○○○年 九月 十九日
ルゲールトの街に馬車の一団が入って来たことで騒ぎになったわ。二台の見慣れぬ意匠を施した馬車の周りを、十数人の騎士が囲んでいる様から──並々ならぬ権力者が乗っていると思われたその馬車は、領主の住む屋敷へ向かって行った。
ええ、私は自分の家の二階からそれを見ていたわ。二台の馬車から降りたのは一人の青年と少女? の様に見えた、もう一方の馬車からは法服を纏った、身分の高い神官らしい姿も見えた──けど、遠くからだったし、彼らはすぐに領主のお屋敷に入ってしまったの。
残念だわ、もしかしたら彼らこそが噂の、帝国からの来訪者かもしれないのに……あら、やだわ。まるで噂好きのおばさんじゃないの、これでは──
違うのよ、私は美しい若者を一目見たいだけなの、目の保養よ。むさ苦しい冒険者ばかり見ている毎日に、違ったものを取り入れたいの。むさい冒険者なんて、牛の尻を眺めている様なもの、これでは心が乾いてしまうわ(ああ牛さんごめんなさい)。
そんな日の午後──夕刻前の事よ。
戦士ギルドに護衛を連れた美しい少女が入って来たの。護衛はとても凛々しいおじ様で、旅用の身形の良い服を身に着けていたけれど、貫禄や雰囲気が戦士特有の、鋭い気配を滲ませていたわ。
ギルドの外にも待機している護衛が居るらしく、冒険者たちが遠巻きにして彼らの様子を見つめている。
白いドレスに似た、華やかな衣服を身に着けた少女は──物珍しそうにギルド内を観察し、冒険者や掲示板、待合室などを見た後に受付にやって来た。
「こんにちは、お姉さん。ここはどの様な施設ですか?」
少女は帝国訛のある──詳しくは知らないけれど、語調が少し違うのだ──言葉で受付に立つ私に、そう尋ねた。
透き通りそうな白い肌に淡い色の長い金髪、輝く様な青い瞳──天使だわ、むさ苦しいギルドに天使が舞い降りたのよ。
「あの、お姉さん──?」
「あ、ごめんなさい。ここは戦士ギルド、冒険者たちに仕事を依頼する場所よ」
そう言うと少女は、ぽんと手を叩き「冒険者!」と嬉しそうに言う。少女はその後も私に、ギルドや冒険者についてあれこれと尋ねてきたのだけれど、何を話したのかは良く覚えていない。
可愛らしい少女の興味津々な様子を見て癒されていたから、仕方ないよねっ。
けどこれだけは覚えているわ。後ろで控えていた護衛のおじ様が少女に声をかけ、自分の方を向かない少女に声をかけること三度目に、「シセリオン様」と声をかけたのだ。
少女は不服そうに護衛を見たが──渋々と受付を離れ、ギルドの出口付近でこちらを振り返り、優しい笑顔を向けて手を振ってくれたのだ。──なんて愛らしい美少女なの……天使だわぁ……
シセリオンは少女時代は、それはそれは(活発ではあったが)可憐な少女でありました──ですがいつからか、この少女は見た目や立ち振る舞いが豹変していきます。
帝国でのお話では別人の様な姿での登場となるでしょう──なろうに書くかは分かりませんが。




