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まなざしの向こう岸  作者: 十二滝わたる
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従兄弟

 昨年の年末は大変な騒ぎだった。ヨシアのいた炭鉱は落盤と火災という二つ同時の事故により、鉱山内部に閉じ込められた人達の救出作業は難航し、難航した挙げ句に火災は収まらず、鉱山入り口をすべて爆発してふさぐ方法しか残されていなかった。

 その間、僅かに数ヶ月の出来事だった。

 山奥の丘の町は鉱山のためだけの町であったから、閉山されればすべての従業員は山を降りなければならなかった。

 突然の解雇は行く当てのない労働者で溢れかえった。

 春までには山そのものが崩壊する恐れもあったために、職も当てもないままに、避難するような勢いで、山から移動しはじめた。

 すべての従業員が去った町は廃墟そのものだった。

 丘の町まで叔母さんを訪ねて麓の温泉町からボンネットバスに揺られて行ったのは2年前だ。

 ヨシアはやっと自分で歩けるようになった頃だ。ずいぶんと私に慣れていたけど、今回まで覚えているはずはないとたかをくくっていたが、ヨシアは顔を見るなり「ケーたん!」といきなり私の名を呼んだ。

 あの頃、ヨシアのガールフレンドのノンちゃんは、あの落盤事故でお父さんが亡くなり、お母さんも元気がなく、今は親戚の家に引き取られていると、風の便りに聞いている。

 ヨシアは相変わらずマイペースであんな事故のことも、引っ越したことも、ほとんど気になってはいないらしい。

 私とヨシアは干支ちょうど一回り程の年の差の従兄弟だ。ヨシアは私を見るときはいつもは小さな目が大きく開き瞳孔も大きくなる。私はどうやらヨシアからは好かれているらしい。私も不思議にヨシアが気になってしょうがない。

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