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20行ショート  作者: 冬月やまと
54/440

VOL.54 のし上がる

 牧子は、貧乏な家に生まれた。

 そのせいか、子供の頃から贅沢な暮らしを夢みていた。

 勉強はできるほうではなかったが、容姿には優れていた。

 天が与えてくれたこの美貌を疎かにするなんて、神に対する冒とくだ。

 幼い頃から、ずっとそう思っていた。

 高校を卒業して直ぐに、夜の世界に務めた。

 てっとり早く稼げるのは、それしかないと思ったからだ。

 それに、野望もあった。

 キャバクラから始まり、ラウンジ・クラブと、どんどんとステップアップしていった。

 細客はそれなりに、太客は大胆に、利用できるものは誰でも利用した。

 三十路を過ぎた頃には、六本木の高層マンションに住み、宝石も、腐るほど持っていた。

 今や、銀座の高級クラブに勤める牧子の客には、有名芸能人を始め、政界・財界でも著名な人々がいた。

 しかし、どんなに裕福になっても、牧子の欲が満たされることはなかった。

 いろんなものを手にすればするほど、もっともっとほしいという欲求が高まる。

 牧子は、この世のすべてを独り占めしたかった。

 そのために、男を騙し、男に貢がせ、用済みになると、あっさりと切り捨てていった。

 牧子のせいで破産した男は数知れない。

 今、牧子はこう呼ばれている。

 銀座の魔女と。


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