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VOL.54 のし上がる
牧子は、貧乏な家に生まれた。
そのせいか、子供の頃から贅沢な暮らしを夢みていた。
勉強はできるほうではなかったが、容姿には優れていた。
天が与えてくれたこの美貌を疎かにするなんて、神に対する冒とくだ。
幼い頃から、ずっとそう思っていた。
高校を卒業して直ぐに、夜の世界に務めた。
てっとり早く稼げるのは、それしかないと思ったからだ。
それに、野望もあった。
キャバクラから始まり、ラウンジ・クラブと、どんどんとステップアップしていった。
細客はそれなりに、太客は大胆に、利用できるものは誰でも利用した。
三十路を過ぎた頃には、六本木の高層マンションに住み、宝石も、腐るほど持っていた。
今や、銀座の高級クラブに勤める牧子の客には、有名芸能人を始め、政界・財界でも著名な人々がいた。
しかし、どんなに裕福になっても、牧子の欲が満たされることはなかった。
いろんなものを手にすればするほど、もっともっとほしいという欲求が高まる。
牧子は、この世のすべてを独り占めしたかった。
そのために、男を騙し、男に貢がせ、用済みになると、あっさりと切り捨てていった。
牧子のせいで破産した男は数知れない。
今、牧子はこう呼ばれている。
銀座の魔女と。




