VOL.49 意地
9回の裏、ツーアウトまできていた。
あと一人打ち取れば、甲子園行きが決まる。
ここまで、長い道のりだった。
富山は、マウンド上で感慨深い思いに捉われていた。
今対戦しているのは、富山投手が前にいた高校だ。
将来を嘱望されながら、同じ学年の投手に、その学校の理事長の息子がいた。
そいつとは実力が伯仲していたが、富山の方が少し上だった。
実力で負けたのならまだしも、自分の息子をエースにしたい親バカ理事長に逆らえず、監督は富山を試合に出さなかった。
それだけならまだしも、無実の罪を着せられて、富山は学校を退学になった。
理事長は、議員にも顔が利くほどの大物だったので、甲子園に手の届きそうな学校へは転校できず、富山は出れば1回戦負けの、不良の多い最低の高校に転校するしかなかった。
理事長や、自分を追い出した監督への復讐に燃える富山は、1年間その学校で暴れ回って、とうとう番長の座と、野球部キャプテンの地位に就いた。
富山に心服した野球部員たちは、富山の夢を叶えるべく、地獄の練習を積み上げた。
そして、高校最後の夏の予選に臨んだ。
自分を追い出した高校は、理事長の息子の活躍で、その年の選抜ベスト4に入っていた。
その学校と決勝戦で当たった。
富山は、このためだけに、この2年血の滲む努力をしてきた。
渾身の1球にバットが空を切ったとき、富山は天に向かって雄叫びをあげた。




