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本日もよろしくお願いいたします
あれからまた時は流れ、戦闘能力だけでなく礼儀作法も洗練されてきた俺・・・いや私は近衛騎士団へ内定間近だと噂され、自分でも満更でもなく思っていた。
そんなある日、“寝耳に水”とはこの事かと言う事が起こった。
訓練中の私の所に皇城から呼び出しの伝令が来たのだ。「え!?一歩早くに近衛騎士に叙任されるのかな?まいったね、これは!」とか思いながら、皆に囃し立てられながら、ニマニマ顔を何とか収めて、伝令に付いて行った。
案内された部屋には宰相と数人の文官、そして父上とカラ兄上が待っていた。
「騎士見習いチェチェアーリ・レフルミド、お呼びとの事で参上致しました!」
「うむ。訓練中の呼び出しで済まないな。本日はパミドロル帝国の外交に関わる事案の為に来てもらった。レフルミド家にも関わる事態故、侯爵とカラ騎士にも集まって貰った」
父上とカラ兄上の表情を見ると、緊張で顔が強張っている。
(なんだ?何か問題が起きているのか?)
「父上、兄上、お久しぶりでございます」
「ツェツェアーリ、久しいな」
「ツェツェ、元気そうだ」
内心はどうであれ、ふたりとも俺の挨拶に落ち着いた返答を返してきた。
「まぁ、座りたまえ。お茶を飲んで喉を潤してから本題に入ろう」
宰相の言葉に、応接椅子に座る面々。給仕がそれぞれの前にお茶を置き、静かに部屋を出て行った。
「さて、いま隣国のレチノール国との緊張が高まっている事は、皆知っているな?レチノール国からの国境侵犯を我が帝国は厳しい態度で対応してきた。それと並行して予てから我が帝国は外交による問題解決も図って来た。そこで進展があったのだ」
レチノール国は再三にわたり、傭兵を雇い賊に扮して帝国の町村を襲わせていた。あくまでも襲っているのは賊でレチノール国とは関係のない集団であるからして、帝国が賊を追ってレチノール国に侵入すれば、これは領土侵犯であり、レチノール国は反撃するぞ。と言う態度であった。
業を煮やした帝国が国境警備を行っている第五騎士団の中から人相の悪い人員を厳選した。彼らは賊に扮しレチノールの国境警備隊の駐屯地に襲い掛かかり、これを壊滅させた。さらにレチノールとの国境線近くに精鋭の大部隊を配置した。
慌てたレチノール国は和平条約を打診してきた。
宰相が語った進展とは、帝国とレチノール国との交流を広げると言う条約が成された事だった。事業の柱は大きくは三本で、貿易に関わる関税の引き下げ、文化交流、人的交流だ。
関税の引き下げでは、帝国がギリギリ損をしない程度に大幅譲歩し、その代わりにレチノール国側の関税も引き下げさせた。
文化交流は、お互いの技術を共有しようと言う物だが、帝国からレチノール国に渡す技術の方が多い。これも開示する情報を厳選した上で譲歩した。
そして、人的交流とは。
「双方の皇族・王族と侯爵以上の貴族同士で国を跨いでの婚姻だ。あちらからは王女と公爵家から姫が輿入れてくる。それぞれこちらの第二皇子と公爵家の嫡男が受け入れる予定だ。
そしてこちらからは侯爵家から姫を3名出すことになった。ツェツェアーリ殿にはその3名のうちの1人になって貰いたい」
「はぁ!? 」
「こら、ツェツェアーリ!宰相に向かって何て口のききかただ!慎め!」
「あ・・・ごほんっ、失礼いたしました」
「いや、良い。君は来月には近衛騎士に叙任される予定であった。君もそのつもりだったであろう?それが、この婚姻話だ。晴天の霹靂だろう」
「そのお話はお断りする事は・・・出来ないのですよね?」
「当たり前だ!ツェツェアーリ。国同士の話だぞ!」
「レフルミド侯爵、落ち着きなさい。婚姻は女性にとって人生に関わる大問題だ。しかも今回は国を跨いでの話。慎重になるのは当然である。疑問点などはこの場で解消しておきたい。
ツェツェアーリ殿、侯爵家の適齢期の女性で、かつ婚約者がいない者と言うのはそう多くは無いのだよ。それは分かるね?君は断ることを許されない状況だ。申し訳ないが諦めてくれ。
嫁いでもらう相手は全てレチノール国の公爵家や侯爵家である事は決まっているのだが、誰が君の相手になるのかはまだ決まっていない。こちらから行く花嫁の年齢などを相手側に通知した後、決まると思われる。他に何か聞きたい事はあるかね?」
「この交流が成功すれば、戦争は回避できるのですよね?」
「相手のある事なので確約はできないが、まあ、間違いなく和平は成立する。今回の交流事業はレチノール国にとって旨味が多いからな。あちらから反故にする事は恐らく無いだろう。帝国としては戦争に係る費用を思えば安い物だと考えて譲歩した。今回の交流事業の成功は、皇帝の下命である」
「畏まりました。このお話、謹んでお受けいたします。ツェツェアーリ、帝国の平和の為に一肌脱ぐ事に依存は御座いません!」
「うむ。よく言ってくれた。ツェツェアーリ殿頼む。他の2人の花嫁は君よりも年下であるから君が彼女たちを守ってやって欲しい」
「はっ!承りました!」
はぁ、俺ってつくづく騎士精神が叩き込まれてるなと思うぜ。皇帝からの下命とか言われたら、「畏まりました」「承りました」しか言えねぇぜ。
しかし・・・俺が結婚かぁ。あとちょっとで近衛騎士になって回避できる思ったんだけどなぁ。
そもそも結婚を回避するために、5歳からずっと頑張ってきて、騎士見習いになったんだけどなぁ。やっぱ、俺は時代の流れに抗えねぇ運命なのかね?それとも、冒険者になっていれば回避できただろうか?
いや、「たら」「れば」などと過去を振り返っても仕方がねぇ。後ろ向きな考えなんて俺らくねぇ。決まっちまったもんは仕方がねぇ。俺にできるのは、全力で挑む事だけだ。
輿入れまで半年の時間がある。レチノール国の貴族名鑑、礼儀作法、名産や政治状況・・・出発までにできるだけ学ばなければな。
▲▽▲▽▲▽
慌ただしく輿入れの準備をしている間に、飛ぶように時間が流れ、レチノール国へ旅立つ日が迫って来た。
レチノール国側からの花嫁の輿入れと結婚式は、先月に滞りなくかつ盛大に行われた。
今日は帝国からレチノールへと輿入れる姫たちの壮行の晩餐会だ。
皇城の晩餐室、皇帝の前に花嫁たちが並んでいる。
「皆、帝国の平安の為によく決意してくれた。帝国は皆の忠義を決して忘れる事はないだろう。レチノール国でも達者で暮らせよ。もし理不尽な目に遭った場合は知らせる様に。必ず帝国が助けると約束しよう」
壮行会にはレチノール国側の外交官も出席している。これは彼らへの牽制の言葉でもあるのだろう。
それぞれの花嫁の婚姻相手は、彼ら外交官から通達された。私の相手はアルスラン・ゲリエル侯爵家当主との事だ。24歳らしい。貴族の婚姻としては遅い。
8歳年上かぁ。初婚との事だが、この歳まで何で結婚してなかったのか。家か本人の性格に問題でもあるんだろうか?ま、いま考えても仕方がない。会えば、分かる事だ。
我々花嫁はまず、レチノール国の王宮に招かれ、結婚式までの期間を過ごす事になっている。王宮で歓迎の晩餐会が行われ、そこで婚姻相手との顔合わせが行われるとの事だ。
さて、どんな怪物と引き合わされるのか、楽しみじゃねぇか!
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