛される

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51・これがデートなのですね

「モクレン様。とても素晴らしい舞台でしたね」


「そだね⋯⋯。っ⋯⋯ぐすっ。⋯⋯涙、止まんないや⋯⋯」




王都の大劇場で舞台を見終えたあと、私達は近くのカフェで休憩していた。


近くに大劇場があるためか、このカフェには貴族と思われる豪華な装いをした人々が多い。


綺羅びやかな服装に身を包む女性達はチラチラとこちらを見ながら



「完全紹介制のサロン・ド・オーヤマの、しかも外出用の服を二着もなんて⋯⋯なんて金持ちなの⋯⋯?」



と褒めてくださるが、この衣服はレンゲ様が以前王都に行ったとき着た服を仕立て直してくれたものであり、ついでに言うとマグノリア領の経営はいつもギリギリだ。



そんなギリギリの状況の中でも、レンゲ様はシンプルなワンピースを上品なアンティークドレスへと進化させたのだ。

その腕は、まるで魔法のよう。


そして、その魔法の如き手腕はモクレン様の服のデザインにも発揮された。


お忍びで街に来た大貴族が着ているような衣服は一変し、白と黄色とアクセント程度の金細工が美しい紳士服となったのだ。



そんな紳士服を着こなすモクレン様は、舞台の終盤からずっと涙を零していた。



心無き私には涙など存在しない。

だから、モクレン様の涙にはとても興味関心があった。




「モクレン様。あの舞台は歴史に残る名作でしょう。未来からやって来た人型兵器が少年との交流で心を学び、やがて自分達がもたらすだろう厄災の未来を回避すべく、自らの存在を完全に抹消するため溶鉱炉へ沈む途中、少年に習った親指を立てるハンドサインを見せたラストには胸が熱くなりました」


「そだね。⋯⋯俺、途中から人型兵器とツミキちゃんが重なっちゃって。⋯⋯ツミキちゃんは⋯⋯未来から来てないよね? 親指立てて溶鉱炉に沈んだりしないよね?」


「!! ⋯⋯じ、実は、私は狂戦士ユーフォルビアの器となるべく生み出さた人型機械であり、そ、その暁には全プルトハデス人を殲滅するため」


「⋯⋯それ、嘘でしょ」


「! ⋯⋯はい。申し訳ございません。親しみからの冗談を言ったつもりでしたが、失敗でした」




レンゲ様のようにはいかなかった。


モクレン様の洞察力が素晴らしいのか、私の嘘の技術が壊滅的なのか。


多分、どちらもだろう。




「まあ、もしツミキちゃんが親指立てて溶鉱炉に沈んでも、そん時ゃ俺が引っ張り上げるから、安心してよ」


「お言葉ですが、溶鉱炉に沈んだ私を引き上げるとなると、モクレン様も無事では済まないのでは」


「⋯⋯ツミキちゃん。俺、実は異世界から転生して来たチート持ちの美男子なんよ。前世は一ヶ月で億単位稼ぐカリスマ悪質ホストだったんだけど、痴情のもつれでお姫に焼き殺されたから、火属性に耐性チートがあんの」


「!!!! そうだったのですね!!! モクレン様の桁外れな社交力と人心掌握力と統率力は前世の知識によるものでしたか!!!!」


「⋯⋯ツミキちゃん、嘘ってのはこうやってつくんよ」


「⋯⋯⋯⋯はい。参りました」




神妙な顔で語ったモクレン様にすっかり騙されてしまった。

やはり、モクレン様の会話能力はすごい。改めて実感する。



そうしていると、注文したケーキと紅茶が来たため、それらを頂きながら先程見た舞台の話をした。




「それにしても⋯⋯人型兵器の男性の生き様には胸が熱くなりました。私もかく有りたいと存じます。⋯⋯しかし、ホオノキ様のお蔭で読めるようになった『龍の如く暴れ回る裏社会の男性の漫画』でも胸を熱くしたのです。⋯⋯人型兵器か裏社会の龍か、どちらを目指すのが良いでしょうか?」


「⋯⋯なんか服屋で『どっちの色が良い?』って質問されてる気分」




モクレン様は苦い笑いを浮かべながら



「ちなみに俺は『主人公が新しくなったバージョンに出てくる、料理好きのマフィアのボスが好きかな〜』」



と付け足した。




「まあ、それは置いといて。⋯⋯人型兵器も裏社会の龍も、人を護るために戦う姿が超カッコいいよね。⋯⋯そんな姿にツミキちゃんも胸を熱くしてるんなら、とりあえず二者の共通点である、『自分の強さで誰かを助ける』って言うのを目指せば良いんじゃない?」


「自分の強さで⋯⋯誰かを、助ける?」


「そう。この強さってのは、腕っぷしだけじゃなくて。⋯⋯例えば、俺は君みたいに戦えるわけじゃないけど、その代わり料理が出来たり、人と協力して何かを達成するのはまあまあ得意だから。それを使って、誰かを助けてるってわけよ」


「⋯⋯確かに」




モクレン様に助けられたのは、私だけじゃない。


就職先が無く途方に暮れていたレンゲ様や、住んでいた森が死んで住所不定の無職になったサラサ先輩や、マグノリア騎士団の人々がいる。


きっと、他にも大勢いるだろう。




「だから、色んな強さを発見して身に付ければ問題無しよ。人の世ってのは、色んな強さに助けられながら成立してるもんなんだから」


「⋯⋯そう、ですか」




私の強さは、魔獣と戦うための頑強な肉体と、呪いと毒へ強い耐性があることくらいだ。


だが、それ以外に何か別の強さがあるのなら。


例え、魔法兵器と魔道具が魔獣や死毒の森問題を解決する新時代が来ても、私は人の世に⋯⋯⋯⋯モクレン様の傍に、いられるのだろうか。



私の向かいで上品にケーキを召し上がるモクレン様は、店内の女性客の視線を一身に集めている。


モクレン様は自他共に認めるモテまくりの美男子だ。

サラサ先輩は『モクレンを独り占めできる絶好の機会じゃぞ』と仰ったが、それは無理ではなかろうか。


そう思うと、胸の内が重くなった⋯⋯その時。




「ほら、ツミキちゃん。あ〜んして♡」


「? 突然どうされたのですか?」


「いや〜さっきから君に熱い視線を送ってくる野郎共の脳を破壊してやりたくて」




モクレン様がフォークに刺したケーキの苺を、私へ差し出した。

目を細めてふんわり微笑むモクレン様の笑顔は、やはり美しい。




「食事の介助は人前で行っても恥ずべき行為ではありませんので〜」


「⋯⋯それは、私の真似ですか?」


「そだよ〜。似てるでしょ」


「私は⋯⋯貴方のように微笑むことが出来ません。何をどうやっても、この表情筋は鋼鉄のように動かないのですから」


「まあ、筋肉なら鍛えりゃそのうち動くと思うよ。良い歌を歌うために毎日体鍛えてる婆ちゃんが言ってたから。人と金と時代は裏切るけど、筋肉だけは裏切らないって」


「なるほど。筋肉も立派な資産なのですね」




モクレン様のご厚意に甘え、ケーキの苺を頂いた。

さっぱりした生クリームと苺の甘酸っぱさがとても美味しい。


⋯⋯しかし、モクレン様が焼いたミルクシフォンケーキの方が美味しいと思ってしまった。

勿論、お店に失礼なので口外することはない。


いつか、モクレン様も苺のケーキを焼いてくれるだろうか。それがとても楽しみである。



食事を終えてモクレン様がお代を支払う際、


『列が出来そうなので店外でお待ちいたします。その際、ご馳走頂きました事に感謝を申し上げます』


と言い、店外へ出た。



すると、隣の路地から


「やめてくださいッ!!!」


と言う女性の声がしたではないか。



すぐに声のした方へ向かい、薄暗い路地へと急ぐ。


そこには、三名の男性に絡まれ腕を掴まれた女性が目に涙を浮かべて震えていた。




「揉め事でしょうか」




そう言うと、女性は「助けて⋯⋯っ!」と涙声をあげた一方、彼女に絡む男性達の一人が、私へ近寄って来た。




「どうしたの、お嬢さん迷子?」


「迷子ではありません。そちらの女性は怯えておりますので、お離しくださいませ」


「えー、寂しいこと言わないでよ。お嬢さんも一緒に遊んでくれたら、あの子も怖くないと思うよ?」




男性はそう言って、私へ笑いかけた。

だが、その見開かれた目は少しも笑っていなかった。




◇◇◇




「えーっと、ツミキさん? 貴女、留置所にぶち込まれた意味わかってる?」


「誓って殺しはやってません」


「殺してませんって⋯⋯一人目は壁に顔面を五回打ち付けられて頭部粉砕骨折、二人目は顎を蹴り上げられ昏倒した挙げ句髪を掴まれ地面に顔面を摩り下ろされて、戦意喪失して腰を抜かした三人目は酒場の電光看板で頭をぶん殴られたのよ」


「そして、起き上がって逃げようとした二人目の男性の頭部を掴み酒場へ入り、電子レンジ型魔道具へ頭を突っ込んで店の主人に『温めよろしくお願いします』とお伝えしました」


「⋯⋯過剰防衛からの暴行罪の自白をどうもありがとう」


「どういたしまして。お力になれて光栄です」


「褒めてないわよ」




三人の悪漢を死なない程度に駆除した際、騒ぎを聞きつけた聖騎士団にワッパをかけられ留置所へ連行された私は、出されたカツ丼を頂きながら女性騎士に事件の経緯をお伝えしていた。


騎士様曰く、三人の男性は一年間病院で流動食生活となった上に、『堂島の龍⋯⋯ターミネーター⋯⋯うわぁぁあ』と悲鳴を上げているそうだ。




「騎士様。女性はご無事ですか? 三人の男に取り囲まれたのです。とても怯えていたでしょう」


「ええ。今でも泣いて怯えてるわよ。⋯⋯あんたにね」


「恐れ入ります」


「だから褒めてないっての。何ちょっと誇らしそうな顔してんのよ」




そんな時だ。


新たにやって来た女性騎士が



「同伴中の悪質ホストがあんたを迎えに来たわよ」



と呆れたような顔でそう言った。




「同伴中の悪質ホスト? ⋯⋯それって、モクレン様!」




モクレン様が迎えに来てくださったのか。

私はすぐに留置所の出口へ向かったのだった。




◇◇◇




「いや〜、てっきり悪漢から怯えるツミキちゃんを護るロマンス小説の鉄板イベントが来るかと思ったら、龍が如く暴れまわってパクられたツミキちゃんを迎えに留置所に行くことになるとは⋯⋯。現実ってのは小説より奇なりだねえ」


「申し訳ございません。ご迷惑をおかけしました」


「良いってことよ。それに、あの三人の男は女性を見ると悲鳴上げて逃げるほどの女性恐怖症になったみたいだし、結果的には良かったんじゃない?」




留置所の玄関口にて、モクレン様は


「刺激的なデートだね。こんなの初めて♡」


と笑っている。


同伴中の連れが目を離した隙に大暴れして留置所にぶち込まれるという多大な迷惑を被ったと言うのに、モクレン様は怒るどころかいつもと変わらずニコニコ笑って迎えに来てくださったのだ。


モクレン様は、懐が深くお優しい方である。




「ツミキちゃん、この後どうする? なんか適当に店回って、ぶらぶらしてからお土産買って帰ろうか」


「そうですね。では、レンゲ様やサラサ先輩へのお土産を探しつつ、気の向くままに歩き回りましょう」


「良いね〜」




モクレン様はそう言って、私の手を取った。




「もう俺から離れちゃ駄目だよ。⋯⋯口説き文句とかじゃなくて現実的な意味で」


「恐れ入ります」


「ツミキちゃん、もし今度悪い奴をボコボコにするなら、事情聴取のとき『数人の男性が襲って来て怖かったんです』ってちゃんと被害者面するんだよ。『誓って殺しはやってません』とか堂々としてたら下手すりゃ弁当持ちになりかねないからね」


「弁当持ち⋯⋯ですか? さきほど、取り調べの際にカツ丼なるものを頂きました。美味しかったのでお土産にしたいと存じましたが、あのカツ丼は弁当として持ち帰りも可能なのですか?」


「そんなん言ったら君がムショにテイクアウトされちゃうよ」




モクレン様は鋭いツッコミをくださったあと、



「弁当持ちってのは執行猶予って意味なんよ。ほら、弁当って常に持ち歩くし、執行猶予中にやらかすことを『弁当を食う』って言えるからね」



と教えてくださった。


モクレン様のお陰でまた一つ賢くなれたと誇らしくなった。








◇◇◇


良い感じにお付き合いありがとうございます!


ちょっとでも

「面白い!」

「先が気になる!」

「デートで弁当持ちってなんだよ!!!」

「パロディが細か過ぎてわかんねえよ!!!」

「ぷきゅのすけ夏コミお疲れ様!!!」と


思って頂けましたら、下記の星☆☆☆☆☆から★★★★★5評価を入れてくださると嬉しいです!(私のモチベーションが上がります!)

ブクマとべた褒めレビューとご感想もお待ちしておりますぞ!



それでは、何卒宜しくお願い致します~!!!

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