21. ギアナ
21話目に突入しました。
「おーい、誰かいないの〜」
村長のドルフさんの家に訪問者がやってきたようだ。
「おかえり、ギアナ」
ドルフさんが出迎えている。
おかえりということは、ドルフさんの親族なのだろうか?
金髪の美少女が玄関口に立っている。もちろん、エルフだ。
なので年齢はわからない。
「また、塩とトマトとチーズを持ってきたから絹と交換してもらえる?」
「おお、待っていたよ。いつもありがとう」
「ドルフさん、その方は?」
「あれ〜。知らない子がいる」
「これ、ギアナ。アキラ様、この子はギアナと言って、私たちのひ孫です。この村と南にあるトリプレットデザートという街を行き来しながら行商をしているのです」
「やっほー。ギアナだよ。よろしく」
ギアナは元気っ子であるようだ。
「カゲノアキラです。よろしく」
「アキラくん。トリプレットデザートからここまで来るの大変なんだよ〜。湖を渡って神の頂を超えて、グリーンウッドのゴブリン達をちぎってはなげちぎってはなげ。やっとこの村に辿り着くんだよ。そして貴重な塩と村では取れないトマトとチーズを持ってくる。そんな素敵な美少女とは私のことだ!」
ドヤ顔がすぎる。右手の親指で自分の胸を指すポーズでドヤ顔を決めてきたギアナ。
「ギアナさん」
「あ、ギアナでいいよ」
「じゃぁ、ギアナ。俺は、ミコト様にこの村に導かれて、今、師匠、楓様に修行を強いられています」
「アキラよ。強いられているとは何事じゃ」
「えぇ!?、楓様、村に来られていたんですか?」
ギアナが師匠を見て驚いている。師匠は本来なら、本殿に行ってもなかなか会えない存在らしい。
「それよりギアナ、これを食べてみな」
フクさんがホーンラビットの唐揚げを持ってきた。
「何この食べ物」
ギアナが唐揚げを一口食べる。
「!!!!、むがもがもが、もいしい」
「こら、食べながら喋るんじゃないよ」
「何これ、すごく美味しい」
唐揚げがすごい勢いでなくなっていく。
「なんで師匠も一緒に食べてるんです?さっきもだいぶ食べたじゃ無いですか」
「美味しいからしょうがないのじゃ」
どうやら師匠が食いしん坊属性を手に入れたらしい。
妖狐は魔素を取り込んで生きているため、食事は必要ないとか言ってたのに・・・
「それから、これも食べてみな」
フクさんが生ワルドゼリーを出す。
「んんーーーー。甘くて美味しい。何これ」
「生ワルドゼリーって言うんだよ」
「ワルドってあの世界樹の実のワルド? エグくて生では食べられないって・・・・」
「そうなんだよ、アキラが生のワルドの魔素を抜く方法を見つけてね。村の特産品にしようとしているのさ。あたしゃもうびっくりしたよ」
それから、村で塩が採れるようになったことやガラス細工ができるようになったことを話す。
そして、村に人を呼び込むことを考えていると説明する。
ギアナは黙って聞いていたが、急に俺の手を握って上下に振り回す。
「すごい、すごい、すごいよ、すごい。唐揚げもゼリーもこのガラスの瓶も絶対売れる。商人の私が言うんだから間違いない。村に人を、みんなが帰って来るかもしれない」
そう言ってギアナが泣き出した。
「この子は、村を出て行ったエルフ達を探しているのです。村に必要な塩や珍しい食材を定期的に持ち帰って、村で作った絹の織物をトリプレットデザートで売って、その資金で皆を探そうと」
ドルフさんが、泣いているギアナの代わりに説明してくれた。
絹織物と塩をぶつぶつ交換していると聞いた時は、絶対に騙されていると思ったが、
村全体でギアナを応援していると言うことなのだろう。ドルフさんのひ孫ってことは、村のみんなからも可愛い孫みたいなものだろうしね。そんな子が他のエルフを探すために必死に頑張っているなら応援したくもなる。
「ギアナ、この村に人を呼び込み、村に仕事を作り出し、外貨を稼げるようにする。それで、より住みやすい村にできると思っているんだ。そうなると出ていったエルフ達も帰ってくるんじゃないかと思ってる。どうかな、協力してくれないか?」
「当たり前だよ。私に何ができる?」
涙を拭いたギアナが勢いよく答えてくれる。外の情報を知っているギアナが協力してくれるのはありがたい。
「まずは、生ワルドゼリーの価格を決めたい。この世界の価値観がわからないから、どのくらいが適正か教えて欲しい」
「そうね。世界樹の実ワルドはここでしか手に入らない貴重なものよ。そして、怪我や病気を癒す効果も持ってる。さらにこれほど甘いスイーツというのは滅多に食べられないもの。となると、10,000Gでも安いかな」
ほう、ここの通貨はこの世界の名前と同じなんだな。比較対象がないから10,000 Gがどのくらいの価値なのかわからない。
「10,000 Gってのは、どのくらい高価なんだ?」
「一般的な宿、一泊で200 G。一食20 Gってところかな。ピンキリだけどね」
200 Gで10,000円くらいの感覚か。ということは生ワルドゼリーは50万円!?
超高級品じゃないか。これは気軽に食べれるようなものじゃないな。見せ物的な名物としてはありだが、人を集めるには高すぎる。だいぶ誤算だ。
「じゃあ、ワルドシロップも・・・」
「このガラスの瓶で100 G、中身のシロップは、体力・魔力を全回復させ、部位欠損も回復するエクストラポーション相当でしかも美味しい。少なくとも、5,000 Gは超えるね」
魔物との戦いがある世界で、この効能を考えると安い気がする。
これは調味料として使えるとか思ってすみませんでした!
しかし、これで毎日の修行で酷使している体が、翌日に筋肉痛もなく動ける理由がわかったな。
「それでも買いたいという客はいっぱいいると思う。ただ・・・」
「ただ?」
「名前がダサい」
クリティカルヒット!ギアナがズバッと指摘する。
薄々感じていたさ。
「生ワルドゼリー、何かいい名前ある?」
「そうね。・・・世界樹の宝石と世界樹の雫でどう?」
「おお、一気に高級感が出た。それで行こう」
ギアナはエルフの中では一番若い子です。
18歳の女の子です。若いため、村をなんとかしたいという気持ちが強いですね。
エルフであるので、魔法は得意です。




