○○○年 十月 三日
ちょっとだけ再開。
なんとなく。
気になった私は帝国の事を調べていた。もちろん、ギルドでの仕事を終わらせてからよ。
帝国領土は今なお広いが、全盛期は現在のブラスゴート、イスケディア、アヴールなどの周辺にある国を治める規模の、大きな領土を持っていたようだ。
ちなみに私の居る国ガレンツァールは、過去にあったもう一つの帝国、ディオスカイア領土内にあるのよ。
まあ現在は、ディオスカイアなんて国は無いけれど、その帝国の皇族が、今でもザルカスに居るなんて話もあるらしい。魔神の力を使って大陸を支配しようとした危険な一族が、まだ生きているなんて──考えたくもないわ。
帝国には多くの皇帝の血族が居るから、さぞかし醜い権力闘争が渦巻いているのでしょうね……。そう思いながら調べてみると、あら不思議。
内乱などはほとんど無く、平和なものだそうよ。
ギルドの調査によると、帝国の上級貴族たちは、互いの権力関係を認め合うようにしているらしいわ。何のことか分からない部分もあるけれど、公正さを皇帝自身が示すことで、貴族たちにも自制を促しているんだとか。
皇帝は武力や魔法の扱いに長けるだけでなく、全体を視野に入れた考え方を出来る者が選ばれるらしい。
過去には皇帝の権力を奪う為に、暗殺を企てた皇帝の血族も居たそうだけど。一家郎党、皆殺しになったみたいね。恐ろしい話よ、暗殺を企てて実行に移した奴だけで無く、女子供も容赦なく死罪が科されたのだから。
皇帝の権力は強大だと思われがちだけれど、ファーレオン帝国では権力の一局集中にならないように、行政の分担が行われており、それらを監視するのが、帝国貴族の仕事ともされているらしい。
ああ、そんなことよりも、シセリオンという少女の居る貴族のことを知りたかったのに。
「十指貴族の頭首ならともかく、家族構成までは、よほどの理由が無いと調べられません」
という返事が返ってきた。
ギルドの情報収集はギルドのある周辺に限られるし、深く入り込んだ調査などは、相手の国との関係もあるので慎重に行われるのだ。
まあ、そりゃそうよね。
でも、シセリオンちゃんの居場所が分かれば、会いに行けるじゃない。旅行にかこつけてシセリオンちゃんとばったり会うのよ。──どこに住んでいるかも分からなければ、あの広い帝国の中で出会うなんて不可能よ。
そんな妄想をしつつ、私は今度の冒険の支度を始める。




