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VOL.55 茶番
「ここは、死んでも通さぬ」
「意地を張るな、権之助」
「意地ではない。主君を守るのが家臣の務め」
「あんな主君でもか」
「どんな主君であろうが、主君は主君」
「あいかわらず、融通の利かぬ奴」
「なんと言おうと、ここは通さぬ。通りたければ、わしを倒してゆけ」
「どうしてもか? ならば、仕方がない。いざ、ゆかん」
二人は、剣を交えた。
実力は伯仲とみえ、何十合打ち合っても、なかなか勝負はつかない。
「何をしている。今のうちだぞ」
夢ノ進の声と共に、二人の勝負を見守っていた侍共が、先へと駈けていった。
「あ、卑怯」
叫び、後を追おうとする権之助の体を、夢ノ進の刃が掠めた。
「お主の相手は、この俺だ」
二人が、再び刃を重ねる。
「みんないなくなったようだな」
二人きりになったのを確かめて、権之助が言った。
「そうだな。お互い、暗愚な主君を持つと苦労するな。では、行こうか」
二人は、肩を並べて、誰もいない方へと歩きだした。




