VOL.60 禍福
つい最近まで、俺の人生はバラ色だった。
俺は、若くして会社を起ち上げた。
仕事も順調だし、彼女にも不自由しない。
仕事がなくなれば、どこからかオファーがかかり、彼女に飽きれば、また別の女性が現れる。
世の中、すべて俺を中心に回っているとしか思えないほど、なにをやってもうまくいった。
二十代後半で脱サラし、会社を起ち上げてから十年ずっとこんな調子だ。
そんなんだから、俺には怖いものなど、なにもなかった。
そんな俺の歯車が、あることをきっけに、俺の運命は逆転した。
それは、見てくれだけはいいが頭の中はからっぽという女と、とあることから知り合い、暫く付き合った後、こっぴどく振ったことから始まった。
その女の兄貴というのが、世間に名の知れた広域暴力団の幹部だった。
そうと知っていたら、もう少し違う別れ方をしたのだが、そんなこととは露ほども知らない俺は、調子に乗って手酷くやってしまったのだ。
頭がからっぽと思っていたのは俺の間違いで、女は繊細な神経を持っていた。
傷付いた女は、自殺を図った。
未遂に終わったが、可愛い妹をそんな目に追いやった俺を、許しておくはずがなかった。
ボコボコにされるわ、稼いだ金は巻き上げられるわ、あまけに、会社まで潰されてしまった。
調子に乗ると、ろくなことがない。
固まりつつあるコンクリートの中で、俺は後悔していた。
順調な俺の人生が、最後は後悔で終わろうとは、夢にも思わなかった。




