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38. 物理戦闘訓練

 晩御飯の時間になった。魔力が尽きたので、体が重い。


 俺は着ているだけで魔力を消費する装備を常に装着して、100kgの亀の甲羅を背負っている。なので常に魔力で魔素を循環させないと動けない。普通に生活するだけで魔力を消費するが、今では魔力の自然回復力は装備の消費量を上回っている。というわけで、少しだけ座り込み休憩してから晩飯に向かう。


 晩御飯は、フクさんが腕によりをかけたBBQである。

 メインはビックボアの肉。筋切りをして岩塩を肉にすり込み寝かす。

 その後、玉ねぎとりんごをすりおろしに漬け込む。

 これで肉が柔らかくなり臭みが消える。

 15分ほど放置して、玉ねぎとりんごのすりおろしの中から取り出す。

 炭火に網をかけ、玉ねぎの輪切りとキャベツと一緒にビックボアのバラ肉を焼いていく。スペアリブも同様に焼いていく。追加で岩塩を少しふりかける。

 油が滴り、ジュウジュウと炭火が音を立てる。


 隣には、ブラックマスの内蔵の除き、串に刺して岩塩を擦り込んだものを遠火で焼いている。


 どちらも非常に美味しそうだ。よし撮ろう。

 ユニークスキル 撮影者発動

 換装 35−150mm


 焦点距離を35mmに、暗い中での撮影するから一番明るいF2に設定する。

 いろんな角度から撮影する。ドルフ村長とダーシュと師匠も匂いに釣られて集まってきた。皆でコンロを囲んで食事をする。やっぱり、こういうのいいよな〜。

 レモン汁を少しつけて食べる。


「肉が柔らかいの!今までになくうまいのじゃ」

 師匠がモフモフと肉を食べている。その横でソラちゃんももくもくしゅわしゅわしている。かわゆい。


 そういえば、この1週間そこらで、ヴィリジアンビレッジの食文化が劇的に変わってきている。この焼肉もフクさんに話したものを再現したものだ。これはこれで美味しい。しかし、まだ足りない。にんにくに胡椒、醤油があればもっと上手くなるのがわかっているだけに後一歩感が否めない。


 早く強くなって世界中で食材を探そうと決意した。主に自分のために! 


 楽しい食事の時間が終わり、ダーシュとの物理戦闘訓練の時間になった。


「さて、これから物理攻撃訓練を行う。まずは戦闘スタイルについてだ。薄々気づいていると思うが、気配を殺し、高速で移動し、敵の急所を一撃で断つ。それがアキラ、君向きの戦闘スタイルになる。それゆえ楓様から出されたこれまでの修練は、足腰の鍛錬に重点を置き、高速移動に特化した修練をされておった。加えて、魔短剣による素振りで、武器に魔素を流しコントロールする鍛錬。これは魔素で武器の攻撃力を高め急所への一撃を必殺にするための修練だ」


 ええ、この世界にきた時からスキル構成が暗殺者だと思ってましたとも。

 そして、水の上を走り、手の印で魔法を使う。それすなわち忍の者。


「これらの基礎を生かすため、これからは、体の動かし方を学んでもらう。最終的に・・・」


 そういったダーシュの姿が揺らいで消える。

 そして背後から首筋に短剣が突きつけられている。


「これができるようになってもらう」


 全く気配もなく気づかなかった。俺に“これ“ができるようになるのだろうか?


「まずは、短剣を構えろ」


 言われた通り、右手に短剣を持って構える。


「正面を向くのではなく、右側を前に半身に構え短剣を前に出す。左手は臨機応変に対応できるように。それが基本だ」

「はい」


 半身に構えるのは自らの急所を敵の視線から隠す効果がある。慣れるまでは動きづらい。


「その状態で、俺の攻撃を躱せ」


 ダーシュが攻撃を仕掛けてきた。まだ目で追える速度だ。

 なんとか一撃目を躱す。


「動きが大きい。それでは次の攻撃に対応できないぞ」


 ニ撃目で軽く胴を叩かれる。これで俺は死んだようなものだ。


「くそ。もう一回」

「その息だ」


 基本の構えから、最小限の動きで攻撃を躱すように心がけて動く。

 当然、攻撃の流れを見極めギリギリまで引きつけて躱す必要が出てくる。

 これが、めちゃくちゃ怖い。けどやらないと次の攻撃で死ぬ。


「そうだ、攻撃をよく見ろ。ギリギリまで見極めて躱す」


 今度は、2撃目まで避けることができた。

 それにしても、剣の動きが目で追えるというのは驚きだ。

 今朝の魔力で魔素を循環させる訓練が効いている?魔素を体に循環させることで身体強化が可能になる。不均一な循環でも100kgの亀の甲羅を背負って動けるようになるのだ、今朝の訓練で均一にさらに早く循環させることでその効果が上がる。身体が強化されるというのは筋肉だけではなく、動体視力、神経伝達速度、思考力の全てが強化されていると考えれば、今の状態も納得がいく。


 物理戦闘訓練に気を取られていたから魔素循環が疎かになっていた。

 次は、魔素循環を意識して構える。


 お、剣の動きがスローモーションのように見える。思考加速も付くのか。

 体もよりイメージ通り動く。3撃目も躱せる。4、5・・・・・10。


「急に動きが良くなったな、基礎の魔素循環に意識を向けたのはいい判断だ。少し早くするぞ」


 10撃躱すと、ダーシュが1段階速度を上げる。


「く、はっ」


 避けきれないと思ったら体が勝手に動いていた。短剣でダーシュの剣を弾く。


「短剣で弾くのも良い手だ。今回は、タイミングが悪く君がよろけてしまったが、相手の剣の力が乗る前に弾くことができれば、相手の態勢を崩すことができる」


 いわゆる、パリィというやつだ。


「今はまだ、剣にしか意識が向いていないようだが、相手の全体を見ながら次の動きを予測するといい。観の目強く、見の目弱くだ」

「はい」


 確かに、剣をよく見ることに意識が向いていた。

 ダーシュとその周りを俯瞰して見る。左足に力が入った。くる。

 本日一番の速さで剣が迫る。でも見える。上段からの振り下ろしを右に半歩ズレて躱す。ダーシュの右手に力が入る。切りあげが来る。一歩ダーシュに近づくことで、威力を殺し短剣を突き出す。ダーシュはステップバックして、短剣を躱したあと、鋭い突きを繰り出してくる。短剣で突きの軌道をわずかに逸らしながら、その場で回転し威力を殺す。回転の力を生かしてダーシュを切り付ける。当たった。と思ったらそれは残像であり、背後から剣の腹で頭をコツンと叩かれた。


「初日とは思えないいい出来だ。だが、最後気を抜いたな。そこは減点だ」


 ダーシュはまだまだ余裕がある。一方、俺は、集中力と体力の限界をむかえていた。


 そういえば、武術・剣術なんでもそうだが、普通、基本の型というものがある。

 構えは教わったが、他にもあるのだろうか?そう思ってダーシュに聞いてみた。


「もちろんある。葉隠短剣術の8つの型。まだ早いと思うが見てみるか?」

「ぜひ」


 そう言って俺はユニークスキル 撮影者を起動する。

 動画で撮影し何度も確認できるようにするためだ。

 しかし、時はすでに夜。月明かりしかないので光量が足りない。

 ざらざらのノイズの乗った画像になってしまう。


「妾が手伝ってやろう」


 どうやらこっそり陰で見ていたらしい師匠がやってきた。

 師匠が人差し指をすっと上に向けると光の粒が空中に現れた。


 これなら十分いけそうだ。

 フレームレートを120fpsにセットして、シャッター速度を1/250秒にする。

 こうすることで後からスローモーションで確認できる。


 カメラの設定が終わったところで、ダーシュが葉隠短剣術の8つの型を見せてくれた。それらは、一つ一つが非常に地味で無駄を極力削ぎ落とした動きだった。

 やっていることは、切りおろし、袈裟斬り、逆袈裟、横一文字切り、突き、逆手切り上げ、逆手突き下ろし、投擲。全て基本の構えから繰り出される。


「ダーシュ、ありがとう」


 寝る前に見ながら復習しよう。


『動画撮影の経験値が規定値に達しました。スキルスロット1が開放されました。』


 メーティスさんがアナウンスしてくれている。

 スキルスロット1?なんだそれ。


「ほれ、アキラよ。帰って温泉に入るのじゃ。フルーツ牛乳というやつが作れるのじゃろ?」


 師匠が急かしてくる。一緒に入るのかと思っていたら、フルーツ牛乳が目当てだった。

 まあ、いいか。今日は疲れたし、スキルスロットについては、明日確認してみよう。


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