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95. 葉隠の里

 俺たちはグリーンウッドの森(転移魔法陣のあるダンジョンから出てすぐの森)からカートで湖の周り通り葉隠の里に到着した。


 「バドゥール王女御一行様ご到着です」


 ダーシュが大声で王女の到着を告げると、葉隠の里の全員が一斉に花びらを空へ投げて拍手する。空へ舞い上がった色とりどりの花びらが柔らかな風に舞って歓迎の意を伝える。俺はユニークスキル撮影者を起動して如月(35-150mm)に換装して構える。35mm F2.8に設定して全体を画角に納める様にする。もう一台のカメラはZに皐月(50mm F1.4)を装着してギアナに渡してある。ここからが、勝負だ。常に撮影者を起動し撮影していくことになっている。


 「バドゥール王女様、アラジン様、ご婚約おめでとうございます。村長のドルフと申します。この度は婚前旅行の場に選んで頂ありがとうございます」

 「ドルフ村長様、このような歓迎があるとは思ってもみませんでした。これから3日間よろしくお願いしますね」

 「葉隠の里を挙げておもてなしいたします」


 歓迎の挨拶が終わると、新しくできた温泉宿の各部屋へ案内する。バドゥール王女とアラジンの部屋はスィートルームで部屋に露天風呂も完備されている。ジャファール宰相が婚前に同じ部屋に泊まるなどけしからんと言っていたが、師匠と桔梗が説得してくれたのでことなきを得た。どのような説得だったのかはわからないが、きっと丁寧に説明したに違いない!


 スイートルームで何枚か撮影させてもらった。その後、多少の休憩の時間をとり、待ちに待った昼食の時間が来た。昼のメニューはチカトのチーズを贅沢に使ったマルゲリータピザと濃いミルクソースにビックボアの厚切りベーコンと卵黄輝くカルボナーラスパゲッティだ。


 席についたバドゥール王女とアラジンにフクさんが材料や産地について説明していく。今この瞬間はここでしか食べることのできない料理。俺の常識では、王族の食べる料理とはかけ離れているが、そんなのはこの世界では関係ない。さあ、チカトのチーズとミルクの虜になるが良い!


 「面白い料理ですね」

 「これは手で掴んで食べるのか?」

 

 バドゥール王女とアラジンとは別の部屋でガンザスと近衛騎士たちが食べている。


 「うまい!これうまいな」

 「え、こうやって巻いて食べるのか?おお、うま」


 微かに聞こえてくる声にアラジンの耳がピクとなる。


 「ここでは、豪快に食べるのがマナーですよ。ぜひ手で掴んで熱々を食べてみてください」


 俺が最後のひと推し。するとアラジンがピザに手を伸ばした。モッツアレラチーズにゴーダチーズを重ねた薄い生地のマルゲリータは一口食べると口の中でトマトとチーズが溶け合って幸せが襲ってくる。


 「これは、うまい」

 「本当に美味しいですわ」


 はい、幸福の瞬間を撮影させていただきました!

 次に、カルボナーラだ。こちらはミルクの優しい甘さに包まれ、ビッグボアの塩気の強いベーコンの肉汁が混ざる、そこに卵黄のコクが広がる。


 「こっちのカルボナーラという食べ物も美味しいぞ」

 「ええ、ミルクの優しい味をこのベーコンというお肉が引き立てていますね」

 「ああ、卵黄を混ぜるとまた味が変わってコクが加わるな」

 「ああ、このピザとカルボナーラを食べられただけで、ここに来たかいがありますわ」


 フクさんの鼻の穴が膨らんでいる。滅多にみられないドヤ顔を見ることができた。食後のデザートは、世界樹の宝石こと生ワルドゼリーだ。世界樹の雫も贅沢に使った一品で、体力・気力・魔力に様々な体の不調と病が癒やされる。


 「これが世界樹の宝石なのですね。美味しいですわ」

 「おお、古傷が治っていく」


 「これは葉隠の里でも滅多に食べることのできない貴重なデザートなんですよ」


 若い2人にはあまり効果がなかったが、隣の部屋にいるジャファール宰相の部屋から奇声が聞こえてきた。


 「ぬぉぉぉ。ずっと痛かった腰の痛みがない。肩、肩が熱い。なんじゃこりゃ。垢がボロボロと出てくる」

 

 ト○オのイタリアンレストランに行った億○のような状況になっている。フクさんはやはりスタ○ド使いだった様だ。実際、ご高齢のジャファール宰相には世界樹の宝石の効果は絶大だったようだ。



 食事の後、バドゥール王女は翌日の衣装の最終調整のためギアナと裁縫店へ移動していった。残った男性陣は温泉宿の大浴場へ移動する。もちろん各部屋に露天風呂がついているが、大浴場も堪能してもらう。いや、宣伝のために入ってもらわねばなぬ。


 一糸纏わぬ姿のアラジンとガンザスに近衛騎士の面々。湖を一望できる屋上露天風呂に並んでもらう。鍛え抜かれた筋肉粒々の7名の男性に湖を向いて並んでもらい、後ろから一枚写真を撮る。うん、これは絶対に需要がある写真だ。この一枚の写真が近衛騎士カレンダーという大ヒット商品を生み出すきっかけになるとは思いもしなかった。その後、アラジンとガンザスを主に各温泉に入っている写真を撮る。これらの写真が温泉のパンフレットになる予定だった。しかし、温泉での最大の功労者は、ジャファール宰相であった。世界樹の宝石の力で活性化した細胞が温泉に入ったことでさらに活性化。見た目が10歳以上若返っていた。なんなら数本黒い髪が生えてきていた。このBefore /Afterの写真で世の中の富裕層がこぞって葉隠の里を目指したのはまた別のお話。


 ちなみに、女風呂で王女にタオルを巻いてモデルになってもらった写真をギアナに撮ってもらったが、師匠と桔梗が暴走してちょっと表に出せない写真になってしまったらしい。なぜらしいというかというと、俺が見る前にメーティスさんの検閲に引っかかって削除されたからだ。無念。


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