球場前でランプを拾った
もうすぐ高校野球の全国大会が、この屋外球場で行われる。
その前を昼間に通りかかって、光る物が地面に落ちているのを見つけた。
中東のおみやげにありそうなデザインの「ランプ」だ。擦ると魔人が出てくるようなランプ。
それを拾い上げると、冗談のつもりで擦ってみる。
すると、ランプから白い煙が出てきた。
そして、本当に現れたのだ。アラビアンナイトっぽい服装の大男が。
思わず後ずさる私。
大男はなぜか、野球のヘルメットをかぶっていて、
「ご主人さま、願い事をお一つどうぞ。かなえてさしあげます」
うやうやしく一礼してくる。
願い事? じゃあ、このランプは「本物」?
「大変恐縮ですが、願い事は三分以内にお願いします。時間を止めておく魔法は、かなり大変でして」
それを聞いて、私は周囲をきょろきょろしてみた。
本当だ。そこら中にいる人全員、無言で停止している。まるでマネキン人形みたいだ。
「あと二分三〇秒です」
「あの、願い事をかなえてもらうかわりに、お金とか寿命とかを、とられるんですか?」
質問した直後に、「しまった」と思った。
今の質問に答えることで、願い事を消費。そんな展開が、普通にあり得る。
大男はニヤリとすると、こう告げてきた。
「願い事の対価は不要です」
「ほ、ほんと?」
「このランプはですね、悪人には見えません。触ることもできません。善人だけが、見たり触ったりできるのです。そんな方から、対価は頂戴していません。タイムリミットまで、あと二分です」
自分が善人かどうかは自信がないけれど、昔から「お人好し」だとはよく言われていたかも・・・・・・。
(どうしよう?)
買ってもいない宝くじに、いきなり当たった気分だ。
今すぐに「これ!」というのが思いつかないので、定番ではあるけれど、
「じゃあ、世界平和で」
「あ、そういうのは無理です」
野球ヘルメットの大男が拒否してくる。
「私は野球の魔人なので、野球に関する願い事しか、かなえることができません」
「あ、そうなんですか。そうとは知らずにすみません」
私は考える。野球に関する願い事か・・・・・・。
そこでふと、すぐそばにある屋外球場を見上げた。
ここでもうすぐ、高校野球の全国大会が開催されるのだ。
毎年、炎天下での試合が続く。熱中症で倒れる選手も少なくないとか。
「あと一分です」
他の願い事がまったく思いつかないわけじゃないけど、これにしておこうかな。
私は大男に言ってみる。
「この球場でもうすぐ、高校野球の全国大会があるんですけど、毎年暑くて選手たちが大変そうだから、涼しくしたりとかできます?」
「お安いご用です」
「じゃあ、その願い事で」
「それでは最終確認です。今なら別の願い事に変更できますけど」
「変更しません。この球場を涼しくしてください」
「かしこまりました」
大男が指を鳴らすと、屋外球場の姿が一変した。
なんと、ドーム球場に変わったのだ。
「おおっ!」
ドーム球場なら屋根があるし、冷房もあるはず。
でも、このドーム球場、どこかで見覚えがあるような・・・・・・。
「北海道にあるドーム球場と、場所を入れ替えました。北海道なら、ここよりも涼しいですから」
そう言うと大男は、ランプともども消えてしまった。
同時刻、北海道では大騒ぎになっていた。
高校野球の聖地が、北海道に移転!?
さあ、今年も高校野球の全国大会が始まる。
次回は「小学生の女の子」が出てきます。




