○○○年 十月 十三日
別のお話に登場する人物の名前が結構登場する展開……極力投稿したいとは思いつつ──どうなるかは不明ですね。ジンカーツのお話はギルドが新しい国に進出するという、地味なお話です(笑)大きな物語の影の部分にスポットを当てたお話かなぁ。華々しい勇者の活躍や英雄物語の裏側では……みたいな内容ですね。
受付の仕事を終えて昼食休憩に入るとなったとき、メネレアが声を掛けてきた。なんでも兄から受け取った報告書があるらしい。
「報告書……? なんの報告かしら」
「ほら、以前に言っていた『ウェシュナート・ザウ』という冒険者の過去についての調査報告書ですよ。──本当はギルド内の、高い権限を有する人しか見ることのできない物らしいですから、このことは内緒ですよ」
彼女はそう言って、数枚の紙を取り出して見せてくれた。
そこには驚くべきことが書かれていた。
彼らが組んでいた冒険者のパーティだけでなく、数十組のパーティが「魔導宮殿迷宮」で起こった「異界化」現象に巻き込まれて──その多くのパーティや冒険者が命を落としたとある。
その異界化を発生させた元凶である魔神を討伐し、異界に捕われた多くの冒険者を救った者の名が報告書に記載されていた。
『グランティール・アディシュナ。ウェシュナート・ザウ。ディハート・トートワン。ウィゼリア・エストラ。(以上が第一のパーティ存命者)
グリアモル・ザウ。ナーフ・ティアディス。アルレシア・ギアンテ。(以上が第二のパーティ存命者)
ジンカーツ・クレビオ。(第三のパーティ唯一の生存者)』
その名前の列の後に、彼らに徽章が与えられたことが記されていた。
それらの後に、迷宮の異界化で生き残った(前列の魔神との戦いには加わらずに、迷宮内で魔神の配下などと戦っていた)者たちの名が十名ほど書かれていた。その中に、私が聞いたことのある名前が記されていた。
『ツァーク・テュマイアー』
ただ、それが誰なのか思い出せない……頭の中で、その名前の持ち主を思い出そうとするが──冒険者や、戦士ギルドに関係する記憶の中からは、その名前の人物は一向に出てこなかった。
「どうかしましたか?」
メネレアが不思議そうに尋ねてくる。
「いえ、なんでも……ないの」
一枚の紙に書かれた生き残りたちの記録。……異界化が恐ろしい現象だということは理解していたが、生存者の後に書かれた死亡者の数を見て慄然とする。
メネレアもその数字を見て──思うところがあったのだろう。彼女も黙ったまま、その紙を見つめていた……
ここから主人公レイセアの転機について語られます。このお話も終盤です。




