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20. 新たな料理

20話目です。

ブックマーク登録ありがとうございます。

嬉しいです。

 ヴィリジアンヴィレッジを訪れて5日目。

 朝6時起床。師匠に抱えられて村に到着。

 3回目になると、木々の間を跳躍することにも慣れてくる。

 師匠は、亀の甲羅をがっしりと掴んで移動しているので、俺は吊られている形だ。

 木々は10mはあるので、落ちたらめちゃくちゃ痛いではすまないだろう。

 村に5分足らずで着く。


 ドルフさんの家に着くと、フクさんが待ち構えていた。


「おはようございます」

「うむ」

「フクさん、おはようございます」

「昨日、ホーンラビットを仕留めたんだってね。ダーシュから、ホーンラビットの肉をもらったから食べるかい?」

「いいんですか?ぜひ食べたいです」


 ここ4日間、魚料理しか食べていない。そろそろお肉が食べたかったのだ。

 朝から肉でも13歳のこの肉体なら苦にならない。


「ああ、ホーンラビットの塩焼きだよ」

「いただきます」

「妾も食べるのじゃ」


 焼きたてで、肉汁の滴るホーンラビットの塩焼きにかぶりつく。


「ふむ、いつもの味じゃな」

「ワイルドな味ですね」


 焼き加減はミディアムレア。

 薄い塩味に、ホーンラビットの独特な香り。不味くはないが、もっとガツンと濃い味付けが欲しいところ。

 ここら辺も改善の余地ありそうだ。


「フクさん、この村では塩貴重なのですか?他の調味料はないのでしょうか?」

「そうさね、塩はなかなか手に入らない貴重品だよ。3ヶ月に一度やってくる行商人と交換するんだよ」


 購入ではなく物々交換なのか。この村では、外貨がそれほど無いらしい。


「ちなみに何と交換するのですか?」

「蚕の糸で作った反物と交換するのさ。グリーンウッドの森に生息する蚕の繭をほぐして機織り機で反物に仕上げるのさ。世界樹の影響で、グリーンウッドの森に住む蚕の繭は魔素を多く含んでるからね。丈夫で手触りも良くてね」


 塩と絹。等価交換ではない気がするが、この村では塩がそれほど貴重ということなのだろう。


『メーティスさん。塩やその他調味料になりそうな素材を探すことはできなかな?』

『マスターの気配察知スキルを個体名ソラの蓄えた魔素を用いてい範囲拡大し、村周辺を探索することは可能です。実行しますか?』

『よろしく!』


 村の中に反応がある。料理用の塩の反応もあるが、ちょっと意外な場所に反応がある。

 昨日、石をもらいに行ったガゾの工房だ。

 他に村外れの雑草の生い茂る一画から塩とは別の反応がある。


「フクさん、ちょっとガゾの工房に行ってきます」

「あんた、急にどうしたんだい?」

「ほう、また何か見つけたようじゃの」


 師匠はドルフさんの家でくつろぐらしい。

 というわけで、俺とソラでガゾの工房に行くことにした。

 現在、朝7時。もちろんガゾも朝早くから工房を開いている。


「おはよう」

「おう、アキラじゃねーか。朝からどうした?昨日の石はダメだったのか?」

「いや、そういうわけじゃ無いんだけどさ。実は塩を探してるんだ」

「おいおい、ここは石工の工房だぜ?貴重な塩なんてあるわけないだろう」

「ちょっと石置き場を見てもいいかな?」

「構わないぜ」


 石置き場で気配察知スキルを使う。もちろん塩を探す。

 白っぽい石に塩の気配がある。手にとってちょっと舐めてみる。

 ほのかに塩味がある。


「おい、何岩を舐めてるんだ?」

「ちょっとね。ソラちゃん鑑定できる?」

「アキラ、わかったよぉ。えい」

「おいおいおいおい、そのスライム鑑定が使えるのか?そいつはすげぇ」

「石だよぉ」


 そうだねぇ。石だねぇ。ガゾがずっこけてる。


『岩塩ほどではないですが、内部に塩を多く含んでいす。細かく砕いて煮出し、濾過後濃縮することで塩を生成することが可能です。』


 ありがとうメーティスさん。


「ガゾ、この岩を舐めてみて」

「岩をか?」


 ガゾが不可解な顔をしながら、それでも岩を舐めてみる。


「お、ちょっとしょっぱい。こいつは塩か!?」

「ああ、岩塩とまではいかないけど、岩の中に塩が多く含まれているみたいだ」

「そりゃ、すげぇじゃねーか。この村じゃ塩は貴重なんだぞ。この岩から塩が手に入るなら、村の生活が楽になるぜ」


 ガゾが大興奮している。それにしても声がでかい。


「たぶん、塩が取れると思う」

「本当か!」

「まずは、岩を細かく砕いて、水を張った鍋に入れる。そして、沸騰させる。布で濾過する。最後に水を蒸発させると塩が取れる」

「そんなに簡単に塩が取れるのか!?なんてこった。この岩は、天の湖の近くの採石場で取れるし、村の家にも使ってるぜ」


 ガゾが早速試してみたいと塩作りを始めた。


 次は、村外れの雑草が生い茂る一画だ。

 なんかこれみたことあるな。

「ソラちゃん、ここら辺の草鑑定してくれる?」

「いいよぉ」


 ・・・・


「この草、食べれるって」

『これは、ローズマリーです。その隣がタイムです。乾燥させて肉料理に使うことができます。』

「ソラちゃん、メーティスさんありがとう」


 胡椒あたりがあれば最高だったのだが、ハーブも悪くない。


 いくつか摘んでいこう。


 ガゾの工房に戻ると塩が取れていた。小瓶にいっぱい入っている。


「おい、アキラ。塩がこんなに取れたぞ。しかも、角の無い塩だ」


 ガゾの興奮は止まらない。この塩はなめらかでものすごく美味しいと言っている。

 岩の中のミネラルも豊富に入った塩なのだろう。


 そんなガゾを引き連れて、ドルフさんの家に行くことにする。


「ガゾを連れて、どうしたんだい?」

「ガゾ。よく来たね」


 ドルフさんとフクさんが出迎えてくれた。


「おお、ドルフ、フク。聞いてくれよ」


 ガゾが興奮して語り始める。

 話を聞いて、ドルフさんもフクさんも大興奮している。

 村で塩が手に入るのは奇跡のようなことらしい。そして、今まで気づかなかったことに気落ちもしている。


 その後、とってきたローズマリーとタイムを見せる。

 乾燥させて、肉料理に使うと臭みが取れて美味しくなると伝える。

 フクさんが、即座に風魔法で乾燥させる。


 魔法って便利だよな。早く使えるようになりたいよ。


 塩・ホーンラビットの肉・ローズマリーとタイムが揃った。

 今まで食べていた麦飯があるということは、普通に麦がある。

 ワルドゼリーを作った時にでたワルドの種もある。


 もしや、あれが作れるのでは無いだろうか?


「フクさん、ちょっと台所を借りていいですか?ちょっと作りたいものがあって」

「あんた、また何か思いついたんだね。いいさ。作ってるところを見せてもらえるかい?」

「もちろん」


 まずは、ホーンラビットの肉に塩をふる。肉に塩が馴染んだら乾燥させたローズマリーを刻んで振りかける。

 そして放置。


 次に、ワルドの種を砕いてフクさんに風魔法で乾燥させる。蒸して柔らかくなったところで、布に包み絞っていく。ここでもフクさんの土魔法で圧力をかける。本当に便利だ。魔法を使うたびにフクさんのポージングが決まるのさえ気にしなければだが・・・。布からワルドの油が滲み出てくる。人差し指で掬って舐めてみる。


「香りはいいが、えぐみがすごい」

「これは魔素のえぐみだね」


 フクさんがソラ分体:フクにお願いして魔素を吸収させる。

 ソラちゃんの神空間に魔素が溜まっていく。

 それにしても、ワルドは実も種も魔素を大量に含んでいるな。

 これで油が手に入った。


 最後に麦。すり鉢で細かく擦って、篩(フルイ)にかける。いわゆる小麦粉だ。


 ワルドオイルを熱して170℃くらいにする。少し濡らした箸をよく拭き油の中に突っ込む。箸全体から泡が出るくらいを目安にする。


 下処理したホーンラビットの肉に小麦粉をまぶし、油の中に投入。

 じゅわじゅわという音。油のはねる音。


 フクさんが驚いている。油で揚げるという調理法は知らないらしい。


 ホーンラビットの肉がこんがり色づき、浮かび上がってきたら布を敷いた皿の上に引き上げていく。


 ホーンラビットの唐揚げの完成だ。

 一口食べる。うまい。程よい塩味とワルドの油とローズマリーの香りがホーンラビットの独特の香りとマッチしている。そして、肉汁が口の中に溢れる。最後に鼻から抜ける余韻。この数日間、精進料理のような味の薄い食事ばかりだったので、涙が出るほどうまい。


「私も一口いいかい?」

「もちろんどうぞ」


 フクさんが唐揚げを一口。


「うまいじゃないか。生ワルドゼリーも美味しかったけど、この料理も美味しいじゃないか」


 というわけで、フクさんと一緒に唐揚げを量産して、師匠、ドルフさん、ガゾと試食会となった。


「こいつはうめーじゃねーか。ホーンラビットは臭みが苦手だったんだが、こいつはいける」

「ほう、これがホーンラビットの肉で作った唐揚げというのですか。大変美味ですね。塩味がとても効いていますね。こんなに贅沢をしていいのでしょうか?」


 ドルフさんが泣いている。


「うまい。うまいのじゃ」


 師匠がガツガツと両手に唐揚げを持って頬張っている。


「アキラぁ。ソラね。これ好きだよぉ」


「魔獣の肉は臭みがあって、この村ではたまにしか食べなかったのですが、これからはホーンラビットの狩りの頻度を上げないといけないですね」


 ドルフさん、めちゃくちゃ唐揚げ気に入ったようだ。


 ゼリーにシロップ、唐揚げ。この村に来て5日でこれはいいペースなのでは無いだろうか?



「おーい。誰かいないの〜」


 ドルフさんの家の玄関から声が聞こえてきた。



☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★


ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。


もし物語を少しでも楽しんでいただけたようでしたら、

【いいね】や【★(星)】をつけていただけると、大変励みになります。


今後の執筆の力になりますので、応援していただけたら嬉しいです。


☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★


唐揚げにはレモンかマヨネーズが欲しくなります。

タルタルソースがあれば、最高ですね。

お腹が空いてきましたw

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