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お兄ちゃんちょろいね〜


 いつも通り俺はボロ雑巾のようになりながらも二人の隙をついてなんとか帰宅できた。


 俺はいつも思う。


 普通の高校生活を送ってみたいと。


 「……ただいま」


 「おかえり〜ンス買ってきてくれた?お徳用のやつじゃなくてあの薔薇がパッケージになってるやつ〜」


 あ……忘れてた。


 てか薔薇のパッケージってなに?


 そんなの知らん。


 「妹よ……いい加減普通におかえりと言って欲しいんだが、あとリンスは買う余裕ないし俺にはパッケージの違いが分からん」


 「……つかえないなぁ」


 「今使えないって言った?」


 目線を合わせない妹。


 「……言ってない」


 いや!この子は間違いなくお兄ちゃんに使えないって言いました!


 ふん!だ!もう怒ったかんな!許さないかんな!


 俺はリビングに入らず二階に上がっていく。


 そんな背中をきっと悲しげな目で妹は見ているのだろう。


 そう思ってチラッと横目で後ろを確認する。


 「ふふっ、心配してくれてると思ったの?ねぇ?思ったんでしょ?可愛い妹が悲しげな顔してお兄ちゃんの後ろ姿を見てるとか思ってたでしょ?」


 ニヤニヤと笑ってくる。


 「あぁ!もう完全に怒った!俺がどんだけ酷い目にあってきたか知らないくせに!」


 そう言って俺はドスドスと階段を上がっていく。


 「先にお風呂入っちゃってねーご飯は後三十分くらいで出来るからねぇ〜」


 ……着替えて20分くらいで風呂は済ませるか。


 風呂を手短に済ませてリビングに入る。


 既に夜ご飯は出来てるみたいだ。


 「今日は餃子で〜す、薄皮で餡が多めになってるから中の肉汁で火傷しないように注意してね」


 俺は無言でいつもの席に着く。


 「……お兄ちゃんまだ怒ってるの?そんなんじゃモテないよ?大好きな妹に嫌われちゃうよ?童貞のまま一生を終えちゃうよ?」


 「……モテないのは良いけど嫌われるのは困る……あと童貞言うな」


 「うわぁ……お兄ちゃんシスコンすぎて流石に私でも引く時あるから人前でそんな発言しちゃ駄目だよ?せめて二人っきりの時だけにしてね?」


 「……分かった、いただきます」


 俺は手を合わせる。


 「はい、どうぞ〜ちゃんといただきます出来て偉いですね〜」


 完全に馬鹿にしてる。


 餃子を箸でつまみ口の中に入れ噛むと中からジュワッと肉汁が熱と共に広がる。


 熱い!けど美味い!


 今度はタレをつけてご飯と一緒に食べる。


 このちょっとピリ辛なタレがご飯とよく合う。


 「美味しそうに食べるねお兄ちゃん……機嫌治った?」


 「治った」


 「お兄ちゃんちょろいね〜」


 自分でもそう思う。


 「俺も普通の高校生活を送ってみたかったなぁ〜」


 ぽろっと本音が出て来た。


 「はいはい、食べながら喋らないでね〜、てかなんでもう送れない前提なの?そんなに志保さんと美代さんと波瀾万丈な生活を送ってるの?学校内でもそうなの?」


 妹はエプロンの紐をほどにそれを椅子に掛けると俺の隣に座りいただきますと言う。


 「俺もさ……入学初日の午前中までは普通の高校生活を送れると思ってたよ……午前中までは」


 「随分と早いね……じゃあ午後からはもう諦めてたんだね」


 思わず乾いた笑いが出て来る。


 「志保と美代の性格が元に戻ってくれればなぁ〜それだけで俺は幸せなのに……あ、餃子結構熱いからお兄ちゃんはフーフーしてあげよっか?」


 「普通にうざいからやめて、てか性格が戻るって何?昔は違かったって事?」


 「……いや、こっちの話」


 あんな話しても信じてもらえないだろうし。


 そろそろ生命保険に加入しておくか。


 「てかお兄ちゃんこれ見て」


 それは餃子のタレが何やら模様のような……。


 あぁはいはいあれですね。


 いつものように視界が真っ白に光輝き始めた。

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