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まなざしの向こう岸  作者: 十二滝わたる
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 天空の丘の町にも寒い冬がやって来た。天空の丘の冬は長くことのほかに寒い。

 朝から降り始めた今年初めての雪は、瞬く間に枯れた木々を美しい姿に変えていく。

 降り積もる雪は木々の枝を弓なりに丸め込み、耐えきれなくなった枝は雪の重さで十分なしなりの後に、雪を払いのけて勢いよく元の位置に戻っていく。

 大地も丘の高さも低さも分からなくなるほどに白一色に覆われた。

 ヨシアは3歳になり、初めての冬では無いものの、やっと自分と周りの自然との区別が付いたのだろう、雪を見てことのほかに喜んだ。白い無数の蝶々が天空から静かに舞い降りてくるのだから。

 午後からはヨシアと一緒に丘の坂道で雪の上を転げ回った。雪を行軍し雪を掴み、食べ、雪に埋もれるだけで、まるで別世界い迷い混んだような気分だ。

 私も冬が終わり春がくると、丘の町の小学生となる。ヨシアといつも一緒にいられる時間は今だけかと思うと少し寂しくなってくる。

 けれど、ヨシアも私もいつまでもこの丘にいるのだ。好きなときに会えることのは変わりはない、そんな風に思っていた。

 午後3時頃になると山の端にすっかり日は落ち当たりも薄暗くなってくる。

「ヨシア、そろそ、家に戻ろうか」と声をかけると、けたたましいサイレンが町中に鳴り響いた。二人は「バイバイ」とそれぞれ別れの言葉を残し家に一目散に逃げ帰った。

 これがヨシアとの最後の別れとなることもを、私は知るよしもなかった。

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