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それで伝説へ

　この投手（とうしゅ）は長年（ながねん）、プロ野球で活躍（かつやく）してきた。

　しかし、今日（きょう）の試合（しあい）で引退（いんたい）する。これが最後（さいご）の登板（とうばん）だ。

　無言（むごん）でマウンドに向（む）かう。客席（きゃくせき）からは熱（あつ）い声援（せいえん）だ。

　そして、この投手（とうしゅ）は伝説（でんせつ）になる。ものすごい記録（きろく）を打（う）ち立（た）てた。

　現役（げんえき）最後（さいご）の登板（とうばん）で、

「いてっ！」

　五者（ごしゃ）連続（れんぞく）のデッドボールだ。渾身（こんしん）のストレートで、相手（あいて）打者（だしゃ）によけるひまを与（あた）えない。

　すぐさま乱闘（らんとう）がスタートした。

　で、型（かた）破（やぶ）りの活躍（かつやく）をする。

　相手（あいて）チームの選手（せんしゅ）を十三人もＫＯした。マウンドの横（よこ）に積（つ）み重（かさ）なる、被害者（ひがいしゃ）たちの山（やま）。

　たまらず審判（しんぱん）が叫（さけ）ぶ。

「さすがに退場（たいじょう）ーっ！」

　降板（こうばん）直後（ちょくご）に予定（よてい）されていた引退（いんたい）セレモニーは、球場（きゅうじょう）内（ない）の別室（べっしつ）で行（おこな）われることになった。

　球場（きゅうじょう）にいる者（もの）たち全員（ぜんいん）に、強烈（きょうれつ）な印象（いんしょう）を叩（たた）き込（こ）んだ引退（いんたい）劇（げき）である。

　この伝説（でんせつ）を打（う）ち破（やぶ）る者（もの）は、未（いま）だ現（あらわ）れていない。

次回は「イタリア」のお話です。いつもよりも長いので、分割しています。