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【完結】虐げられた死神令嬢ですが、陽気な騎士団長に溺愛されて幸せになりました。〜一方、私を捨てた元婚約者は知らない間に破滅してました〜  作者: ぷきゅのすけ
第三部 死神令嬢、ひたすら愛される

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48・みんなでお祭りです

「俺、モクレンだよ〜! 二人とも〜もう祭り着着れた? 入って大丈夫そ〜?」



とドアの向こうから聞こえてきた。 



女将さんのご厚意で、私達は漁港に古くから伝わる祭り着を頂戴し、着付けまでして頂いた。


そして、着付けが終わると、先に祭り着を着たレンゲ様が髪型を整えてくださったのだ。



私の髪は、髪を解き毛先を緩く巻いたうえ、片側にお団子を作ったハーフアップとなっている。


その反対に、サラサ先輩はお団子を解き、編み込みの混ざった豊かなサイドテールを結って貰っていた。

桃色の花が咲く白い生地に合わせた赤い帯から、美しい魚のヒレのようなフリルを靡かせる祭り着を着たサラサ先輩を見ていると、思わず抱き締めたくなるから不思議である。

 


そんなサラサ先輩は


「これで思っクソ振り向けば髪でシバくことが出来そうじゃのう」


と笑い、


レンゲ様は


「モクレン氏には良いけど、ボクやツミキ氏にはにはやんないでね」


と涼し気な顔で言った。



そんなレンゲ様の祭り着は、真っ赤な布に黒い模様が入ったアヴァンギャルドなものだ。そこに黒い手袋と帯と帽子を足すとは、かなりの上級者である。

さすがサロン・ド・オーヤマの御子息だ。


ちなみに、モクレン様の着付けもレンゲ様が行っていた。


モクレン様は、どんな祭り着をお召になったのか。楽しみ状態になりつつ、



「モクレン様。どうぞお入りください」



と声をかけた、


すると、「入るよ〜」という声と共に、ドアが開かれモクレン様が現れたではないか!


うっすらと模様が入った真っ白の祭り着に黒い帯を合わせた装いを、モクレン様はしっかりと着こなしていらっしゃる。


しかも、髪型は祭り着に合わせて整えられていた。

ふわふわした白金色の髪は、片側を耳に掛けた状態で編み込んでおり、いつも涼し気だ。




「モクレン様。祭り着も髪型もとても良くお似合いです」


「! ぁ、ありがとね⋯⋯褒めるの、先越されちゃった」


「ついでに言うと、猟師の胴長と長靴姿もイカのすけくんシャツも良くお似合いでした。さすがは美青年です」




私がそう言うと、モクレン様は頬を赤く染めて私から目を逸らした。


そして、決まりが悪そうな恥じらいの表情を浮かべて



「⋯⋯ツミキちゃんのが、スパダリの才能ありそうだわね」



と引き結んだ唇からそう零した。



そんなモクレン様は、言葉を止めてじっと私を見ている。


祭り着が珍しいのだろう。

確かに、この漁港に伝わる装飾はとても不思議である。

広く大きな布と帯だけで衣服を作り上げてしまうのは、魔法のようだと私も思う。


しかも、マグノリア地方の特産品である紫の塗料で染まった布には、百合に似た白い花が刺繍されており、それがとても美しい。




「⋯⋯ふ、二人とも、祭り着似合ってんじゃん〜!! 良いね〜!!」




モクレン様はすぐにニコッと微笑んで、いつもの調子で褒めて下さった。



すると、サラサ先輩が



「わらわのことは良い。お主に言われんでもわらわがゲロマブなのは三十年前から知っておる。じゃから、ツミキを褒めてやれ。スパダリになるのじゃ、モクレン」



とモクレン様に駆け寄り優しく笑った。




「そんじゃ、わらわとレンゲは宿の外で待っておる! 三十分までなら待ってやるゆえ、しかとラブコメするのじゃぞ!」



と言って、レンゲ様の手を引いて先に行ってしまった。



一方、残された私はスパダリと言う言葉が分からず、



「ところで、さっきから出てくるスパダリ⋯⋯とは?」



とモクレン様に聞いた。




「う〜ん⋯⋯人によって定義が違うかもだけど、まあ簡単に言えば、望めば何でも叶えてくれる自分だけに甘い美男子⋯⋯みたいな?」


「何でも叶えてくれる、自分だけに甘い存在⋯⋯それはもしや、この国で大人気の『青いタヌキの精霊がチート魔道具でダメダメな少年を甘やかして願いを叶えてくれる漫画』の青タヌキのような存在なのでしょうか」


「あ〜確かに。青タヌキの美男子版がスパダリなのかもね。魔法のポケットから魔道具じゃなくて薔薇の花束や指輪を出してくる⋯⋯的な? ⋯⋯⋯⋯と、言うわけで」




モクレン様はズボンのポケットから何かを取り出し



「ちゃらららっ! 良い感じのかんざしぃ〜〜〜〜」



とダミ声を出した。



何? 何だ? どういうことだ?

一体何がどうしたのだ?

モクレン様は喉を痛めておられるのか?

ならば、祭りと言う人が多い場ではなく、宿で療養した方が良いのでは?


モクレン様の突然のダミ声で、私の思考は高速回転した。


だが。




「⋯⋯ごめん、青タヌキの真似をするっていうボケでした⋯⋯」




モクレン様は申し訳なさそうに笑った。


なるほど、物真似によるボケだったのか。


ホオノキ様の元でツッコミの訓練はしたが、まだまだのようだ。




「申し訳ございませんモクレン様。私が至らぬばかりにボケを拾えませんでした」


「良いんだよ、こっちこそ急にダルいボケかましてごめんね⋯⋯」




モクレン様はそう言って、祭り着と同じ白い花が付いた良い感じの簪を、私のまとめた髪に刺してくれた。




「ここに来る途中、雑貨屋で鮭魔獣ぶっ殺すの手伝ってくれたお礼って皆に贈り物探してたら、良い感じの簪を見付けてさ。ツミキちゃんに似合うな〜って思ったんよ」


「! ⋯⋯私に、似合うと思って⋯⋯買ってくださったんですか?」




簪を見て、私に似合うと思ってくださったのか。


私がいないときでも、私を思い出してくださったのか。



胸の奥がきゅぅうっと甘く締め付けられるのを感じる。

だが、呼吸には問題無い。ただ、胸の鼓動が騒がしいだけ。


一体、私の身に何が起きたのだ?




「モクレン様。簪の授与をありがとうございます」




雑念に支配されたが、まずは贈り物を頂いたことへ感謝を申し上げるべきだろう。


私がそう言うと、モクレン様は熱を出してぼーっとしたような顔で私をじっと見ながら




「⋯⋯⋯⋯良い」



とだけ、ぼそりと呟く。


その単語はボケなのか?

だが、どう突っ込めば良いのか分からない。



私は取り敢えず、ホオノキ様から習ったツッコミの決まり文句である「なんでやねん」と返す。



すると、モクレン様は私をじっと見ながら「⋯⋯ほんまやね」と少し笑って、ホオノキ様の訛りを口にしたのだった。




◇◇◇




夜祭の会場はとても広く、人が沢山いた。


桃色と黄色と水色の紙で出来た丸い照明魔道具――提灯が、出店と祭りの大通りを彩っている。とても美しい。


そんな中を、サラサ先輩とレンゲ様は兄妹のように手を繋いで歩いている。

レンゲ様がサラサ先輩の面倒を見ているのかと思いきや、興味がある方向にふらふらしてしまうレンゲ様を「はぐれるでない!」と手を引くサラサ先輩が面倒を見ると言う関係だった。




「ツミキちゃん、ほら。俺らもはぐれないよう、繋ぎましょうか。⋯⋯手」




モクレン様がいつもの微笑みを浮かべて、私へ手を差し出した。


その手を握り返すと、モクレン様の体温がいつもより高く感じた。しかも、手の平は少し汗ばんでいる。

もしや、お風邪を召されたのかと彼の顔を見たが、頬の血色も良く耳までとても赤い。


きっと気温のせいだろう。人も多く、提灯や屋台から発する熱があるので、この場は蒸し暑い。



私は、モクレン様が暑さで体調を崩さぬよう、彼の顔をじっと見続けた。




◇◇◇




「うわ〜! 外したけど惜しい! 結構イイ線行ってたよね〜」




私達は、聖ペルセフォネ王国から伝わった『射的』と言う屋台に挑戦していた。


レンゲ様とサラサ先輩も『射的』で使うコルク銃を手に、隣の屋台で『イカのすけくん』のぬいぐるみを狙っている。



出店の店主殿は


「ツミキ様とモクレン様!? 今日は鮭魔獣からこの町を救って頂きありがとうございます! 景品は全てお包みいたしますので、どうぞ平に⋯⋯」


と頭を下げる一方、モクレン様は


「いえいえ気にせんでくださいよ〜それが仕事なんで! ⋯⋯でも、あと三十回失敗したら景品一個貰っていいっすか」


と取引に出た。



そんな我々が狙うのは、鮭を咥えた小熊のぬいぐるみである。




「モクレン様。あの小熊は座っているため安定感があります。ですので、コルク銃の威力の低さと合わせて計算すると、頭を撃ち対象を台から落とすのでなく、対象の足元を狙い、徐々に台の下に押し出す戦法を推奨します」


「なるほろ〜。ありがとね。ほんとはヘッドショットの一撃で格好良くキメたいけど、まあ、地道にコツコツ行きますか」




モクレン様はそう言って、コルク銃を手に小熊の足元を狙って引き金を引いた。


弾は見事に的中し、小熊の位置が少しずれる。


それを何度か繰り返すうちに、小熊の片足が台からはみ出た。好機である!




「それにしてもコルク銃か〜。聖ペルセフォネ王国には不思議なモンが流行ってんだね」


「そうですね。⋯⋯聖ペルセフォネ王国とは、一体どのような国なのでしょうか」


「少なくとも、レンゲくんが造る魔道具は全部、聖ペルセフォネ王国から出た粗大ゴミを使ってるわけだから⋯⋯。きっと、異世界みたいな国なんだろうねぇ」




そう笑ったモクレン様は、小熊の足元に弾を放つ。すると、小熊は後退し、ついに台の下へ滑り落ちた!



景品の小熊を受け取ったモクレン様は、自身の顔の前に小熊を持ち上げ、



「ツミキちゃん! 今日は鮭魔獣を駆除してくれてありがとう!!」



と裏声で話しながら、小熊の手を上下させた。




「⋯⋯? どういたし、まして?」


「あ、これは腹話術的なボケですので、お気になさらず⋯⋯⋯⋯と言うわけで!」




『???』となる私へ、モクレン様は微笑みながら私へ小熊のぬいぐるみを差し出した。




「このぬいぐるみはツミキちゃんにプレゼントしま〜す!」


「!!! ありがとう⋯⋯ございます⋯⋯」




小熊のぬいぐるみを、羆の幼体を持ち上げるのと同じように首根っこを掴んで受け取った。


すると、モクレン様は



「ワイルドな持ち方するね〜」



と困ったように笑っている。



『困ったように』と言うことはこの持ち方は適さないのだろう。




「恐れ入ります。ぬいぐるみを頂いたのは初めてで、本物と同じ持ち方をしてしまいました」


「そっか⋯⋯。そんなら、抱っこしてあげて。もふもふで気持ち良いよ、きっと」




モクレン様に言われた通り、ぬいぐるみを抱っこする。


すると、もふもふでふわふわな肌触りに背筋が蕩けそうになった。

鳥状態のサラサ先輩とどちらがもふもふか、もふ比べてみたい所存である。




◇◇◇




「はい、ツミキちゃん。あ〜んして♡ ぬいぐるみ抱いてて両手塞がってるツミキちゃんに食事の介助で〜す! ついでに、君に熱い視線を送る野郎共の脳を破壊しま〜す!」




隣りに座るモクレン様が、串に刺さった『たこ焼き』なる丸い揚げ物を私に差し出した。


屋台を後にした我々は、軽食の屋台を巡り色々と購入したあと、休憩所にて夜食を取っていたのだ。


テーブルには、焼きそばやたこ焼きや焼き鳥などの食品がずらりと並んでおり、とても豪勢である。



私はモクレン様から差し出されたたこ焼きを口にし、プリップリしたタコの食感で味覚の新世界を味わった。


その一方、右向かいに座るサラサ先輩はやきそばを食べながら



「ツミキに一切の恥じらいが無いと、あーんする溺愛シチュと言うより餌付けみたいじゃの」



と笑う。



そんな時、レンゲ様が樽ジョッキを四つ持って



「酒買ってきたよー。領収書は貰ってるから出張経費にしとくね」



と抜け目ない事を口にしたのだった。








◇◇◇


良い感じにお付き合いありがとうございます!


ちょっとでも

「面白い!」

「先が気になる!」

「ツミキのぬいぐるみの持ち方がワイルド過ぎる」

「次回はついに酔っ払いシチュか!?」と


思って頂けましたら、下記の星☆☆☆☆☆から★★★★★5評価を入れてくださると嬉しいです!(私のモチベーションが上がります!)

ブクマとべた褒めレビューとご感想もお待ちしておりますぞ!



それでは、何卒宜しくお願い致します~!!!

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