四百三十九話 違和感
『アーシル=ケイル side』
2人で、彼女の肩に優しく触れる。
女神でも、恐れ多い存在でもない…………恐怖で震える、友に。
「……僕たちは、何も知らない。ウルスさんという存在のことを…………だから皆のように、彼のために戦うなんて真似はできません。ただ……」
「あいつを慕う奴らの勇姿は、もう知ってしまってる……お前も、そうだったんだろ?」
「…………っ」
友人ではない男のために、僕たちは情を移せない。だが……その周りにいる人たちは彼に手を貸すことを望む。ならば…………理由は、それだけでいいんだ。
「1人じゃない、俺たちはお前の味方で……友達なんだ。対等で、歪むことのない同級生…………」
「……あなたに、僕たちは着いていきます。この先、何があろうとも……フランさんと戦ってきた皆と共に。『変われた』のなら…………変えてやりましょう!」
「……!」
……きっと、みんなそうだ。誰かを変えて、変えられて…………それをここで絶やすことは許されない。
「……ありがとう……シーク、アーシル。」
この幼く、か細い笑顔を…………絶やすな。
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『ミーファ side』
「…………ミーファ。」
「……もう、大丈夫ですよ。だから手を……」
「いや…………離したくない。」
ベッドで寝ている私の手を、ハルナは離そうとしなかった。昨日がずっとこうだったようで……眠そうな眼が、余計辛かった。
『……えっ、『帰ってくるな』って……』
『…………言葉の、ままだ。学院には俺たちが話をつける……だからハルナ、ミーファ。もう、別れてくれないか。』
『ウルス、様……私は……事故、だって……』
『…………そういう、ことだ。』
『で、でも……私たちは……ウルス様、が……』
『…………行ってくれ、早く。もう……喋りたくないんだ。』
…………信用、されてなかった。あの日も、今日も……最初から…………守られてたんだ、私たちは。
『……辛いなら、俺に全部預けるんだ。お前が魔法を使えるようになるまで、俺は絶対に消えない……そばにいる。』
『…………っ……ウルス、さま……』
『生きよう、ミーファ。お前たちは……誰よりも幸せになるべきなんだ。お前たちは…………俺の弟子なんだ。』
「…………弟子。」
結局、ウルス様にとって私たちはそうなんだ。どこまで行っても守るべき存在で……何も知らなくていいんだって、甘やかしてくれる。
嬉しいよ、これ以上ないくらい幸せなことなんだ……でも、でも…………イヤだよ。
『…………俺は、何もしてやれてない。』
いっぱいしてもらったんだ。文字も、服の着方も魔法も生き方も……師匠じゃないんだ、あなたは。
『……自分が何をしたいのか、どうして生きているのか…………考える暇も与えずに俺は……強くなることを強しいてしまった。2人が本当に成りたかったものを……俺が……決めつけた。』
決めつけてないよ、確かに寂しかったけど……全然、苦じゃないよ。あなたは、間違ってない。
『今にして思えば……2人はもう、戦いたくなかったはずだ。地獄をずっと受けてきて……もう何の危険もない、安らかな時間が欲しかったに違いなかったのに……俺は…………』
でも、それじゃあなたが……苦しむことになるから。
私はこれ以上…………家族の辛い顔を見たくないんだ。
『頼りないかもしれませんが……私にも、守らせてください。ミーファさん。』
「…………リリーおねえちゃん。」
なぜか……違和感が、なかったんだ。
消えた、繋がりは。




