34. トレント材
日本食を食べられる可能性が出た。俺は根っからの日本人、海外出張に2週間行っただけでも日本食が恋しくて仕方なかった。この先ずっと日本食が食べられないのは辛いと思っていたところだ。これは嬉しい。他の料理がどれだけ美味しかろうとも、日本食が食べたくなるのは自明。可能性があるだけでもやる気が出る。
「さて、アキラよ。チーズが手に入った祝いじゃ。お主のスキルで写真とやらを取るのじゃ」
確かに、初めてきた場所は撮影しておきたい。それにぜひともライアさんは撮影させていただきたい!アルタもぜひ撮影しておきたい逸材だ。というか、ここの住人たちはそのままでコスプレイヤー。しかも、アルタは筋肉隆々。地球にはファイヤーファイターのカレンダーが売られていることを考えると、この世界でも需要はあるとみた。許可なく販売なんてしないけどね。
というわけで
ユニークスキル 起動
換装 20−40mm
まずは、トレントとチーズを撮る。魔素表示モードにすると、わずかながら魔素を含んでいる。やはり、旨さの秘密は魔素にもありそうだ。ワルドのように多すぎるとエグ味や不味さにつながるようだが・・・
次に、ドライアドのライアさんだ。
ここはポートレートズームたる35−150mm F2-2.8の出番だろう。
ふふふ。ムラムラ、いやワクワクするぜ。
換装 35−150mm
お、そういえばレンズに名前付けた方がいいとミコト様が言ってたな。
確かに、レンズ交換のたびに焦点距離を呼ぶのは大変だ。ちゃんと考えよう。
ロストフォレストの奥。光は木漏れ日のみだが、それはそれで幻想的だ。
ライアさんは薄く発光していて神々しい。よく見ると纏っている衣服は薄く透けている。少し木に寄りかかるように立ってもらい。手を太ももの前あたりで握ってもらう。こちらを向いて少しはにかむような笑顔を向けてくれる。
85mmでバストアップ。
50mmで全身が映るように撮影する。もちろんF値は開放で背景をボカし、ライアさんが浮かび上がるようにする。少し離れて150mmでも撮影する。
撮影していると、ライアさんの魔素が流れ込んでくるのがわかる。
師匠の撮影の時ほどの量ではないが、
「その撮影というのは、非常に心地よいものですね」
なんだか、頬がうっすら赤く染まり、非常に色っぽい。
師匠も同じようなことを言っていたが、魔素保有量の多い魔物は魔素を吸われると気持ちいいらしい。いくつかポージングを変えて撮影させてもらう。
こちらが生産者です。と張り出すだけでチーズが完売しそうな写真が撮れた。
次にアルタの撮影をする。
こっちは筋肉隆々な2m超えの巨体。間伐用の斧を持っている。
その斧を背に担いだような格好をとってもらう。
絵になるね。135mmから85mmを使って撮影しする。
後ろ向きで背筋から僧帽筋が美しい肉体美を激写する。
これはこれで需要がありそうだ。あとでアマンダに写真をあげよう。
換装 20−40mm
20mmにセットして、下から煽るように撮影する。
アルタに斧を前に構えてもらう。パースペクティブの効いた広角で写すと、巨大な斧が誇張され、とてもかっこいい写真が撮れた。
チカトに着いたらアマンダと一緒に撮影させてもらおう。
「アキラよ、男の裸を撮影しながら興奮するとは、そっちの気があったとは知らなんだぞ」
「違う!断じて!」
それにしても、アルタから吸い取れる魔素はライアよりもさらに少ない。
同じレンズを使っているし、F値も同じなのに、なぜだろうか?
『撮影による魔素の吸収は、対象の魔素量の1%程度となっています。対象の魔素量が多いほど、吸収される量が多くなります。』
さすがはメーティスさん。疑問にすぐに答えてくれる。
「ソラちゃん。印刷お願い」
「アキラぁ。印刷紙の材料がなくなったよぉ」
「ライアさん。少し森の木をもらってもいいか?」
「それなら、トレント材を使ってみてはいかがでしょう。アルタ。ついでに間伐作業もお願いできるかしら」
「もちろんだ」
アルタが慣れた様子で、日当たりなどを考え、間引くトレントを選んでいく。
そして、斧を振りかぶり。
「ふん」
一撃一伐。
木ってこんな感じで切るんだっけ?確か、倒す側にくの字の切れ目を入れて、逆側をなん度も打ち付けるのがスタンダードだった気がする。
そう思っている間に、10本のトレントが倒されていた。
結構な巨木なのだが、一本を軽々と持ってくるアルタ。
怒らせるのは絶対にやめようと心に誓う。
「ソラちゃん。全部格納してくれる」
「はーい。それから印刷するよぉ」
L判サイズの写真が2枚出てくる。ライアさんとアルタの一番良く撮れたものを選んで印刷した。トレント材で紙を作ったことで紙の質が向上している。繊維が細かいというか目が細かいと表現するべきか。色のりがさらに良くなっている。
2人にそれぞれ写真を渡す。
「まぁ。こんなに美しく撮っていただいたのですね。また撮ってくださいね」
「悪くない」
ライアさんはとても喜んでくれている。
アルタは、言葉とは裏腹に顔がニヤついている。寡黙な男のニヤついた顔はレアなんじゃないだろうか。この世界で、撮影と印刷ができるのは俺だけだし。お礼としも喜んでもらえたようだ。
ライアさんにチーズを二玉もらいチカトへ戻ることにした。
チカトへ戻り、アマンダに食材を集めについて説明する。
その説明の中に出てきたモッツァレラチーズをぜひ食べたいということで、
もう一度作ることにした。
ロストフォレストで穀物酢が手に入ったのは暁光だった。穀物酢の原料はチカトで作っているらしい。
牛鬼の主食は牧草。牧草の副産物である種子を翌年の種以外全てライアへ渡していた。牧草となりそうな植物であれば種類を問わず育てていたので、色々な種子が混ざっていたようだが、それが穀物酢を複雑な味わいにしているようだ。
モッツァレラチーズが完成し、アマンダに渡す。
トマトとバジルとオリーブオイルがあれば、カプレーゼが作れるのだが・・・
ヴィリジアンヴィレッジに戻ったら手に入れた食材の振り返りをしてみよう。
アマンダはモッツァレラチーズをうっとりしながら食べている。
アルタがこっそり盗み食いしているのもちゃんと見た。
師匠は普通に食べている。ソラちゃんも。
出来立て。美味しいもんね。
もっと美味しいものを食べれるかもしれないということで、アマンダも食材探しに協力してくれることになった。欲しいのは大豆だな。醤油・みそ・豆腐に納豆。
大豆にライアさんの力が加われば実現可能だ。味は、おいおい良くしていけばいいしな。
ドライアドと牛鬼の協力が得られるのは大きな成果だ。
そろそろヴィリジアンヴィレッジに帰ることにする。
チカトでは牛鬼のミルクも手に入れた。
一部は皮の水筒に入れて腰に吊るす。そして、天の湖の全力疾走タイムへ。
当然、帰りも水面を走るわけで、
はぁ。隙あらば修行。せめて、グレーグリズリーを倒せるくらいにはなりたいしな。




