78. 帰還
魔法のランプも回収できたので、俺たちは王宮へ帰ることにした。
「さて、なんとか魔法のランプも回収できたし、王都へ帰ろうか」
「異論はないが、歩いて帰るのかの?」
「もちろん、ラクダも連れて帰らないといけないしね」
師匠の顔がうへぇって感じになる。そういえば、桔梗たちはどうやってダンジョンに来たのかと思い桔梗を見る。
「ん?我らはこの絨毯に乗ってきたのだが、ダンジョンへの突入でかなり無茶をしたからこのようにボロボロになってしまった。」
「俺の絨毯はあるが、乗れて2人だ」
アラジンの絨毯もあるが、全員で帰るには足りない。
「やっぱり、歩いて帰るしかないよ」
「しかたない。我の背に乗る名誉をお主らに与えてやろう!」
「いやいやいや。ブラックドラゴンが空から降りてきたら完全に臨戦体制になるって」
「なんだ。いいアイディアだと思ったのだがな」
「桔梗がすごく優しくて強いドラゴンだってわかってるからさ。気持ちだけ受け取っておくよ」
「う、うむ。まぁ、困った時は我を頼るが良い」
桔梗さんは頼られると断れないタイプのようだ。ちょろいぞ、桔梗。ちょろいドラゴン。略してチョロゴンさんという名誉な名前を与える必要があるな。
結局、ラクダ2頭には、バドゥール王女と師匠が乗って、他は歩いて王都へ向かうことになった。しかし、ダンジョンの壁やら床やらもボロボロで、階段も塞がっている。地上に戻るだけでも一苦労しそうだ。
「アキラよ。我のドラゴンブレスで地上までの道を吹き飛ばすというのはどうだ?」
「ちょ、待つし」
なぜか魔神ジーニが真っ青な顔をして桔梗を止めている。
「このダンジョンも嫉妬の魔素をコントロールする聖地の一つだし。ブラックドラゴン様も知ってるはずだし」
「そういえばそうであったな。うっかりしておった。しかし、魔神ジーニよ我のことは桔梗と呼ぶのだ」
「黒いのは相変わらずじゃな。どれ妾がダンジョンを治してやろう」
「我も手伝おう。もちろんお主も手伝え」
「あのぉ。会話の内容がおかしいと思うのは私だけでしょうか?」
ギアナの言葉にアラジン、ガンザス、バドゥール王女が全力で頷く。俺は師匠との付き合いが長いので慣れてしまったが、神獣2体と魔神の会話が普通なわけない。ガクブル状態の4人を尻目に、師匠が魔法で瓦礫を粉々に砕く。それを魔神ジーニがダンジョンの元の状態に戻し、桔梗が固めていく。3名の連携でダンジョンがみるみる元に戻っていく。唖然として見守る俺たちに向かって師匠が一言。
「さて、地上へ向かうのじゃ」
階段を上がっていくが、2階層、1階層の魔物は全く襲って来なかった。魔神ジーニがいるからなのか、桔梗と師匠がいるからなのかはわからないが王女もいるのでとても助かる。最速で地上に出たところ、そろそろ夜明けだった。夜の間ラクダたちはのんびり休んでいたようだ。魔物に襲われなくてよかった。
ラクダたちにバドゥール王女と師匠を乗せて出発する。昼間を避けて移動すること3日で王都へ帰ってくることができた。道中、何匹かのレッドスコーピオンに遭遇したが、アラジンとガンザスが難なく倒してしまった。息のあったコンビプレーは流石の一言だった。そうそう、朝のコーヒーや道中の食事はしっかりと葉隠の里で食べれる料理にしておいた。アラジンもバドゥール王女もうまさに驚き無心で食べていた。
ギアナが葉隠の里のアピールに余念がなく、キャンプ道具などもちゃんと売り込んでいた。この時のアラジンの食いつきの良さで、俺はこの世界でキャンプ道具が売れると確信した。ギアナが王族と繋がりができたと喜んでいたのは流石商人だなと感心した。
ちなみに、俺は、師匠と桔梗の制約のせいで、体が非常に重くなっている。激しい戦いの後だから回復するまで待って欲しいという俺のささやかな願いは却下された。鬼か悪魔かと言ったら、狐にドラゴンじゃと返されて何もいえなくなった。
次の日には王都に着くという夕食の時だった。バドゥール王女が話しかけてきた。
「あの、アキラさんのスキルは“撮影“というのですよね?絵画よりも鮮明に記録を残せるとギアナさんから聞いたのですが・・・」
「はい、俺はカメラを使って写真を撮ることができます。そして、ソラちゃんに印刷してもらうこともできますよ」
そう言って、ユニークスキル 撮影者を起動し、如月を取り付け、バドゥール王女に向ける。
「バドゥール!」
アラジンがばドゥール王女を庇うように立ち塞がる。そうか、カメラなんて見たことない人からすると不審な物以外の何ものでもないよな。
「アラジン。これはカメラと言って写真を撮る道具なんだ。撮影したら絵ができる感じかな。2人並んでこっちを見てくれるか?」
焚き火を挟んでの2人なので結構近い。暗いし、35mm F2で撮影する。焚き火の光だけなので、かなり暗めの写真になってしまった。その写真をソラちゃんに印刷してもらう。
「ソラちゃん。印刷よろしくね」
「うん!いいよぉ」
「おぁ!スライムがしゃべった!?」
アラジンもいいリアクションをしてくれるな!以前のソラちゃんの印刷は紙を作りながら印刷を行うので、1枚を印刷するのに時間がかかっていたが、2人で色々考えた結果、紙を先に作ってストックしておくとかなりの時短になることがわかった。ストックはL判飲みだが、1枚印刷するのに、5秒ほどでできる。
「はい、これが印刷した写真です。」
「こ、これは!?」
「なんて緻密で精密な描写でしょう。それに、炎のゆらめきもしっかり再現されています。」
写真を食い入るように見ていたバドゥール王女がものすごい目力で俺を見据えて両手を掴んでくる。
「アキラさん。あなたのスキルを見込んでお願いがあります。ぜひ、私たちの結婚式の写真を撮ってください!」
すごい勢いで頼まれる。横からギアナが袖を引っ張ってくる。
(王族からの依頼だよ。これはチャンスだよ)
少し考えてから、俺は答えた。
「もちろん、いいですよ。ですが、一つお願いがあります。」
「なんでしょう?お礼でしたら今回のことも含めて相応にお支払いしますよ」
「ええ、もちろんお礼は謹んでいただきますが、それよりもお二人は前撮りをされてみてはいかがでしょうか?」
「前撮りですか?それはなんでしょうか?」
「結婚式の前に、結婚衣装で景色の良いところで撮影をするのです。そしてお願いは、その写真を町中に売る許可をいただきたいのです。もちろん撮影の費用などはいただきません」
「それは素敵なお願いですね。私からもお願いしますわ。いいでしょ、アラジン?」
「ああ、君がいいなら俺は構わない」
横目で見たガンザスが微妙な顔をしている。俺は、ガンザスが嫌いじゃない。数日とはいえ、一緒に冒険をした仲間だ。いちいち解説をしてくれるのもGood。なのでちょっと助けてあげようと思った。
「ガンザス。お前もアラジンと2人で写真を撮ったらどうだ?サービスしておくぞ」
「いや、俺は無職になっちまったからな。支払う金がない」
「ガンザス。あなたは私とアラジンのために尽くしてくれたのです。私たちのそばでまた守っていただけますか?」
ガンザスは感極まったように跪き首を垂れた。
「王女様のご慈悲感謝いたします。不詳ガンザス。身命を賭してお仕えいたします」
「ガンザス。俺もお前と一緒にいられるのは嬉しいぜ」
「ア、アラジン」
おっさんの惚けている顔はキツものがあるな・・・。うん、友情だ。これは友情の延長に違いない。そういうことにしておこう。
その後、アラジンとバドゥールの馴れ初めやガンザスの武勇伝なんかを聞きながら夜を過ごした。
次の日の朝、王都に到着した。
「王女様ぁ。爺は本当に寿命が縮む思いでしたぞ。聖女様といえど許されるものではありませんぞ!それに貴様はアラジンか!ガンザスもおるなぁ!そこになおれ。衛兵、衛兵はどこじゃぁ・・・・・・・・」
カンカンに怒っているジャファルを王女が苦労して宥めたのは言うまでもない。




