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【完結】虐げられた死神令嬢ですが、陽気な騎士団長に溺愛されて幸せになりました。〜一方、私を捨てた元婚約者は知らない間に破滅してました〜  作者: ぷきゅのすけ
第二部 死神令嬢、毎日が楽しい

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41・戦準備です!(後半ロスベール視点)

「まあ、『マジかよ』って思うのも無理はないよ。でも、ツミキちゃんは、なんやかんやで俺の妻って言う立場だから。⋯⋯何がどう転んでも、プロメ嬢と会話しなきゃならないわけよ」


「確かに。⋯⋯色々あって失念しておりましたが、確か最初の頃はそんな感じでしたね」




食堂での作戦会議があまりにも和やかで楽しい時間だったすっかり忘れていたが、私はモクレン様の妻としてこのマグノリア地方に来たのだ。


私とモクレン様は夫婦というよりマグノリア地方のために働く協力者という具合であったが、外交のような正式な場では、何をどう言おうと私はモクレン様の妻である。



ならば、やることは一つだ。




「モクレン様。私はプロメ様と円滑な会話をするため、ホオノキ様の元で修行して参ります。⋯⋯モクレン様の妻として、貴方の名に泥を塗ることだけは致しません」


「ありがとうツミキちゃん。⋯⋯まあ、そう固く考えず、新しい友達が出来たら嬉しいな〜くらいの感覚で行ってごらん。俺と雑談するみたいにさ」


「モクレン様との⋯⋯雑談」




モクレン様との雑談と考えたら、急に身体から力が抜けた。


雑談には、美しい言葉も気の利いた言葉も必要無い。

途中で話題が逸れても、上手く言葉が出なくても、それも雑談の範囲である。


雑談は、お互いが楽しい状態になればそれで良いのだから。




「⋯⋯かしこまりました。私は、プロメ様と雑談を通して、お互いが楽しい状態になれるよう努めます」


「! ⋯⋯お互いが、楽しい状態⋯⋯。そうだよね。うん。⋯⋯俺も、ツミキちゃんと同じく肩に力入り過ぎてたわ」




モクレン様はふうっと息を吐くと、



「ありがとうツミキちゃん。大事なこと思い出させてくれたね」



と、いつもの柔らかい笑顔を浮かべた。



モクレン様の笑顔を見ると、何故だか私も嬉しい状態になり『ありがとうございます』と言いたくなる。




「そもそも、プロメ嬢達はせっかく遠いとこから来てくれたんだから。外交とか交渉とか抜きに、まずはこの国を⋯⋯マグノリア地方を楽しんでもらわにゃ」




確かに、遠い海を超えて来て下さったプロメ様達には、この国に来て良かったと少しでも思って欲しい。


そう思っていると、右隣に座るレンゲ様が



「ツミキ氏のお蔭で魔獣もビビって近寄って来ないから、マグノリア地方の安全性も上がったもんね」



と流し目を私へ向けて微笑んだ。



一方、私の左隣に座るサラサ先輩は、いつもの『のじゃ!』な明るい雰囲気から一変し、冷静な顔を見せた。




「確かに、ツミキの働きでこのマグノリア地方に魔獣の気配は無い。⋯⋯じゃが、魔獣は日に日に進化しておる。努々《ゆめゆめ》、油断するでないぞ」


「! ⋯⋯はい。ご忠告、ありがとうございます」




サラサ先輩の言う通りだ。

私が最後に駆除した魔獣は、上半身が鷲で下半身が獅子と言う、生き物の範疇を超えた姿をしていたのだ。

後に、あれはグリフォンと言う名が付けられたそうだが、あれ以上の魔獣が来る可能性もある。



気を引き締め直すと、サラサ先輩はいつもの『のじゃ!』に戻って



「案ずるな! ツミキにはわらわが付いておる! 魔獣など、いざとなりゃ爆音波で破裂させてやるのじゃ!」



と物騒ながらも頼もしいことを言ってくれた。



そんなサラサ先輩に続くように、指をパチンっと鳴らしたモクレン様は



「それじゃ! マグノリア地方の領主として! そして、大学時代は宴会王と呼ばれた俺が!!!! プロメ嬢とシドウ殿と護衛の皆様をめちゃくちゃ楽しませるぞ〜〜っ!!!」



と明るく宣言し、手を前に出した。



そんなモクレン様に続いてレンゲ様が



「マグノリア地方も、今までの貧乏な田舎とは一味違うもんね。⋯⋯ツミキ氏が死毒の森から取り返した大地があれば、宴会でも何でも出来ると思われ」



と、私を見て優しく笑って、長い袖を捲り手を出した。


レンゲ様の手は、四角い爪に艷やかな黒い塗料が塗られており、骨の太い筋張った指には銀色の大きな指輪がたくさんまっている。

そんなアヴァンギャルドな手を、彼はモクレン様が突き出した手の上に重ねた。


そして。




「のーじゃハッハッハッ!!! お主らにはハイエルフのわらわがついておる!! 歌でも宴会でも自然の加護でもなんでも力を貸してやるぞ!!」




サラサ先輩はそう言って高笑いをしたあと、


「これだから、人の子らは面白い。⋯⋯人の子を愛した古の同胞の気持ちが、よく分かるのじゃ」


と目を細めてポツリと呟いたあと、小さな手をレンゲ様の手の上に重ねた。




「ほれ、ツミキも何か良い感じのことを言うて、手を乗せよ」




サラサ先輩にそう言われて、良い感じのことを言おうと考えた。


だが、残念ながら何も浮かばないので、取り敢えず



「恐れ入ります」



と言って、サラサ先輩の手に自分の手を重ねた。



四人の手が重なった瞬間、モクレン様が



「それじゃ!! プルトハデス国の未来をかけたこの宴会⋯⋯じゃねえや外交を!!! 絶対成功させっぞ〜〜〜〜!!!」



と音頭を取った。



すると、レンゲ様とサラサ先輩はそれぞれ


「おー」


「のじゃー」


と答えたので、私も遅れて「おー」と続いた。



そして、決意表明もそこそこに終えたあと、私は話し合いが終わるまで我慢していた梅きゅうりへと手を伸ばす。



梅ダレを付けたきゅうりに細いフォークを刺し、それを口に運ぶと。




「モクレン様!!! 梅きゅうりとはなんと爽やかな食べ物なのですか!? 瑞々しいきゅうりのほんのりした青さと梅ダレの甘酸っぱさが噛み合うと、まるで澄んだ清流の如き味わいが致します!!」


「ツミキちゃん、今日も食レポキレッキレじゃ〜ん! ⋯⋯話し合い終わるまで待っててくれたんだね、ありがとう〜」




モクレン様が私の感想を聞いて喜んでくれるなら、もっとこの食レポなるものの技能も高めよう。


ホオノキ様には、ツッコミの他に食レポも教えて頂きたい所存だ。




◇◇◇




「ロスベール様っ! あたし達の外交、きっと上手く行きましたよねっ! だって、プロメさん達の目的はあたし達みたいな由緒正しい貴族と交流して地位に箔を付けることなんですから!」


「ああ。当然だ。⋯⋯それに、あのシドウとか言う平民には、上流の勝ち組の男に相応しい振る舞いと教養を教えてやったのだ。今頃感謝されているだろう」


「それにしても、フォティオン国ってレベル低いですよねえ。だって、あたし特性のアップルパイを出したとき、『プロメさんより護衛の男性が先に食べた』くらいですし」


「そうだな。あのような礼儀知らずの護衛を連れている時点で、連中の程度は知れている」




私――ロスベールはそう言って最高級のワインを一口飲んだあと、美しいと評判の夜景を眺めた。


王都の中でも最高峰のホテルにあるレストランを貸し切った室内にて、最高級な鶏肉の上に二種類のキャビアを乗せ、シャンパンクリームソースを乗せた最上級の食事を頂くと、やはり私は運命に選ばれし勝ち組なのだと再認識した。


そして、向かいには勝ち組の男に相応しい、国一番の美女と称される女がいるのだ。


カルミアは


「ゃ〜〜んっ!! キャビア料理すっごく美味しいですぅ〜〜っ!!! ほんと勝ち組の食事って感じぃ〜♡」


と甘えた子猫のような鳴き声を発していた。




「ロスベール様ぁ! あたし、ロスベール様が大好きですぅっ! 詐欺師のモクリエールアレンなんかと比べ物になりませんっ!」


「当たり前だ。あの愚弟は今頃、貧乏人の負け組らしくそこら辺の草でも食っているだろうな」


「そこら辺の草? きゅうりとか?」




草と言ってきゅうりと発想するカルミアの女らしい知能に満足しつつ、私は外交相手であるプロメ嬢のことを考えた。



プロメ嬢は『ロスベール殿下の人智を超越した頭脳に相応しいのは、由緒正しい歴史あるかんむりでありましょう』と私へ媚びへつらったのだ。その意味は、『貴方様こそ世界の支配者に相応しい』と言う意味であろう。



さすがは成り上がりの下賤な女だ。

夫のある身で私に擦り寄り尻尾を振るとは。


だが、女神の末裔である高貴な私に成金の女など相応しくはない。



傍に置く女は最高級品に限る。そして、それは多い方が良い。

勝ち組の美女を数多く所有することこそ、男の価値に直結するのだから。


犬でも猿でもどんな動物でも、強い雄はより多くの雌を獲得出来るのと同じだ。


やはり、父上の教えは正しい。


父上は『美しい女を数多く手に入れるのは、勝ち組の男にしか出来ない。人を率いるためには勝ち組の男にならなくては駄目だ』とこの世の真理を授けてくれたのだ。



それを隣で聞いている母上も『⋯⋯正しさに感動して涙が出てしまいました』と涙を流すくらいだった。




「私は勝ち組の男だ。私は正しい。⋯⋯正しいからこそ、父上の優秀な子種をドブに捨てるかのような詐欺師の愚弟を、間違った存在だと証明せねばならない。⋯⋯私の存在をかけて、あの男を否定してやる」




確か、愚弟もプロメ嬢と外交を行う予定だと聞いている。

口先だけの中身の無いあの詐欺師が、外交と言う人の真価が試される戦いに勝てるはずが無いだろう。


そもそも、プロメ嬢は外交終了時に


『大変光栄な時間を過ごさせて頂きました。今後、交流が必要となる場合はこちらからご挨拶を申し上げますゆえ、ロスベール殿の貴重なお時間を頂戴することはございません』


と言ったのだ。


私とプロメ嬢の間には、完全な上下関係が出来ている。

まさに、飼い主と飼い犬だろう。



プロメ嬢は既に私の犬である。

そんな状況の中、あの愚弟に何ができようか。




「実に哀れだな、モクリエールアレン。淫売の息子のお前など、生まれてこなければ良かったのだ」




そう言って、奴が生まれてきた日を思い出す。


母上はその日、泣いていた。


『お父上の優秀な子種を持つ素晴らしい存在がこの国に生まれ落ちて、感動しましたの。⋯⋯これは正しいことなのだから⋯⋯⋯⋯っ』


母上は確か、そんなことを言っていた。




◇◇◇




「つまらない」




プルトハデス国の最高級のホテルのバルコニーにて。


ツバの広く白い帽子に、外交に相応しいシンプルな白いワンピースを着た金髪の美少女――――プロメ・ナルテックスが、高級感に溢れる白い扇で鼻と口元を隠しながら、うんざりした顔で立っていた。


桃色の瞳を歪めてバルコニーから夜景を眺めているプロメ・ナルテックスは、期待外れだと言いたげにため息をつく。




「綺羅びやかな夜景では隠せない、酷い悪臭。この国が毒と魔獣に侵された絶望の国だというのは、本当だったようですね」




プロメ・ナルテックスはそう言ってため息を付いた。




「きっと、魔獣を駆除するのに手一杯なせいで、衛生にまで手が回っていないのでしょう。それに、あの『勝ち組男』が管理するこの王都ですから。⋯⋯恐らく、下水処理などに携わる方々を『負け組』と揶揄し軽んじた結果でしょうね。⋯⋯さすが、『人智を超えた頭脳の持ち主』です。その形の良い頭には、歴史ある冠がさぞ似合うでしょう」




プロメ・ナルテックスはそう言って鼻で笑った。

彼女の様子から、『人智を超えた頭脳の持ち主云々』と言うのは褒め言葉に見せかけた盛大な皮肉であることが伺える。


要するに、『お前の頭は冠置き場か』と言う超ド級の回りくどい嫌味であった。




「ああ、早く帰りたい。魔動結晶の情報も集まりませんし。⋯⋯でも」




扇をパチンと閉じたプロメ・ナルテックスは、北の空に輝く白金色の星を眺めた。




「マグノリアの白い悪魔。噂に聞くそのお手並みだけは、拝見したいところです。⋯⋯さてさて、どんなお土産話を持って帰れるか。⋯⋯楽しみですねえ」









◇◇◇


良い感じにお付き合いありがとうございます!


ちょっとでも

「面白い!」

「先が気になる!」

「ツミキ達は梅きゅうりなのにロスベール達はキャビアなんかい!」

「プロメ・ナルテックス⋯⋯手強そうだな!」と


思って頂けましたら、下記の星☆☆☆☆☆から★★★★★5評価を入れてくださると嬉しいです!(私のモチベーションが上がります!)

ブクマとべた褒めレビューとご感想とリアクションをお待ちしておりますぞ!



それでは、何卒宜しくお願い致します~!!!

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