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20行ショート  作者: 冬月やまと
60/440

VOL.60 禍福

 つい最近まで、俺の人生はバラ色だった。

 俺は、若くして会社を起ち上げた。

 仕事も順調だし、彼女にも不自由しない。

 仕事がなくなれば、どこからかオファーがかかり、彼女に飽きれば、また別の女性が現れる。

 世の中、すべて俺を中心に回っているとしか思えないほど、なにをやってもうまくいった。

 二十代後半で脱サラし、会社を起ち上げてから十年ずっとこんな調子だ。

 そんなんだから、俺には怖いものなど、なにもなかった。

 そんな俺の歯車が、あることをきっけに、俺の運命は逆転した。

 それは、見てくれだけはいいが頭の中はからっぽという女と、とあることから知り合い、暫く付き合った後、こっぴどく振ったことから始まった。

 その女の兄貴というのが、世間に名の知れた広域暴力団の幹部だった。

 そうと知っていたら、もう少し違う別れ方をしたのだが、そんなこととは露ほども知らない俺は、調子に乗って手酷くやってしまったのだ。 

 頭がからっぽと思っていたのは俺の間違いで、女は繊細な神経を持っていた。

 傷付いた女は、自殺を図った。

 未遂に終わったが、可愛い妹をそんな目に追いやった俺を、許しておくはずがなかった。

 ボコボコにされるわ、稼いだ金は巻き上げられるわ、あまけに、会社まで潰されてしまった。

 調子に乗ると、ろくなことがない。

 固まりつつあるコンクリートの中で、俺は後悔していた。

 順調な俺の人生が、最後は後悔で終わろうとは、夢にも思わなかった。



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