VOL.48 不幸な男
真一は、生まれながらに何かを持っていた。
勉強は学年で常にトップで、運動神経もよく、どんなスポーツをやっても、そつなくこなした。
おまけに、背も高くイケメンときているので、彼女に不自由したこともない。
そんな真一だから、労せずして日本最高峰の大学に受かり、卒業しては警視庁キャリアの道を、順調に歩んでいた。
若くして警視総監まで昇りつめると将来を嘱望されていたが、なぜか四十路を少し過ぎた辺りで退職し、政界の道を選んだ。
無所属で臨んだ市会議員の選挙でトップ当選を果たし、県会議員、国会議員と順調にステップを踏んで、五十路を過ぎた頃には総理大臣になっていた。
ここまで、そんなに苦労したという記憶はない。
なぜか、やることなすこと、すべてが上手くいくのだ。
真一が総理になってから、アメリカや中国やロシアという大国とも対等以上に渡り合い、どこの国からも舐められなくなった。
真一は、六十半ばで政界を引退した。
ここら辺で、自分のしたいことをしようと思ったからだ。
だが、自由になっても、なにもしたいことが見つからなかった。
いろいろ試してみたが、真一はどんなことでも簡単に出来てしまう。
努力も苦労もせず、なんでも思い通りになる。
思うことをすべてやり尽くした真一は、毎日空ばかりを見つめるようになった。
これほど、不幸なことはないだろう。




