○○○年 九月 二十二日
領主の屋敷から、いつの間にか馬車が無くなっていた。あの少女も居なくなってしまったのかと思うと、寂しくて死んでしまう。──うん、大袈裟だって分かってる。
けれど、あの美少女にまた会いたいわ。
小さくて華奢で、正に高原に咲く小さな花の様に可憐な少女よ。あんな子が妹だったら、私は何でもしてあげるわ。家に帰ればあの少女が待っている、それだけで毎日ギルドに来ては、牛の尻を眺め続けるなんて苦行も、どうということも無い。
「はふぅ……シセリオンちゃん」
などとうっかり口に出してしまったようだ。
近くで作業していたメネレアに「シセリオンて誰ですか?」と聞かれてしまった。
違うのよ! あの子は可愛かったけれど、妹にしたいのはメネレア、あなたが一番よ!
心の中で叫ぶ私。
「はふぅ……」
私はシセリオンと呼ばれていた少女のことを話すと、また溜め息を吐いてしまった。メネレアは半ば呆れ気味に私を見る──いやだわ、そんな冷たい目で、私を見ないでちょうだい──
すると彼女は、こっそりとこんなことを言った。その美少女のお兄さんと思われる人物の方が、ギルド内で噂になっているらしい。
その青年は少女と同じ髪の色をし、一目見るだけで目が醒める様な、美しい顔立ちをした美青年だったという。
背も高く、身形や、腰から下げた細身の剣にさえ──気品が感じられる風貌で、彼を街で見かけた若い娘は皆、虜になってしまったのだとメネレアは言う。
「私は見てないんですけどね」
彼女のお兄さんも相当の美形の持ち主だったが、それと比べてどうなのかを聞きたかったが──仕方がない。
それにしても帝国貴族恐るべし。
たった一度目にしただけで民衆(彼らの民では無いけれど)を虜にするだなんて、権力者として、これほど強力な武器は無いわ。
私も一度、その美青年を目にしたいものだ。──でもその妹(たぶんそう)のシセリオンちゃんに、もう一度会いたいの……
「はふぅ……」
シセリオンの兄は紳士で美形(女性的)で権力者という無敵設定ですが、(別に書いてある物語では)シセリオンは出ても、その兄は出なかったりする……理由は──()




