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VOL.40 ぜひもなし
本能寺は、紅蓮の炎に包まれていた。
手下が信長の遺骸を探し求めているが、どこにも見つからない。
いくら業火に焼かれているとはいえ、骨も残さず消え失せてしまうはずはない。
光秀は焦っていた。
信長を討った証があるのとないのとでは、雲泥の差がある。
天下を我が物とするには、信長の首が必要なんだ。
それに、信長が滅んだという確たる証がなくては、とても安心できない。
万が一生きてでもいられたら、たちまち自分の首が危うくなる。
一万を超える手勢が、躍起になって隅々まで探した。
焼け落ちた柱や天井を取り除き、本能寺の境内をくまなく掘り起こしもした。
しかし、四次元にでも消えてしまったように、信長の遺骨は、欠片さえも見つけることができなかった。
光秀は知る由もなかったが、信長は、四次元の彼方へ飛ばされていたのだった、
そこからは、下界の様子がたなごころを指すがごとく見て取れた。
天王山の戦いから、賤ヶ岳の戦い、果ては、関ケ原、大阪冬・夏の陣まで、つぶさに信長は見ていた。
自分だったらああするのにとかこうするのにとか、それはもう、歯がゆい気持ちで見ていた。
とかくこの世はままならぬ。
ぜひもなし。
そう思った瞬間、信長の魂は浄化されていった。
四次元とは、この世とあの世の境界線だったのだ。




