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気力をなくした元バーテンダーが地獄あたりでバーをやるハメになりました  作者: 高山シオン


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ムリが通れば

 獄卒が数人、巨大な鏡を磨き上げている。これは浄玻璃の鏡といって、人間が生きている時に何をしたのかを映し出すためのものだった。ここは冥府(あの世)にある裁判所のひとつだ。

 巨大な鏡の横に置かれた、こちらも巨大なデスクに、閻魔大王は頬杖を突いていた。今日もよく働いた。


 そもそも閻魔大王は人間だった。最初に現れて、最初に死んだ人間だった。死んだときに天にいたる道を見つけ、死者の国を治めることになったのだ。


(どのタイミングでこんなことになったのか……)


 わしわしと頭をかきながら、閻魔大王は考えた。


(もはや誰も信じないだろうが、ここには楽園しかなかった。死んだ人間を裁く必要もなかったし)


 悪事を働く人間があまりにも増え、それを抑制しなくてはいけないってことになって地獄やら何やらができてしまった。

 地獄の存在はある程度の抑止力にはなったっぽい。それでもなお、悪事を働く輩は生まれ続けるのだ。


 ちなみに死後の世界には閻魔大王の他に数人の王がいて、定められた順番で死者を裁いている。いわゆる四十九日にあたる裁判で六道のどこに行くかが決められるのだ。

 六道とは、天道(天国)、人道(人間)、阿修羅道(常に戦ってなきゃいけない感。めっちゃ怖い)、畜生道(動物になる)、餓鬼道(人間の世界とリンクしてるけど人間には見えない。常に飢えに苦しんでる感)、地獄道のことだ。


 人間が悪事を働く限り、冥府(あの世)での裁判が必要であり続ける。


(いつ地蔵菩薩になれんのかな……)

 そんなことを閻魔大王がぼんやりと思ったとき、デスクに置かれたスマホっぽいものが鳴った。

 画面を見ると「お釈迦さま」からだった。


「はい、もしもし」

 閻魔大王が電話に出ると、


「ちょっと大変なことが起こっております」

と、ちっとも大変ではなさそうな麗しい声で、お釈迦様が仰った。

「何日か前に等活地獄に落ちた西馬という変わった男がいるでしょう?この男は生前に弱いものの命を助けた功績をもって天界に迎え入れようとしたのですが」


「は?」

 閻魔大王がすっとんきょうな大声をあげたので、獄卒たちがびっくりして飛び上がった。それはもう、ダチョウ倶楽部のネタみたいに。


「それを西馬という男は何を勘違いしたのか分かりませんが、自分はあのおどろおどろしい地獄に残り、自分以外の罪人たちを全て天界に送り込んできたのです。まったく不思議ですねぇ。何故、あのような場所に残りたいのか……」


「は……はぁ」


「とにかく、西馬という男のせいで、天界は今、たいへんな騒ぎになっているのですよ。この状況を収拾するのはあなたの役目」


「え!?」


「そもそも、あなたのところの浄玻璃の鏡にきちんと真実を映し出さなかったのですから」


「いやその……え?」


「とにかく、そういう訳ですから」


「え……もしもーし!もしも……」


 通話は一方的に切られてしまった。


 閻魔大王は頭を抱えた。しかし、こうしてはいられない。地獄に落ちるような連中だから、きっと天界で平和ボケしている者たちから略奪の限りを尽くすだろう。そんなことでは天国とはいえない。


 考えている暇はない。


 閻魔大王はすぐに、罪人がいなくなった等活地獄で油を売っている獄卒たちを呼び集めると、彼らをまとめて天界へ送り込んだ。それで天界でやりたい放題やっている罪人たちを片っ端から捕まえさせ、また元の地獄に連れ戻させた。これにはすごく手こずった。

 中には天界の善なる人を騙して、かくまわせようとするような小ズルい輩もいたりした。ほんと、どうしようもない。クズはどこ行ったって結局クズなのだった。


 そんなこんなで、天界はもとの麗しい天界に戻った。等活地獄も、罪人の悲鳴がこだまする本来の状態に戻った。しかし、西馬については、ある意味で危険人物であるというレッテルが貼られた。


 閻魔大王は考えた。


(このまま等活地獄にいさせても、いつまた何かやらかすかしれん)


 西馬の生前の様子をなんとなく調べてみる。閻魔大王の目にとまったのは、西馬がかつてバーテンダーとして働いていた経歴だった。


 冥府にも酒がないわけではない。しかし、いつも同じものばかりで飽きが来ていた。バーテンダーとはいろいろな趣向を凝らしてうまい酒を出すのが仕事らしい。それを知った閻魔大王はにやりと笑った。


 西馬をこのまま地獄に置いておくのは危険が伴う……という口実の元に、自分の元でうまい酒を造る役割を押し付けてしまえ!と思ったのだ。


 なんという素晴らしいアイデアだろう。

 

西馬をこのまま地獄に置いておけないと考えた閻魔大王。地獄あたりでバーをやらすことに。


参考資料

「三大宗教 天国・地獄QUEST」藤原聖子 大正大学出版社 2008年10月10日

「図解 天国と地獄」草野巧 新紀元社 2007年5月7日

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