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VOL.29 油断大敵…
世は、まさに戦国時代。
経済戦争の真っただ中。
それは、ボーダーレスの時代になってから、ますます激しさを増してゆく。
大手商社に勤める満の座右の銘は、敵を知り己をしれば百戦危うからずだ。
有名な孫子の兵法の言葉である。
敵をしらないで自分だけを知っていれば五分五分、敵のことも自分のことも知らなければ必ず負けると続く。
満は、いつもその言葉を心掛け、毎日自分を戒めている。
彼は、新規開拓をする取引先のことを徹底的に調べる。
少しの身も残さず、骨をしゃぶり尽くすように、それはもう徹底的に。
そして、自分との相性を考え、最善の方法を考え出す。
それだから、彼はこれまで、商談に失敗したことがない。
満は、とんとん拍子に出世してゆき、三十代にして部長となった。
このままいけば、五十路を迎える前に社長になるのではないかという噂さえ、まことしやかに囁かれるようになった。
そんな満が、社長の椅子に座る寸前、部下に足許を掬われて失脚した。
満の間違いは、知らぬうちに部下を敵に回していたことだ。
いつの間にか彼の中に巣食っていた驕りが、彼の目を狂わせていた。
油断大敵。
それからの満は、この言葉を座右の銘にした。




