闇と最強
怒りに任せてヤシロは鉄扇を投擲する。それを全力で避けるルナ。本来のヤシロの攻撃ならば、鉄扇を受け止め、投げ返す事だってできた。けれど、それができない。
「―っ!!」風圧で左頬が切れる。血が伝う。
ヤシロの力は、謎である。火属性の魔法の他にも幾つかの種類が使えるのだが、その力が、何処にもカテゴライズされていないのだ。ルナが思うに、それは、かつての[闇]の頃の名残―否、後遺症。下手にカウンターを仕掛けては何をされるかわからない。故に、鉄扇を躱したのだった。
「ヤシロ。エヴァを殺せと命令したはずだ!!何故殺さないんだ!!」ルナは問う。
「、、、」無言で炎の塊を生成し、ルナへと放つ。
「天獄!!」それを、電撃で相殺させる。
「異界神!」―それは、この世界を嫌った者のみに宿る、破滅の力。破壊の力。問答無用で全てを消し去る、使用禁止の魔法―〈禁技〉に指定されている力。
「何―!!」〈天獄〉が消される。ルナは後退する。少しでも距離を取らないと、いつ消されるかわからない。
「なぁ。何でエヴァじゃなきゃいけなかったんだ?何でエヴァだったんだ!!どうして―!!どうして、俺はいつも『こう』なんだ!!あの時も、第3次世界大戦も、現皇帝の王位継承のときだって!!俺は、いつも誰かを失ってきたんだ!!それが、それが―。もう耐えられないんだ。こんな俺の事に、〈本物〉の笑顔を向けてくれたエヴァを!!何で失わなきゃならない!!もう十分だ!!大切な人を失うのは、ガマン出来ねえ!!何で、何で―」
30年前。それは第3次世界大戦が終了した年。
28年前。それは王位継承戦争が終了した。
20年前。それは、それは―。
[闇]が暴走した年。僅か1晩で帝都の人口が2割減った、未曾有の大量虐殺。
「何で俺の大切な人は、いつも死ななきゃならなかった!!どうせ俺は誰も護れない。守れない。だったら、そんな世界は―」刹那の笑顔。刹那の涙。笑顔で涙を流すヤシロに、ルナは。何も出来なかった。何ができただろう。否、何かしなければならなかった。その『何か』が何なのかはわからない。いつも通りに結婚の催促でも良かった。
けれど、ルナは、呆然と立ち尽くして。こう叫んだ。
「ヤメロ―!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「そんな世界は、壊してしまえ」
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TO BE CONTINUED……




