○○○年 七月 二十三日
今回でやっと主人公の名前が分かりましたね(笑)
この受付嬢、こんな奴だったのか……とか思いながら書いています(笑)
今日は少し遅れて戦士ギルドでの仕事を始める日。別にサボっているわけではありません。
ギルドの受付が着る白い制服に着替えてから事務作業に入ると、二人の若い受付──まだ半人前と見習いの娘──が何やら愉しそうに話しながら作業している。
ちょっと注意しつつ、何をそんなに浮かれているのかと問うと。
「受付に立っていたら、凄くカッコイイ冒険者が来たんです。きっと都会から来た人なんですよ」
などと言いながら嬉しそうに資料を纏めて行く。
まあ、気持ちは分からなくもない。私もそこそこの面食いだ。
だからといって面が良いという理由で、初めて遭った冒険者のことを、そんなにも喜ぶものだろうか、その辺りは今一つ共感できない。
ねえ、メネレア? と、そのことを話していると彼女はこう言った。
「あぁ……たぶんそれ、私の兄です」
な、なんですって……!
可愛いメネレアたんのイケメンの兄……! 私の中で何かが、ざわめくのをはっきりと感じた。
なにそれ、絶対会ってみたい。むしろ紹介して──
そう出かかった言葉を慌てて飲み込む。
待て待て、まだ慌てるような時期じゃない。
その内にまた、妹の顔を見にギルドに来るかもしれないじゃない。
「兄は戦士ギルドの監査官なんですよ、それで今ギルド長と面会している最中で……あ」
イケメンで監査官……だと? なにその理想的な男、これって現実なの?
私は何故か教会の前に立って、イケメンの横に並びながら、メネレアに祝福されている幻像を見た。
「兄さん。紹介しますね、私の頼れる同僚のレイセアさん、……レイセアさん?」
はっ、いけない。妄想に取り込まれていたわ。
気づくと目の前にイケメンが一人立っていた。肌は少し日に焼け、鍛えられた首筋から広い肩幅にかけて、ぴっしりと整った監査官の青い制服を纏っている若者は、確かにメネレアの親族であることを窺わせる面持ちをしていた。
「あ、あら。よろしくお願いします」
と頭を下げた瞬間に、私の妄想はどこかへ吹き飛んだ。
彼の左手の薬指には、金色に輝く指輪が嵌められていたのである……




