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まなざしの向こう岸  作者: 十二滝わたる
10/15

 ヨシアと小学校のグランドで運動会のリレーの練習をしていると、ヨシアは突然練習をやめて遠くの山の方角を見つめている。

 「どうしたの」と声をかけて、ヨシアが見ている方向を見ると、平らな高原の背後にそびえる扇の形の峰を持つ山の重なりは、まるで仏の台座のように思えるのだが、その仏の台座を囲むように鮮やかな丸い二重の虹が綺麗にできていた。

 「綺麗に」と思わず声を上げたが、ヨシアのような小学生の男の子が虹に見とれているのを初めて見た。

 「ロマチチストだね」と声をかけると

 「いや、視力の回復体操」と素っ気ない返事が反ってきた。

 小学校は田んぼの真ん中にあり、駅の側からくる街の子どもと田んぼの西からやってくる点在する集落から来る子どもとで小学校は構成されていた。

 田んぼの向こうから来る奴らは言葉から田舎ものそのもので、はなは手で拭くし、忘れ物はするし、乱暴で、虹など見ないし、余り仲良く慣れない。美味しくない給食も田舎の子達は「おいしい」と言ってお代わりしてがつがつ食べているけど、古新聞のようなパサパサのパンと家の猫のタラが食べているようなぬるいスープに目の色を変えているあの子達は動物的で洗練されてなく、私には考えられない驚異でもあった。

 ヨシアは私と同じ駅のから来ると数少ない子どもの部類だ。朝は別々の登校だけど、同じ学年同じクラスだから、帰りは一緒に帰る。運動会のリレーの選手に選ばれるのも一緒だった。

 何故かヨシアとは六年間同じクラスだ。3クラスしかないんだけど偶然なのか、私がパパにヨシアと一緒に居たいと密かにお願いしてたからなのか、分からない。

 でも、ヨシアは女の子なんかに興味はないらしい。だから、いつもヨシアのことが好きだよなんて言わないで黙っている。

 ヨシアは小学校に入学するときにどこからか突然、私の家の近くに引っ越してきた。

 静かな大人しい子だった。お転婆の私とは全く違う。

 ヨシアは突然、「あ~」と声を上げた。いつの間にか虹が無くなっていた。

 「虹を見つけたけど、あった言う間にお化けがだんだん薄くなり消えて行くようにのように残像だけを残して消えていっちゃった、消えていくのを見るほうが寂しいね、見つけるんじゃなかった」

 「お化けって見たことあるの」

 「あるよ」

 「どこで」

 「炭鉱で」

 「炭鉱ってどこの」

 「覚えてないけどね‥夢の中の‥」

 ヨシアはまた走り出した。

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