82. 葉隠の里 2
ロシナンテに伝えた内容をドルフ村長に話したところ、ダーシュとフクさんを集めて緊急会議が行われることになった。
「それで、アキラ君。桟橋の話を詳しく教えてくれないか?」
俺は、トリプレットデザートで起こった事件からバドゥール王女とアラジンの結婚までの話をした。そして、結婚式の前に、葉隠の里で2人の写真を撮る約束をしたことを伝えた。そして、その写真を販売する許可を得たことも話した。
ドルフ村長もフクさんもダーシュもまだピンと来ていないようだったが、その後の説明はギアナが引き継いでくれた。
「つまり、王女の結婚は王都あげての一大イベントになるの。そして、相手がAランク冒険者のアラジンということで、庶民からの注目度も高い。そして2人は美男美女とくれば、その2人の写真を買いたいという人が大勢いるの。そして、その写真が葉隠の里で撮られたものだと分かれば・・・。この里は一気に観光地としての地位を築けるってこと」
「それで、夕日を背景に写真を撮れる桟橋を作るのですね」
「それだけじゃなくて、ダーシュにはこういうものを作ってもらいたいんだ」
俺は、ハート型でその中央にベルを配置したオブジェを描いてみせた。
「そうすると、ベルはミスリルで作った方がいいでしょう。錆びることなく永遠に美しい音色が出ますから」
「いいね!採用。それから、ハート型の部分はこういう形で空洞を作ってそこに色ガラスをはめていくと、光が透けてすごく綺麗なものになると思うんだ」
「ほう。それはまた面白い技法ですね」
「ステンドグラスって言うんだけどね」
ダーシュの目がきらりとひかる。ダーシュは元々守衛かつ鍛治屋だったが、最近はガラス細工職人、自転車開発、キャンプ道具開発が主な仕事になっている。本人も何かを作るのが好きなようで色々と工夫されている。色ガラスもその中で開発されたものだ。
「じゃあ、桟橋も木で作るより、土遁でしっかり作った方が良さそうだね」
フクさんがアドバイスをくれた。
「確かに、できれば白を基調にしたデザインがいいな」
「桟橋の方は私に任せてくれ」
ドルフ村長が桟橋を受け持ってくれた。
「それから、フクさんには、いくつかお願いがあるんだ」
「なんだい、アキラ。私にできることなら力を貸すよ」
フクさん頼もしい!
「まずは、新郎新婦の衣装作りをお願いしたい。白いタキシードとドレス。大体こんな感じ」
メーティスさんの力を借りて、タキシードとウェディングドレスの写真を印刷する。
「それは私がやるわ。協力してもらえる当てもあるし」
衣装はギアナが手を上げた。
「アレンジしてもOKだから納得のいくものを作ってくれ、アラジンやバドゥール王女の採寸が必要だろうから、その時はソラちゃん転移で連れていくよ」
「OK、まずは、協力してもらうための話をつけに行ってくる」
そう言ってギアナが外に飛び出して行った。
「あとは、フクさんにはケーキ作りをお願いしたい」
「ケーキってのはなんだい?」
「それは、卵と小麦粉と砂糖に生クリームとフルーツで・・・ゴニョゴニョゴニョ」
「はぁ。パンとは違うスィーツってやつかい。これはパン屋のダリアにも声をかけなきゃ行けないね。任せておきな。しっかり作ってやるよ」
葉隠の里にケーキ屋ができそうな勢いだ。ライゾーのコーヒー専門店との相性もいいし。世界樹の雫を使ってもいい。
「そして、師匠にもお願いがある」
「なんじゃ、アキラよ。妾も混ぜてくれるのか?」
師匠、静かだと思ったら、除け者にされたと不貞腐れていたようだ・・・。
「師匠、師匠には縁結びの神様になってもらう」
俺はビシッとドヤ顔を決めた。
「な、なんじゃと。妾に働けと言うのか!?」
「嫌なら無理にとは言わないけど・・・」
「い、嫌とは言っとらんのじゃ!して妾は何をすればいいのじゃ?」
「絵馬を作ってもらいたい」
「絵馬とな?」
「そう、こういう形で紐がついてて願い事を書いて祈願するものだよ」
俺は、指で五角形を作り頂点を指で挟むようにして、ここが紐ねと説明した。
「剪定した世界樹の枝で作れればご利益がめちゃくちゃありそうだけど、世界樹って余分な枝を切ったりすることあるのかな?」
「まぁ、問題ないじゃろ」
うん、世界樹って一体・・・。気にするのはやめよう。
「それから、温泉を開放したいんだ。もちろん、男女別で入れる広い浴槽があるようにしたい」
「なんじゃ、それならこの里にあるのじゃ。流石に妾の神社の温泉とは効能が段違いじゃがの」
「ええ、あるの?」
ドルフ村長が里の公衆浴場について教えてくれた。源泉が違うが、ちゃんとした温泉で美肌効果もあるらしい。それではと言うことで、温泉宿・露天風呂・足湯というものを伝えておいた。早速作ることになった。今いる人数でそこまでの工事ができるのかと聞いたところ、村の人たちも総出で取り組んでいるとのこと。土遁に木遁と念動を駆使しているので、少人数でグループを作り並行して作業をしているとのことだった。里を出て1ヶ月経っていないのにこの変わりように納得した。
温泉の話が出たので、フクさんに温泉卵と温泉饅頭について説明しておいた。さらに、コーヒー牛乳とフルーツ牛乳も準備してもらうことにした。
「おい、アキラと狐の。その温泉とやらはなんだ」
桔梗が急に口を出してきた。ところでこの方は誰ですか?というドルフ村長・フクさん、ダーシュの顔。紹介しなかった俺も悪いが、この里のハイエルフはちょっと大らかだな。
「えーっと。カクカクシカジカで一緒に旅をすることになった、ブラックドラゴンの桔梗です」
「桔梗だ。世話になる」
「・・・・はるか昔に楓様とこの地で死闘を繰り広げたというあの?」
「そんなこともあったな。それよりも、温泉だ。聞いておれば何やら良いもののようだが」
3人の顔が蒼白になる。ブラックドラゴンってそんな怖い感じなの?今の桔梗からは想像できない。だってチョロゴンさんだし。
「黒いの、妾の神社の温泉は2人用じゃ。すなわち、妾とアキラ専用なのじゃ」
「何、ずるいではないか。我も入れるのだ」
「さて、アキラ。妾と温泉に行くのじゃ」
がしっと俺の手を掴んで師匠が扉を開けて走っていく。
「逃さぬ」
その後を桔梗が追いかけてくる。俺に選択権はないのだろうか・・・。ポカーンとしているドルフ村長、フクさん、ダーシュにあとは頼んだ〜と叫びながら俺は連れ去られていくのだった。




