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ある受付嬢の非公開日誌  作者: 荒野ヒロ
七月から九月の終わりまで

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18/45

○○○年 七月 二十三日

今回でやっと主人公の名前が分かりましたね(笑)

この受付嬢、こんな奴だったのか……とか思いながら書いています(笑)

 今日は少し遅れて戦士ギルドでの仕事を始める日。別にサボっているわけではありません。


 ギルドの受付が着る白い制服に着替えてから事務作業に入ると、二人の若い受付──まだ半人前と見習いの娘──が何やら愉しそうに話しながら作業している。


 ちょっと注意しつつ、何をそんなに浮かれているのかと問うと。


「受付に立っていたら、凄くカッコイイ冒険者が来たんです。きっと都会から来た人なんですよ」


 などと言いながら嬉しそうに資料をまとめて行く。


 まあ、気持ちは分からなくもない。私もそこそこの面食いだ。

 だからといってツラが良いという理由で、初めてった冒険者のことを、そんなにも喜ぶものだろうか、その辺りは今一つ共感できない。


 ねえ、メネレア? と、そのことを話していると彼女はこう言った。


「あぁ……たぶんそれ、私の兄です」


 な、なんですって……!


 可愛いメネレア()()のイケメンの兄……! 私の中で何かが、ざわめくのをはっきりと感じた。


 なにそれ、絶対会ってみたい。むしろ紹介して──


 そう出かかった言葉を慌てて飲み込む。


 待て待て、まだ慌てるような時期じゃない。

 その内にまた、妹の顔を見にギルドに来るかもしれないじゃない。


「兄は戦士ギルドの監査官なんですよ、それで今ギルド長と面会している最中で……あ」


 イケメンで監査官……だと? なにその理想的な男、これって現実なの?


 私は何故か教会の前に立って、イケメンの横に並びながら、メネレアに祝福されている幻像を見た。


「兄さん。紹介しますね、私の頼れる同僚のレイセアさん、……レイセアさん?」


 はっ、いけない。妄想に取り込まれていたわ。

 気づくと目の前にイケメンが一人立っていた。肌は少し日に焼け、鍛えられた首筋から広い肩幅にかけて、ぴっしりと整った監査官の青い制服を纏っている若者は、確かにメネレアの親族であることを窺わせる面持ちをしていた。


「あ、あら。よろしくお願いします」


 と頭を下げた瞬間に、私の妄想はどこかへ吹き飛んだ。


 彼の左手の薬指には、金色に輝く指輪がめられていたのである……

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