兵力拮抗、城兵堅守
九月七日 巳の一つ刻(0900) 第一軍宗像氏貞幕舎 宗像氏貞
第二隊を本隊の左側に動かし、状況によって移動しつつ、戦線を膠着状態に持っていったわが軍の幕舎には、次々に情報が届く。
ただ、わたしが今一番欲しいのは援軍の情報だ。
■『ハツ ソウシ アテ ゼンシ ヒメ ワレ ヒゼンソノギ ナナツガマ シユツカウス イヌヒト(1900) カラツヨブコ イタルベシ マルナナ ツヤサキ イタルベシ ヒメ マルロク タツヒト(0700)』
この信号が到着した時には狂喜した。
昨日の昼過ぎ、未一つ刻(1300)に到着したのだ。一進一退の持久戦のなか、情報だけでも士気に与える影響は大きい。殿が指揮する第一艦隊からの通信だ。宗殿との共同である。千五百くらいにはなるだろうが、まだ到着はしていない。しかし城兵もわれらの兵も、喜びひとしおである。
■『ハツ ヨンシ アテ ソウシ ゼンシ ヒメ ナガイワジヨウ カウフクス コレヨリ キイダニジヨウヘムカウ ヒメ マルロク ウマヒト(1100)』
これは今日の深夜寅三つ刻(0400)に届いた。現状わが軍は道雪軍と戦闘状態にある。しかし具体的な戦果はない。敵を退却させたわけでも、岳山城を落とされたわけでもないから、通信は送っていないのだ。
もちろん、第一軍宛に個別に来た通信ではないから返信はしない。
■『ハツ サンシ(第三軍司令部) アテ ソシ(総軍司令部)、ゼンシ(前線各司令部) ヒメ ダイヨン ダイゴノ ハウニ セツシ ワレラ コレヨリ ヒノデヲモツテ ユフインヘイ ケイカイ シツツ フナイヘ ムカウ ブウンヲ イノル ヒメ マルロク(6日) トラニ(0330)』
午三つ刻(1200)に着いた。
第三軍は順調に豊後に侵攻しているようだ。これも同様に返信はしない。
■『ハツ サンカン アテ ソウシ ゼンシ ヒメ タダイマ サセボ アス ウノヒト(0500) シユツコウヨテイ カラツ チヤク マルハチ(八日) サルイチ(1700) ヨテイ ヒメ』
到着したのが今日七日1300である。
唐津で後藤殿、波多殿、伊万里殿、相神浦松浦殿(以下作中では長いので松浦殿と表記/平戸松浦は滅亡しているため)の軍勢が合流する。総勢三千五百が八日には到着するのだ。早朝に出港すれば九日中には津屋崎に着く事になる。
この情報は敵方にも流すべきか?流さざるべきか?流したなら、焦って攻撃を仕掛けてくるかもしれぬな。いや、流してしまえば、敵は城攻めの兵を割き、上陸したわが援軍をたたきにいくやもしれぬ。
水際にて、ちょうど上陸する際は油断も生まれているかもしれぬ。これは我軍にだけ伝えたほうが良かろう。殿の第一艦隊からの信号も、念のため敵には流しておらぬ。
■『ハツ ニシ(第二) アテ ソウシ(総司)、ゼンシ(前司) ヒメ カワラダケジヨウ カンラク テキセウ フタリ ホハク シカレドモ ソンガイ オオキク シユウリダイフ ジユウセウニテ カウサウ イタス ヒメ マルロク(6日)ウマサン(1200)』
未三つ刻(1400)に受信した。そうか、陥落したか。秋月殿、無事なら良いが。それにしても大将と副将格を捕らえられたのは大きいな。
第五軍については隈部が降伏したとの情報から先が届いておらぬ。肥後の国人衆と合流が遅れているのだろう。いずれにしろ、あと二~三日で出立できるのではないだろうか。
■『ハツ フタカン アテ ソウシ ゼンシ ヒメ タダイマ エノシマオキ ツヤサキ トウチヤクヨテイ ホンジツ サルヒトツトキ ヒメ マルナナ タツサン(0800)』
申四つ刻(1630)に受信した。おおお!援軍の到着だ!予定通りだと、すでに着いて上陸を開始しているではないか!!だとすれば、明日の早朝から行軍して、昼過ぎには合流できるぞ!急ぎ津屋崎の湊に信号を送ろう。
『ハツ ヒトシ アテ ソウシ フタカン ヒメ ハルカニシテ キタル エングン フカク シヤイヲササゲタテマツル アス ワレノ ゾンズベカラザル ホウヨリ テキノ キヨウゲキ ヲタノミ モウス ヒメ マルナナ トリヒト(1700)』
■『ハツ フタカン アテ ソウシ ゼンシ ヒメ カンタイ ツヤサキオキ トウチヤクニテ ウクグン セン ジヤウリク カイシス ウチ スイハツテツハウタイ ナナヒヤク ヒメ マルハチ ヒツシヨン(1430)』
一刻と四半刻後(2.5時間)の1700に到着した。
ようし!援軍が到着した!先に通信は送っている。重複するから送らなくてもいいだろう。今日中に上陸は終わるだろうから、明日の朝出立したとして、申一つ刻(1500)前後には到着するであろう。第三艦隊も八日の夕刻には唐津に着く。
■『ハツ ソウシ アテ ゼンシ ヒメ ワレ カスヤ アイノシマ イヌヒト イタルベシ ヒメ マルナナ サルヒト(1500) ケ ゲンカイ シン』
酉二つ刻(1730)に到着した。おそらく沿岸を航行して、最寄りの玄界島の信号所から送ったのだろう。風が吹かずに時間がかかったのだろうが、それでも明日八日には上陸から行軍、昼過ぎから夕刻までにはこちらに着くであろう。
第一艦隊から第三艦隊まで揃うのが九日中である。それまで第一と第二艦隊の兵で牽制しつつ、決戦は十日になるだろうか。