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灰かぶりの賢者  作者: 夏月涼
第三章 炎の記憶
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68 『決意』

「おおー、これはすごいですね!!」


 はしゃぐへロイーズの声が、浴場へ響いて空へ溶け込んでいく。


「でしょう!!」


 そんなへロイーズに誇らしげな表情を見せているのは、リリー。ガルアが作ったものが褒められて嬉しいのだろう。彼女らの後ろに続くのは、苦笑しているシェリルとロザリーだ。


 アルフたちと同じように、シェリルたちも温泉に入りに来たのだ。


 もちろん、男女は分けられているが。


「まさかこんなものまで作れるとは……!」


 感動に打ち震えているへロイーズは、リリーの手をガシッと掴み、


「あなたの彼氏さん、いい職人ですね!!」

「うんうん、そうでしょっ……って、べべべつに彼氏じゃないからぁ!!」


 真っ赤な顔をして叫ぶリリーを見て、へロイーズは意地悪く笑う。


「そんなに隠さなくてもいいのにー」

「ほんとに違うからぁ!」


 口論を交わす二人。もうしばらくは続きそうなその争いは、へロイーズの勝ちで終わることが目に見えていた。


「……ほっとこうか」

「そうですね……」


 飛び火が来たらたまったものじゃないと、シェリルとロザリーは先に身体を洗い始める。

 普段からへロイーズにいじられ倒され、その恐ろしさを痛感しているので、リリーを助けるという選択肢はない。


「うぅ……」

「さて、私たちも身体を洗いますか」


 数分後、涙目のリリーとやけに笑顔なへロイーズが現れ、シェリルとロザリーは心の中でリリーへと合掌した。


 すなわち、身代わりになってくれてありがとう、と。リリーからしたらたまったものではない。


 リリーを見て多少の罪悪感を覚えながらも、シェリルは彼女の隣へ移動した。少し、二人で話をしたかったのだ。


「そういえば、リリーは知ってたんだよね、ガルアさんが国王の息子だって」

「ん? うん、知ってたよ」


 ガルアとリリー、二人は幼馴染だ。互いに知っていることも多く、リリーはガルアの立場を知る数少ない人間の一人だ。


「……まあ、知ってるだけで、何があったのかは分からないんだけどね。ガルア君、何も話してくれないから」


 寂しそうに、ぽつりと呟く。憂いを帯びた彼女の瞳は、いつだってガルアに向けられていたのだろう。


 ――似ている。


 どことなくアルフとガルアが似ていると、シェリルはそう感じた。


 自分のことはあまり話さず、すべて内に抱え込む。

 他人に心配されることを嫌い、そのくせ他人の心配は欠かさないのだ。そんな、不安定な存在。


 だからこそ、リリーの気持ちも分かるような気がした。ふとしたとき、いなくなってしまわないか。無茶なことをしないだろうか。


 そんな不安が、どうしても消えないのだ。


 いくらアルフが強かろうとも、彼も人間。限界というものは存在するし、無茶を繰り返せば命も縮まる。


 そして、その無茶をするときというのは――きっと、シェリルたちを守るときだ。


 もちろん、シェリルとしては無茶なんてしてほしくない。自分の力不足が原因でアルフが傷つくのは、嫌なのだ。


 だから、もっと強くなりたい。


「あーー、もう! ガルア君もめんどくさいんだよ! 意地っ張りで、不器用で! もっと素直になればいいのに!」


 リリーもシェリルと同じようなことを考えていたのか、頬を膨らませて心の雄叫びを上げる。そして、そのまま乱雑にお湯の中へと侵入した。


 派手に飛沫が上がり、シェリルは苦笑。リリーの後に続き、しかし彼女とは違って静かに入浴した。


「いろいろ苦労してるんだね」

「まあ、知り合ったときから覚悟はしてたんだけどね……王族だし、英雄の子孫だし。でも、あなたも同じくらいか、それ以上苦労してそうだけど」


 アルフは英雄当人だ。抱えるものはたくさんあるし、何より目的が大きい。シェリルは今までのことを思い返し、苦い顔をする。


「苦労というか、迷惑ばっかりかけてるかな……」

「そっか」


 助けてもらったり、魔法を教えてもらったり。そもそも、この国に訪れたのもシェリルの命を救うためだ。


 思わずシェリルがため息をつきそうになったとき。


「その分、大切に思われてるってことだよ!」


 突然、会話に割って入ってきたへロイーズが、シェリルの胸を触る。


「ひゃっ……!」


 短い悲鳴を漏らしたシェリルは、視界の隅にロザリーの姿を捉えた。胸を押さえて、ぐったりとした様子で頬を赤くしている。


 シェリルとリリーが話している間に、へロイーズの餌食になったのだろう。


「おおぅ、これは立派なものをお持ちで……!」

「やめっ……!」


 シェリルは慌ててへロイーズの手を振り払い、荒く息を繰り返す。キッとへロイーズを睨むが、彼女はニコニコと微笑んでいるだけだ。


「ま、そんなにシェリルがいろいろ考える必要はないと思うよ。アルフさんだって隠したいことや、譲れないものはあるだろうし。それに――私たちがもっと強くなって、アルフさんを守ればいい」


 悪意のない笑顔でそう言われてしまえば、反論する気も湧かず。シェリルは今度こそため息をついて、穏やかに笑った。


「簡単に言うね」

「難しいよ、だから頑張らなきゃ」

「……うん、そうだね、頑張ろう」


 夜空の下、少女たちは決意した。

お久しぶりです。更新&新作投稿しました。


【タイトル】錬金術師です。自重はゴミ箱に捨ててきました。


https://ncode.syosetu.com/n1838em/


【あらすじ】S級冒険者である私は理由あってとある錬金術師と行動を共にしている。ところがこの錬金術師がおかしい。

最上級のポーションであるエリクサーを片手間に作ったり、聖剣を一晩で完成させたり。いい加減少しは自重というものを覚えてほしいものだ。

監視するこっちの身にもなってほしい……ってエリクサーを栄養ドリンク代わりにがぶ飲みするな!

これは自重を知らない錬金術師とそれに付き合わされる冒険者の物語である。

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