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81. 葉隠の里 1

 俺たちは、気づいたらソラ:分体(楓)の場所、すなわち、九尾稲荷大社の楓の寝所に着いていた。


 「待っておったのじゃ、アキラよ。さぁ、妾と共に寝所へ」

 「師匠・・・さっきからおとなしいというか姿が見えないと思ったら、このイタズラのために先に帰っていたんですね」

 「ぐぬぬ、せっかく久々に本体で会ったんじゃからのってくれてもいいのに・・・なのじゃ」


 分体で会うのと本体で会うのの違いがあるのだろうか・・・?と思っていたら、映像で見聞きするのと生で会うのは全然違うのじゃと怒られた。そして、ソラちゃん転移ができるのだから、ちょくちょく帰ってくるのじゃと実家のおかんのようなことを言われた。

 転移前にフクさんにはソラ:分体フクを通して連絡しておいた。だからそのまま葉隠の里へ降りていくことにした。ああ、この赤い鳥居の連なる階段が懐かしい。師匠と桔梗は普通に着いてくるが、 ギアナが混乱していた。


 「え?ここ九尾稲荷大社?確かアキラくんの部屋にいたはずなのに、でも確かにこの鳥居は葉隠の里・・・・あーどうなってるのぉ」

 「それは、かくかくしかじか。ということさ」

 「ということは、何人でもここに連れて来れるということね」

 「そうだね」

 「これはすごいわ。このスキル運搬でも人の輸送でもなんでもお金が稼ぎ放題じゃない!」

 

 「・・・・・」

 

 ギアナはやはりギアナだった。お金を稼ぐことに余念がない。確かに、そういう使い方もありかもしれないな。という会話をしているうちに葉隠の里に着いた。


 「・・・・、なんじゃこりゃ!」


 まだ里を出て1ヶ月経っていないというのに、葉隠の里は大きく変わっていた。里のメインストリートは石畳になっており、フクさんの料理店、ダリアのパン屋、ライゾーのコーヒー専門店、ダーシュのガラス工芸品、自転車、キャンプ用品を売る店、そして、宿屋ができていた。その先には大きな武家屋敷にしか見えない建物が建築中だ。全ての建物は漆喰の壁と瓦屋根で統一されており、城下町の様相を呈していた。


 村長ドルフさんの家は改装されて、冒険者ギルドと商業ギルドの受付が作られていた。しかし、まだ本格的な職員はいないようだ。それから、Aランク冒険者パーティーブラック黒狼や兵士たちの住む長屋もできていた。さらに街の奥にもいろんな施設が建築予定となっているようで区画だけ空いていた。

 

 葉隠の里の変わりように驚いたが、とりあえず村長ドルフさんの元に急いだ。


 「ただいまぁ。おじいちゃん。村の様子がものすごく変わってるので驚いたよ」

 「やあ、おかえりギアナ。楓様にアキラくんも良く帰ってきたね。」

 「この短期間でここまで里ができるなんて驚きです。」

 「君の構想通りにできているかな?ブラック黒狼のロシナンテ君たちもしっかり働いてくれているよ」


 村長ドルフさんが楽しそうに笑っている。ドルフさんは真っ黒に日焼けしており、筋肉質になっていた。現在、土木作業の現場監督をしているらしい。


 「あんたたち。良く帰ったね。楓様も里へきていただきありがとうございます」


 フクさんが顔を出してくれた。昼ごはんの仕込みに入る前に寄ったみたいだ。俺がトリプレットデザートで手に入れたスパイスは魔法で環境を調整したビニールハウスのような建物での栽培に成功したとのこと。スパイスは肉料理に使っているとのこと。もちろん、フクさんの料理なので、間違いなくうまい。

 

 しかし、俺には作りたい料理があるのだ!その名も“カレーライス“。もちろん、俺はスパイスから作ったことはない。なので試行錯誤が必要だがウコンとクミンとコリアンダーをベースにいくつか混ぜてみよう。という話をフクさんにしたところ、首根っこを掴まれて調理場に連れて行かれた。


 「それで、そのカレーっていうのはどうやって作るんだい?」

 「ざっくり言うと、肉と野菜を炒めてスパイスを合わせて煮込んだものなんだけど、材料やスパイスの選び方で無限の種類ができる料理だよ。サラサラからドロドロまで好みが分かれるので、今からルーだけ5種類作ってみるよ。小麦粉の溶かす量で粘度を変えることができるから、今回は俺のスタンダードなものを作ってみる」


 そう言って、スパイスを粉にして、分量を変えて混ぜていく。この匂いだけですでにお腹がなりそうだ。それぞれを味見したところ、なんとか及第点ってところだった。及第点のカレーの元を使って、ビッグボアのバラ肉とにんじん、玉ねぎ、じゃがいものカレーを作った。もちろん玉ねぎは飴色になるまで炒めた。できたカレールーをご飯にかけてできあがりだ。


 「あ、アキラ。なんだいこの料理は・・・ものすごく奥が深くそして食欲をそそる香りとそれに違わぬ美味しさ。また一つ里の名物ができたよ。」


 試しにと言うことで、本日の昼食は、カレーに決まった。辛さを調節できるように、チリパウダーも用意した。


 昼になったら、里の外を含めて土木工事をしていたブラック黒狼のロシナンテと兵たちが帰ってきた。


 「フク母ちゃん。ただいま」

 「フク母ちゃん。腹へったよ」

 「フク母ちゃん。早く昼飯〜」


 なんだなんだ?フク母ちゃん?


 「ほらほら、あんたたち、ちゃんと手を洗ってきな。食べさせないよ」

 

 ぞろぞろと笑いながら手を洗いはしめる兵士たち。なんだろう、めちゃくちゃ幸せそうだ。


 「クンクン。なんかすごくいい匂いしてるからもう我慢できないぜ」

 「今日は、アキラが新しい料理を教えてくれたよ。カレーっていうんだ」

 「アキラの作った唐揚げもピザもめちゃくちゃ美味かったからな。カレーも絶対うまいぜ」

 「ほら、あんたたち、お皿にご飯を好きなだけついで持ってきな。」


 「「「おう」」」

 

 完全に母ちゃんと息子たちだ。フクさんがガッツリと胃袋を掴んでいるのだろう。


 「これ、うめぇぇ」

 「カレー美味しすぎる」

 「フク母ちゃん。おかわり」

 「俺も!」

 「俺も!」


 水をごくごく飲み干して皆満足したみたいだ。


 「ほらほら、午後もしっかりと働くんだよ!晩御飯は唐揚げだからね」


 「「「うぉぉぉおおおおお」」」


 こいつら、単純だけど嫌いじゃないぜ。大盛り上がりの皆を横目に、俺は元ブラック黒狼のリーダーロシナンテに声をかけた。


 「ロシナンテ、今里の外の整備をしているんだろ?」

 「ああ、そうだ、天の湖の周りにサイクリングロードを作っている」

 「じゃあさ、里からでた目の前の湖に西に向かってこういうものを作って欲しいんだ」

 「なるほど、それならドルフ親方に伝えておくぜ。多分OKだろう」

 「でその先にこういう形のゲートを作って、それからこういう感じに仕上げて欲しいんだ」

 「それはどういう目的なんだ」

 「映えスポットってやつだ」

 「なんだかわかんねーが、お前がそういうんならそうなんだろうな。わかったぜ」


 ドルフ親方ってのが気になるが、次はダーシュに会いに行かなきゃ行けない。

 

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