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62. サンド=ラグ 2

「ガンザス、あいつについて教えてくれ」


「奴はサンド=ラグ。さっきのファティシュスコーピオンほど硬くないが、分厚い皮膚で大抵の刃物は意味をなさない。そして、攻撃は丸呑みと押し潰し。目はなく、体の側線が地面の振動を感知して獲物を探す魔物だ」


 オッケー。予想通りだ。異世界で砂漠の魔物といえばサンドワームと相場が決まっている。いわゆる巨大肉食ミミズ。


「弱点は?」


「音と振動を感知する魔物だ」


 そう言って、ダイナマイトに火をつけて進行方向の右側へ投げる。

「動くなよ」


 遠くで爆発が起こる。

 するとサンド=ラグがそちらを向いた。


「よし、逃げるぞ」


 ガンザスが小声で話しかけてきた。

 なるほど、音と振動で誘導して、逃げるというわけだ。

 この世界では、生き残るのが正義だ。


 ガンザスが導火線の長さの異なるダイナマイトを同時に着火して再度投げ込む。

 これで、時間差で爆発が起こる。


 俺たちはそっとできるだけ音を立てないように移動する。


 ・・・・


 より大きな音と衝撃で俺たちを見失ったかのように見えたサンド=ラグがこ(・)ち(・)ら(・)を(・)見(・)た(・)。


 そう、目のないサンド=ラグがこちらを見ている。

 いや、意識が俺に向いていることがわかる。


 多くの魔物は危機回避能力を持つ。すなわち、ある一定以上の魔素を持つ生き物を感知して、戦うべきか逃げるべきかを決めるのだ。ほとんどの人間は魔物よりも魔素量が少ない。なので無視されることがほとんどだが、俺は葉隠で鍛え上げられている。サンド=ラグにとって無視できない存在と認められたようだ。


「妾が鍛えておるのじゃ。こんなミミズから逃げるのは許さんのじゃ」


 あ、なんか師匠のせいっぽい。俺認められてないわ。

 なにはともあれ、戦うしかなさそうだ。


「元近衛騎士団長、サポートをよろしく」

「おい、戦うつもりかよ」

「ああ、見たところ、そんなに速さはなさそうだからな。攻撃を喰らわずに斬りつけ続ければどんな魔物にも勝てるってな。忍術の先生の名言だ」


 自身満々に答えたものの、桔梗から課せられた制限のせいで、スピードは4分の1になっている。大丈夫かな・・・。


 忍者刀を取り出して、魔素を纏わせる。

 とりあえず、切ってみるか。


 魔力で足に魔素を溜めて、『瞬脚』。やはり普通よりも遅い。がガンザスにとっては一瞬でサンド=ラグの胴に近づいたように見えたらしい。


「なっ!?さっきも思ったが、あいつは本当に早いな」

「妾の弟子じゃ。当然じゃ」

「いや、おまえさんみたいなちみっこの弟子と言われてもな・・・」

「ふん、人をみるめがない奴め」

「ははは・・・・」(妙に威厳があるんだよな。この子)


 忍者刀で一閃。


 忍者刀の刃渡は約60cm。そして、実際に切断に使う部分は30cm程度。

 スパッとサンド=ラグの胴を切り裂く。ファティッシュスコーピオンの外殻に比べれば非常に柔らかい。しかし、切り裂いた部分は皮膚。血液すら流れ出ない。


 そして、グジュっという生々しい音と共に傷口が塞がる。

 サンド=ラグの体が俺を押し潰そうと倒れ込んでくる。


 遅い。これは当たる方が難しい。しかし、こちらの攻撃も有効ではないので、どうしたものか。


「よし、ガンザス。ダイナマイトまだあるか?」


 サンド=ラグの倒れ込みを余裕で躱しながら、ガンザスから5本ほどダイナマイトを投げてもらう。


 葉隠流忍術 火遁(極小)


 全てに火をつけて、やつの口に放り込む。


 ドゴォォン。


 サンド=ラグの体内でダイナマイトが爆発する。


「ええ、これで無傷なのか?」

「いや、苦しんでるぞ。効いてる」


 サンド=ラグが身を捩って暴れる。

 久しく感じたことのない痛みを感じて怒り狂う。


 ズズズズ。


 サンド=ラグが砂の中に潜っていく。


「逃げたか?」

「ああ、さすがのやつも腹の中で爆発したら逃げ出すしかなかったみたいだな」

「うむ、たぶんこれは・・・」


「!!」


 悪寒を感じ俺は師匠を引っ張って避ける。


「うわぁぁ」


 俺たちのいた場所の足元が崩れ落ちてサンド=ラグの口が現れ、避けることのできなかったガンザスが喰われた。


「ガンザス!」

「アキラよ、慌てるでない。奴はまだ死にはせぬ」


「師匠、どういうことだ?」

「勘じゃ」

「いや、それは説明になってない」


『解。サンド=ラグは獲物を丸呑みして、数時間かけて消化します。サンド=ラグの歯はカエシの役割しか持たず、獲物が逃げるのを妨げるのみです。そのため、現在個体名:ガンザスは無傷です」


 それじゃ、助け出すことも出そうだな。


『はい、可能です。しかし、完全に倒した後、腹部を切り裂いて取り出す必要があります。』


 ありがとう、メーティスさん。


 ガンザスを喰った奴は、再度砂の中に潜っていく。

 サンド=ラグの厄介な部分は巨体と分厚い皮膚ではなく、砂中を音もなく進み地面から奇襲をかけることだ。


「師匠、ソラちゃん。離れてて」

「うむ」


 また、悪寒だ。これは殺気。

 地面を蹴って躱す。


「あーれーなのじゃー」


 うぉい!絶対わざとだろう!師匠とソラちゃんも飲み込まれた。

 ガンザスだけなら最悪見殺しで走って逃げるコマンドも使えたのに。

 いや、使わんけど。


「ああ、もう」


 ユニークスキル 撮影者 起動 

 モード Z

 換装 皐月(50mm F1.4)


 ユニークスキル 撮影者の能力

 魔物を決められた回数撮影することで、その魔物に対して、必ずダメージを叩き込むことのできる武器とすることができる。ガンザスと師匠が消化される前に倒す必要があるため、全力で撮影するしかない。


 しかし、月明かりがあるとはいえ、夜の砂漠だ。

 今ある中で一番明るいF値のレンズを呼び出す。

 F1.4の明るさでもISO感度が上限に張り付いている。

 撮った写真もノイズがかなりのってしまう。


 写真の美しさでカウントが追加される能力ゆえに、ノイズが多い写真は不利になる。

 しかし、やるしかない。


 師匠を飲み込んだサンド=ラグを皐月で撮影する。

 ある程度全体像が写っていないとカウントされないため、瞬脚で距離をとる。


 単焦点レンズゆえに、自ら動いて距離を取らないと奴が映らない。

 幸いここはだだっ広い砂漠だ。距離はいくらでも取れる。


 奴が砂に潜る前に、シャッターを切る。


『サンド=ラグが対象に設定されました。武器化まで残り40枚です。』


 メーティスさんが告げてくれる。


「さて、サンド=ラグ。おまえのラストダンスの時間だ」



桔梗に大爆笑された決め台詞ですが、アキラは結構気に入っています。

今回は、周りに誰もいないので、格好つけてみたみたいです。

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