88. 殺生石2
しまった、シ◯タの持っているあれが作れるのではないかと暴走しかけたが、本題は魔素を蓄積できる石が作れると言うことだ。これは研究する価値がある!
「ソラちゃん。これは大発見だよ。魔素吸収要素の結晶体が作れたらダーシュ達の開発が進みそうだ!」
「ソラ役に立った?嬉しいよぉ」
ソラちゃんがぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいる。ソラちゃん、激可愛いよぉ。俺の癒しだ。
『結晶体を確認できれば、解析可能かもしれません』
メーティスさんも乗り気のようだ。そうすると、次に探すのは殺生石だろうか?魔剣は見つかりそうにないし、殺生石は師匠の魔素を抑える役割であるならば、この近くにあってもおかしくはない。
「師匠、殺生石ってどこにあるか知ってる?」
「知らぬのじゃ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ですよね。そもそも師匠は世界樹の洞から出る事がなかったのだから知らないのは当たり前だ。
「アキラ君。うちのおじいちゃんなら何か知ってるかもしれないよ」
「確かに、ドルフ村長なら知ってるかもな」
集めた黒い石を全部ソラちゃんの神空間へ収納して、俺たちは早く葉隠の里に帰ることにした。
「じゃあ、早めに帰ろう」
「・・・そうじゃな」
「・・・そうするとしよう」
アイコンタクトでいそいそと自転車をたたむ師匠と桔梗。なんか嫌な予感しかしない。
「さあ、早く自転車をたたむのじゃ」
「ソラ、自転車の収納頼む」
「わかったよぉ」
パクパクっとソラちゃんが自転車を収納する。そして、師匠が俺を、桔梗がギアナを小脇に抱える。
「師匠、ちょ、ちょ待て」
「行くのじゃ。よーい」
「桔梗さん、私はゆっくり帰るので・・」
「口を開くと舌を噛むぞ。ドン」
ドンと言う音が響きものすごいGがかかる。弾丸のように飛び出した師匠と桔梗。水切りの石のように水面を弾いて前に進む。師匠と桔梗の足が水面を蹴るたびに、爆発的に水柱が上がる。水面を3歩で里に到着する。
「妾の方が先じゃったのじゃ」
「いや、我の方が僅かに早かった」
「妾じゃ」
「我だ」
「「ぐむむむ」」
師匠と桔梗がどちらが早かったかで喧嘩を始めようとしている。このまま行くと怪獣大決戦がはじまって世界が滅ぶ。
「やめーい」
コツン、コツンと2人の頭を叩く。
「アキラよ、別に本気じゃないのに、妾を殴るとは酷いのじゃ」
「そ、そうだぞ。我だって別にこのくらいの勝負でムキになるほど狭量ではないのだ」
「はいはい。いいから村長のところに行くよ」
ブーブー言っている2人を置いて腰砕中のギアナを抱えて村に向かう。
「ま、待つのじゃ」
「我を置いていくでない」
里に着いたものの、ドルフ村長は工事現場に出ているため、場所を探す必要がある。里の周りにいた作業者に声をかけて村長の居場所を聞くことにした。
「おーい。ドルフ村長知らない?」
「ああ、アキラさん。村長なら桟橋の建設に行ってますよ」
「ありがと」
俺たちは桟橋建設予定地に向かった。歩いて5分ほどで到着。目の前に広がる景色に驚いた。昨日言った桟橋がほぼ出来上がっていた。これが魔法の力か!
「おーい、ドルフ村長ぉ!」
「おや、アキラ様。こんな工事現場に何のようでしょう?」
「チカトの帰り道で、こんな黒い石を見つけてさ。かくかくしかじかで殺生石を探しているんだけど、村長だったら何か知ってるかと思って」
「魔素を吸収する要素を含む石があったとは・・・。確かに殺生石と性質が似ているように思います。そして肝心の殺生石ですが、トリプレットデザートへ行く道にある道しるべが昔そのような名前で呼ばれていたと思います」
なんと、俺とギアナはその場所の側を通りすぎていたようだ。道端に不釣り合いな大きな岩が確かにあった。
「ギアナ、あの大岩覚えてる?」
「ええ、覚えているわ。最初のキャンプした場所よね」
「何じゃ、そんな近くなのかの?すぐに行くのじゃ」
「師匠、ストーップ。流石に抱えていくのは無しでお願い」
「何!ダメなのか!?」
「桔梗さんや、なぜ意外そうな顔をするのかね」
「時間もあるし、ゆっくり歩いて行こうよ」
ギアナの提案で皆で歩いて行くことになった。流石に、ダンジョンを通るのは時間がかかりすぎるので、転移魔法陣を使うことにした。神の頂側の転移魔法陣を守っているのは、俺の最終試験の相手であるグレーグリズリーの獅子丸だ。
「獅子丸よ。元気じゃったか?」
「グォ!」
「おお、そうかそうか。それは良かったのじゃ」
「グォグォ」
「しかし、この後トリプレットデザートの人たちが来たとき、獅子丸が目の前にいたら驚くよな」
「グォォ」
獅子丸がしょんぼりしている。だが、グレーグリズリーが目の前に現れたら怖いのは事実。どうしようかなと考えていると。
「あの、エプロンつけるのはどうでしょう。ちょっとは怖く無くなるのかなって」
「グォ、グオグォ」
獅子丸が首を左右にブンブンと振っている。
「獅子丸、妾のエプロンが着れぬと言うのかの?」
「グ、グォ」
師匠がどこからともなく大きなエプロンを取り出してさっさと獅子丸に着せる。
「フリルモリモリ、お腹の前には大きなポケットがあるな。獅子丸、御愁傷様」
「グォぉ」
「おお、可愛くなったのじゃ」
「くくく、これは怖がる前に癒されそうだな。だが流石に可哀想だ。我が何とかしてやろう」
そういった桔梗が獅子丸をポンポンと優しく叩く。ボォーーンと煙が巻き起こり、目の前にクマ耳もふもふ尻尾の武士の格好をした美女が現れた。
「えぇ、獅子丸ってメスだったの!?」
「拙者がエプロンなど・・・くっ、殺せ」
「また、獅子丸の口癖が出ておるのじゃ」
(あの、グォってのくっコロだったのかよ)
「これなら怖がられることはないだろう」
「それでは、獅子丸よ。その姿でここを守護するのじゃ」
「御意」
俺たちは獅子丸に別れを告げて、転移魔法陣へと入って行った。




