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すべてがYになる  作者: 雪平 真琴
劇中の殺人
10/12

劇中の悪意

 震える手で、原稿を下ろした。

 最後の部分。編集長が私を問い詰めるシーン。

 信じられなかった。なんで、どうして……平花月さん……


 目の前で毛見京平が死んでいる。触れても生き物特有の暖かさは無く、生命を全く感じられない。

 でもなんで、自殺なんて……

 それに、この原稿だと、まるで……私が……


「吉原さん……?」

「平……さん……」

「まさか、あなた」

「違う! 私じゃない! これは自殺よ」

「いくら兄が彼に殺されたからって、まさかそんな……」

「違う!」

「私たち、手は下さないって約束したじゃない」

「やってない!」

 平さんは何の感情も感じられない声で言う。その能面のように薄っぺらい声はむしろ私の不安感を煽った。

「でも誰がどう見ても、あなたが怪しいわよ。首つりさせて、殺すなんて」

「違う! わかってるでしょ……」

「うん。殺したんじゃないよね。でもさ。あんな電話してまで彼を小説が書けなくなるほど追い詰めて」

「違う!」


 私は叫んだ。





「私、()()()()()()()()()()()()()!」

 そう叫んだ時、ふっと天啓が下りて来た。

 この小説のからくりは解けた。

 これは……私を陥れるためだけに平さんが作った小説だ。

 この小説そのものが、彼女の悪意なんだ。


 平さんはただにっこりと微笑んでいる……

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