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【完結】虐げられた死神令嬢ですが、陽気な騎士団長に溺愛されて幸せになりました。〜一方、私を捨てた元婚約者は知らない間に破滅してました〜  作者: ぷきゅのすけ
第三部 死神令嬢、ひたすら愛される

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50・新時代を前に、私は

「ツミキ氏ー。この前、うちのサロンが衣装デザインした関係で、ママが舞台のチケット送ってくれたんだぁ。だから明日にでもモクレン氏と行ってきなよ」




鮭魔獣軍団を殲滅するべく漁港へ向かったその数日後の昼。


食堂と繋がるリビングルームにて。


小熊のぬいぐるみクマレンと、文鳥状態のサラサ先輩のどちらがもふもふかと『もふ比べ』をしていたら、寝間着姿のレンゲ様があくび混じりに仰った。




「私とモクレン様が⋯⋯ですか? レンゲ様とサラサ先輩は行かないのですか?」


「悪いねツミキ氏、このチケットは二人用なんだ。だからボク達のことは気にせず行っておいで」


「そう⋯⋯ですか」




正直言うと、レンゲ様とサラサ先輩との四人で出かけたい気もある。

漁港の夜祭の時のように、みんなで出かけたらきっと楽しいだろう。


そう思っていると、サラサ先輩がもふもふな文鳥状態まま



「ツミキ! モクレンを独り占め出来る絶好の機会じゃぞ!」



と白い羽で親指を立てるようなハンドサインをした。




「モクレン様を⋯⋯独り占め、ですか」




独り占め、と言うのが具体的に何を意味するのかはわからない。


でも、一日中ずっとモクレン様とずっと一緒にいられると思うと、胸がふわふわと温かくなり『きゅっ』と言う鋭く甘い痛みが疼く。


なんなのだ、この痛みは。私は何か病気になったのだろうか。だが、私は至って健康である。理解不能だ。




「それにさ。モクレン氏も、ツミキ氏に誘われたら嬉しいと思うよ?」




そう言ったレンゲ様が、文鳥状態のサラサ先輩の背後に回り、もふもふな白い羽毛にだるーんと身を預けてソファーに寝転んだ。




「モクレン様が、嬉しい⋯⋯ですか? お言葉ですが、レンゲ様はどうして他者の心がわかるのですか?」


「それはねぇー。ボクは雷魔法の使い手だから、脳内の電気信号を感知して感情を解析することが出来るんだよぉ」


「!!!??? なんと!!! それはすごい!!!!!!」


「ごめん嘘」




なんだ、嘘か。

嘘を言ったレンゲ様は、サラサ先輩のもふもふに埋もれて蕩けるように笑っている。親しみから来る冗談の一種だと理解した。


私も、この技術を学びたいものだ。




「電気信号は嘘だけど、モクレン氏がツミキ氏に誘われたら喜ぶってのはホント。ガチのマジ。百喜ぶよ」


「⋯⋯そう、ですか⋯⋯」


「うん。だからモクレン氏の部屋に行って誘って来な。⋯⋯大丈夫。デートに着ていく服ならボクがパパっと用意出来るからさ」


「ありがとうございます⋯⋯!! では、モクレン様にお声をかけて参ります」




レンゲ様から受け取った二枚のチケットを手に、私は食堂から出て、屋敷の階段を登る。


モクレン様の部屋の前に到着し、ドアを三回叩き



「モクレン様。よろしいでしょうか?」



と声を掛けた。



すると、ドア越しに「いいよ〜」と返事が来たので、そっと部屋へ入ったのだった。




◇◇◇




「舞台? 俺と⋯⋯!? いいの!? うん、行く行く!!」


「! ありがとうございます!」




机に座って書き物をしていたモクレン様の隣りに座り、舞台を見に行こうとお誘いすると、モクレン様は声を弾ませた。


良かった。喜んで下さったのだ。


それが、とても嬉しい。




「舞台に行くついでに、手紙出しに郵便局寄って良い?」


「はい、勿論。⋯⋯あの、手紙とは⋯⋯一体」




モクレン様は美しい字が流れる便箋を二つ折りにし、それを紙で包んでから、溶かした蝋を垂らす。


そして、手に取った金属性のスタンプで蝋を潰すようにぎゅっと押すと、蝋は美しい模様を形度って固まった。




「この手紙は、この前レンゲくんがレールガンジャーの魔道具武器を作ったとき、手伝ってくれた武器屋の職人さん達に送るものなんだ」


「武器屋の、職人さん? ⋯⋯お礼の手紙ですか?」


「それもあるけど、これは依頼の手紙でね。⋯⋯魔道具武器よりもっとスゴいモンを作れないか? って言う相談なんよ」




モクレン様は他の手紙にも溶かした蝋のスタンプを押しながら答えた。




「ほら、ヒーローショーの最中にさ、首無し騎兵の魔獣が出たじゃん。学者さん達が悪霊魔獣って分類してデュラハンって名前付けたアイツ。⋯⋯あんなのがまた暴れ出したら大変だからね。少しでも対策しなきゃ」


「確かに⋯⋯」




青白い炎を纏い、闇夜を縦横無尽に駆け回る首無し騎兵のデュラハンは、獣というより悪霊だった。

あんな魔獣は今まで聞いたことが無い。




「そもそも魔獣とは、死毒の森が動物の死骸を吸収し、毒を使って復活させた生ける屍です。⋯⋯そこに悪霊魔獣と言うのが生まれたというのは⋯⋯一体どう言うことなのでしょう」


「そっか⋯⋯。動物の死骸を吸収して自分達の毒で復活させる⋯⋯⋯⋯動物の、死骸⋯⋯⋯⋯まさか」




動物、と口にした瞬間。

モクレン様は顔色を失くした。




「動物⋯⋯つまり、『人という動物』の亡骸すら、死毒の森は吸収して毒をぶち込んで魔獣にしたって⋯⋯こと?」


「そんな⋯⋯無茶苦茶な⋯⋯」




すぐには受け入れられなかったが、確かに人も動物の一種だ。

だとすると、女性の身体と鳥類が合体したようなハルピュイアなる魔獣が生まれた理由も納得できる。




「それにさ、⋯⋯デュラハンって首無し騎兵なわけじゃん。ってことは、もしかして⋯⋯百年前の大戦で命を落とした騎馬兵士の亡骸⋯⋯なの、かも」


「百年前の大戦で、亡くなった騎兵の亡骸⋯⋯ですか? 確かに、死毒の森が発生して『以降』の百年間は、騎馬兵士が活躍するような事態はありません。⋯⋯ならば、それ『以前』の⋯⋯百年前、隣国との大戦で命を落とした騎馬兵士の亡骸を、死毒の森が吸収していたのでしょうか?」




今まで、魔獣を生み出す死毒の森はハイエルフによって弱体化していたため、動物の名残を残す獣魔獣を生み出すのがやっとであったのだろう。



だが、私とサラサ先輩がいなくなった瞬間、死毒の森が本領を発揮し、動物を使役可能な知的生命体である人族の亡骸を、魔獣として再利用することが可能になったのか?



⋯⋯魔獣は、私達の想像を超えた速さで、より凶悪に成長している。


ならば、凶悪な悪霊魔獣を超える魔獣が出てくるのも、時間の問題なのかもしれない。




「⋯⋯モクレン様。舞台を観覧するのは中止にして、今すぐに死毒の森を一片残らず狩り尽くしましょう。レアメタルにより、防毒マスクの増産と小型化と性能の進化も可能となりました。なので、今すぐ」


「待って待ってツミキちゃん落ち着いて! 現実問題、防毒マスクが増産出来ても、肝心の魔獣を倒せる力が俺等には無いのよ。兄貴も聖騎士団もあのザマだし、それに⋯⋯」




モクレン様は悔しそうな顔でため息を付いた。




「マグノリア騎士団のみんなも頑張ってはくれてるけど⋯⋯。正直、新時代の魔獣を倒すには、常人が訓練したくらいじゃどうにもならないんだわ」




モクレン様の言葉通り、昔に比べて今の魔獣は悪夢のように強い。


私でさえ、デュラハンに遅れを取ったくらいである。


レアメタルによって魔法科学の新時代が訪れたのと同時に、魔獣達にも新時代が訪れたのだろう。




「新時代の魔獣に⋯⋯私⋯⋯ユーフォルビア一族は対抗出来るのでしょうか。魔獣の進化に追い付けず、流行りの言葉で言うとオワコンになるのでは⋯⋯」


「それはないよ。ユーフォルビア一族がオワコンになったときは、それはもうプルトハデス国自体が終わってる時だし。だからさ、そうならないためにも、俺は武器屋の職人さん達に手紙を出したいわけなんよ」



モクレン様は話題を最初へ戻した。




「こっちにはレアメタルがある。それを使って魔獣に対抗できる『魔法兵器』を開発しないと」


「そうですね⋯⋯。そうなれば⋯⋯ユーフォルビア一族の私は」




悪霊魔獣を倒せる魔法兵器が作れたら、人族の安寧は保たれるだろう。


だが、その時⋯⋯ユーフォルビア一族は?



私は? 私は、どうなるのだろう?



我々ユーフォルビア一族が死罪にならず生かされているのは、魔獣からプルトハデス人を護るためだ。


だが、魔法兵器が魔獣を殲滅するようになれば、罪深きユーフォルビア一族は本当にオワコン――要らない存在じゃないか。




「⋯⋯ツミキちゃん? どしたの、体調悪い?」




忘れていた王都での記憶が蘇る。


心無き化物として、投げられた石の感触を思い出す。


正直言うと、石を投げられても酒瓶を投げられても、『痛くも痒くもなかった』


ユーフォルビア一族は、魔獣と戦うために交配を重ねて生み出された人型戦闘魔道具なのだ。


頑強な筋肉と鋼鉄の如き骨格を持つ化物――




「ツミキッッッ!!!」


「!」




モクレン様の声で、意識が『今、此処』に戻った。


モクレン様のここまで切迫した顔は、初めて見た。




「モクレン様⋯⋯申し訳――」


「謝らなくて良いから⋯⋯良いんだよ」




モクレン様の両腕が私の身体を強く包み込む。


後頭部を優しく撫でられると、呼吸が安定した。




「魔法兵器が魔獣を倒しても、ツミキちゃんはオワコンなんかじゃない。⋯⋯大丈夫だよ」




モクレン様の体温と力強さが心地よい。




「モクレン様。貴方はとても良い香りがしますね。⋯⋯貴方に抱きしめられるのは、湯浴みのように心地良いです」


「⋯⋯でしょ? 香水は美男子の嗜みですから」




モクレン様は少し笑いながらそう言って私から離れると、耳にかかる白金色の髪をそっとかき上げた。




「耳の後ろとか手首とか、そう言った場所につけんの。ツミキちゃんも何か付けてみる?」


「そうですね⋯⋯ではモクレン様がお好きな香りを⋯⋯⋯⋯? モクレン様、お耳に怪我をされているのですか?」




モクレン様の耳朶には、丸く小さな刺し傷のような痕がある。

耳というデリケートで敏感な器官を怪我をしたなら、すぐに手当せねば。


焦る私に、モクレン様は



「違うよ、これはピアス痕。⋯⋯大学時代の名残りって感じかな」



と仰った。




「大学時代はさ、レンゲくんのバチバチのピアスに憧れて、俺も一個開けてたの。でもまあ、卒業後に領主的な立場になったから、外したんだ」


「そうですか⋯⋯痛みはありますか?」


「ううん。痛くないよ。穴も塞がってるし。ほら」




そう言って、モクレン様は顔を反らしてかき上げた髪がはらりとかかる耳を私に近付けた。


⋯⋯瞬間。


気が付いたら、モクレン様の耳に手が伸びていた。




「ひぇッ!!? ツミキちゃ、あのいきなりどしたの!?」


「! 申し訳ございません⋯⋯! 何も考えておらず、その」




モクレン様は顔を真っ赤にし耳を抑えている。




「べ、別に、良い⋯⋯けど⋯⋯その。他の人には絶対やっちゃ駄目だからね。俺だけにしてよ? そういうの」


「! モクレン様に触れるのはよろしいのですか?」


「え、ええ。うん。まあ⋯⋯そだね」




お優しいモクレン様は私の接触を許して下さった。


モクレン様は私を元気付ける意図がある抱擁はして下さるが、それ以外に触れ合うことはあまり無い。


だから、私からモクレン様に触れられるのがとても嬉しく楽しかった。


彼の柔らかく少しひんやりした耳は触り心地が良い。




「それにしてもピアスとは不思議ですね。人とは本来怪我を恐れる生き物なのに、自分からは見えないピアスと言う装飾品を付けるために進んで怪我をするなんて」


「⋯⋯ひっ⋯⋯ぁ、あ⋯⋯う、うん。そっすね⋯⋯んっ」


「? 先程から何かを堪えるように顔を赤くし、肩をびくびくと跳ねさせておりますが、どうされました? もしかして傷跡が痛みますか?」




そう聞くと、モクレン様は「いや、違くて⋯⋯っ、ひぅっ」と上擦った声で言う。


痛みが無いなら良いかと、私は気が済むまで触り続けた。








◇◇◇


良い感じにお付き合いありがとうございます!


ちょっとでも

「面白い!」

「先が気になる!」

「ツミキ……頑張れ……!」

「モクレン色々と押しに弱すぎるやろ」

「ピアス痕ってなんか良いよね」


思って頂けましたら、下記の星☆☆☆☆☆から★★★★★5評価を入れてくださると嬉しいです!(私のモチベーションが上がります!)

ブクマとべた褒めレビューとご感想もお待ちしておりますぞ!



それでは、何卒宜しくお願い致します~!!!



また、明日16日のコミケにて、

16日(土) ア-81a(東4ホール)でサークル名ぷきゅのすけで出ております!

本業のイラストレーターとして色々出しているので、良かったらお越しくださいませ~!

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