ボンネットバス
春も間近と言うのに昼すぐから天気は崩れてチラホラと雪混じりのみぞれのなってくる。
伯父さん達は、せっかく山から下りてきて、素敵な噴水公園や楽しい動物園、野球場もある大きな街に引っ越してきたのに、何でまたこんなに山際の街外れの田舎の土地に引っ越してきたんだろう。
中心の駅舎からバスで30分、終点のバス折り返し駐車場から歩いて15分、車掌さんの乗ったボンネットバスはスチームの暑さと乗り合い人々の熱気で気持ちが悪くなってくる。駅からすし詰めのバスは次第に減り始めたものの、終点に着く頃になっても、また、半分は乗ったままだ。
大きなバスは唯一の交通手段ではあれ、戦争の空襲を受けていない何もない街の路地は作場道ばかりで、バスも通れない。
終点からはぞろぞろとお年寄りから子供まで、四方に散るように歩き去った。
小さな河に架かる渡り、堤防沿いを上流に歩きくと大きなお寺の境内まで行く。
こんなに遠いところにと足の疲れを感じたまま、境内の先のお墓に目をやると、数人の子供が墓石の上で遊んでいる。
お墓の頭の上にズックで立ちながら、墓石を渡り歩く罰当たりのくそガキどもかと思った瞬間、その一人がヨシアであることに気が付く。
「ああ、いた、見つけた」と、遠方から一緒に汽車に乗り、バスに乗りやって来た叔母に話しかけた。
「あ、お墓を足蹴にするなんて、罰が当たりよ」と言った瞬間、ヨシアは頭からまっ逆さまに転落し、墓石の角に脇腹を打って、その場で悶絶している。
「ヨシア、大丈夫かあ」と、駆けつけると、苦しそうな顔をして、ウン~と唸っていたヨシアは私の顔を見て不思議な笑いを返してまた、悶絶した。
落ち着くまでその場で休み、ヨシアから家に案内してもらうことにした。
山奥の炭鉱の町から突然いわゆる都会の街にやって来たと思ったけど、すぐ裏山に別け入る道もあり、伯父さん達もヨシアも、そばに自然がある場所を選んだのだろう。
ヨシアと会うのは2年ぶりだ。




