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12. 村の問題

12話目です。

村の村長に話を聞きます。

「アキラ、朝だよぉ」


 頬をペチペチとソラちゃんが叩いている。

 どうやら温泉でのぼせて、そのまま部屋に寝かされたようだ。


「ソラちゃん、おはよう。っ!!痛い」


 昨日の全力疾走&階段登りで全身が筋肉痛だ。

 動くだけで鈍痛が走る。しかし、今日は村の現状を聞くために村長のドラフに会う予定となっている。

 とにかく服を着て準備しよう。

 痛みに耐えて、なんとか服を着ることができた。


「痛っ!」というたび、ソラちゃんがぴょんって跳ねて遊んでいた。


 準備ができたので、楓様の部屋に行き、村に行くことを伝えると、楓様の力で村まで送ってもらえることになった。


「心の準備は良いかの?」

「・・・」


 俺は、今楓様の小脇に抱えられている。

「では行くぞ」

「ギャァァァァ」


 ものすごい速さで、木の上を跳躍していく楓様。

 ジグザグと続く鳥居の列を無視して、村まで一直線にショートカット。


「ほれ、ついたぞ」

「はぁ、死ぬかと思った」

「なんじゃ、情けない。お主、妾の修行を受けるのじゃろ?この程度は軽くできてもらわねば困るぞ」

「ソラ、楽しかったよぉ」

「うむ、ソラは見どころがあるの」

「ソラ、見どころあるぅ?」


 ソラちゃんはぴょんぴょんしている。いつでも楽しそうでよかった。

 赤い鳥居の1つ目の前に到着したところ、ドラフさんが迎えてくれた。


「楓様にアキラ様。お待ちしておりました」

「ドラフよ。アキラにこの村の状況を説明せい」


「楓様、承知しました。まずは、我が家にご案内します」


 案内されたドラフさんの家は、大きめではあるが、質素な家であった。

 出されたお茶は、麦茶のような味であった。楓様は、お茶を飲みつつくつろいでいる。

 ここから先は、俺が自ら情報収集しろということなのだろう。


「早速ですが、ドラフさん。この村の状況を教えてください」

「アキラ様はこの地は初めてと聞いております。まずは、この村の地理について説明した方がいいでしょう」


 ドルフさんによると、ヴィリジアンヴィレッジは周囲をぐるっと4,000m級の山脈「神の頂」に囲まれた盆地の中にあるという。近くの天の湖(アマノミズウミ)には、リザードマンの集落があるようだが、湖の対岸のため交流はない。俺がグレーウルフに襲われそうになった「グリーンウッドの森」には、ゴブリンが住んでいる。あとは、ところどころに平原が広がっている。魔物自体は弱いものが多く神の頂の中で活動することはあまり危険はない。しかし、神の頂を越えることが難しく、外界から滅多に人が来ない地であるということだ。



「ヴィリジアンヴィレッジはエルフの集落であり、世界樹を守ってきました。食料は、森と湖の恵みで賄い、大抵のことは魔法でなんとかします。

「さすがエルフですね」

「えぇ、エルフは、全属性の魔法に適性がありますから。 コホン、それでは話を戻しますね」


 ドルフさんの話は続く。

 ある時、人間の集団が神の頂を超えてやってきた。それから数日後、村人が20人ほどが原因不明の病になった。

 エルフの魔法でも回復せず困っていた。その時、人間の集団の中にいた医師が、もしかしたら持っている薬が効くかもしれないという。しかし、その薬が非常に高価であり、手持ちの薬で治せる人数にも限りがあるとのこと。

 神の頂を超えて、トリプレットデザートという王国に行けば、さらに薬が手に入るという。そこで、高齢のエルフに薬を回し、体力のある村の若者は、その人間の集団についてトリプレットデザートに行く事となった。


「その、人間の集団はその後、どうしたのですか?」

「えぇ、彼らは、薬の対価として、世界樹の果実を乾燥させた「ドライワルド」を譲って欲しいと言ってきました」


 ヴィリジアンヴィレッジは、外界との繋がりがなく、外貨で支払うことができなかったそうだ。そこで、本来、村から持ち出すことの禁じられている世界樹の果実を乾燥させたドライワルドを渡すこととなったようだ。


「彼らは、ドライワルドを求めてヴィリジアンヴィレッジに来たようです」


 そして、治療のためにトリプレットデザートへ行った若いエルフたちは、外の世界を知り、村に帰ってこなくなった。それが、この村が過疎化した原因であった。


 その人間の集団が非常に怪しいが、連れていった若いエルフたちが奴隷として売られたということもないらしい。

 きちんと治療を受けて自由となった。高価の薬というのも嘘ではなかった。それを「ドライワルド」5粒で村の人全員を治療してくれたのだ。悪い人間というわけではないのかもしれない。


「これらの情報は、村を出て行商を生業とするようになったギアナが持ち帰ったものです」


 村を出たが、定期的に村に帰ってくるエルフがいるようだ。


「重要な点なので確認したいのですが、村のエルフたちは、奴隷などになることなく、神の頂の外で暮らしている。そのエルフたちが、村に帰ってくるようにしたいということですね?」

「そういうことです」


 人間の集団のあたりで、奴隷解放イベントのフラグかと思ったが、どうやらそうではないようだ。

 田舎の暮らししか知らなかった若いエルフが、外の世界を知り、帰りたくなったということなのだろう。

 まさに村興し。悪の組織に潜入して、奴隷解放よりは、ハードルが低い。というか、奴隷解放とか無理。


「現状はわかりました。・・・・

 うーん、そうですね、まずエルフに拘らず、村に人を呼ぶことを考えましょう。村を魅力的にすることで、外の世界よりも魅力ある場所にすることで、人の往来を増やします。人が増えると、宿屋や食事処などの仕事ができるので、定住する人も出てくるかと。最終的には、エルフの若者も帰ってくるようになると思います」


「しかし、我々には、何が魅力的かもわからないのです」

「そうですね。神の頂の外の情報がないと、何が魅力的かわかりませんね。ギアナさんでしたっけ?その方の話が聞ければ、何かしらのヒントになりそうですね」


 ドラフさんが、次にギアナが訪れた時に紹介してくれる事になった。


「あとは、特産品を作るのも一つの方法ですね。・・・」


『それでは、世界樹の果実を使った特産品を提案します。世界樹はガウス唯一の存在であり、他国に対して、非常に優位性があります。』


 お、メーティスさんがナイスアイディアを提案してくれた。


「世界樹の果実を使った特選品。そういうものが作れるといいかと」

「世界樹の果実ですか。考えたこともありませんでした」

「世界樹の果実を見ることができれば、何か思いつくかもしれません」

「世界樹の果実については、妾が教えてやるのじゃ」


 今まで、黙って聞いていた楓様が割り込んできた。


「課題は見えたのじゃろう?そろそろ、飯を食って帰るのじゃ。夜までに間に合わなくなるでな」

「いや、今ちょうど昼ですよ」

「フフフ。そうじゃな、昼飯の時間じゃな」

「そうでした。フク、昼食の用意を」

「はいよ。もうできてるよ」


 俺らは、フクさんの昼食をいただいた。

 ちなみに、フクさんはエルフの村で一番の料理上手だという。

 相変わらず、薄い塩味。

 名物料理についても、改善のやりがいがありそうだ。



ついに始まりました。村興し。

ミコト様の言う通り、魔物は弱い地域だったのですが、周りを山脈に囲まれている陸の孤島でした。

世界樹のある秘境。ヴィリジアンヴィレッジは、どうなっていくのか楽しみです。

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