何度も言うけど性格がね
またいつもの日常に戻った。
つまりは……。
「待ちなさい!今日は絶対に逃さないわよ!今ならこの婚姻届けにサインしてくれれば許してあげるけどどうするのかしら!」
「雪く〜ん、美代の作った愛情たっぷりのチョコレート食べて〜」
こう言う事です!
相変わらず俺は全速力で逃げていた。
昨日は一般道を今日は廊下を。
むしろいつもの日々が一番危険なまである。
俺は昨日の夜死の恐怖に怯えながら眠った。
そして朝起きて生きていた事に喜びを噛み締めた。
思わず妹に抱きついて嫌がられるくらいには嬉しかった。
そして俺はまた死と直面してるってわけ。
志保も美代も見てくれだけは本当にどの女子より良いのに。
性格が……。
いや、見た目も良いか……?
あんな刃物を持った女性が本当にいいと言えるのだろうか?
あぁもうわけわからん。
そんなことを考えながら走っていたら前から人影が現れた。
俺は慌てて急ブレーキをかけた。
しかし勢いを殺しきれずその人にぶつかった。
そして尻餅をついた。
「痛っ……」
「ごめんなさい大丈夫ですか!?」
「えぇ大丈夫よ。私の方こそ前を見ずに歩いていたからね……けど貴方もあんま廊下を走っちゃ駄目よ?」
そう言いながら俺に手を差し伸べてくれた。
あれ?女性ってこんなに優しいんだっけ?
俺の知ってる女性像は今後ろから全力疾走で追いかけて来るそれはそれは恐ろしい人だと認識してたけど。
この人はしっかりしていて真面目そうな印象だ。
もし俺が普通の男子なら間違いなく好きになって告白していたところだ。
ってそうじゃない!
後ろから奴らが来る!
そしてこの人も巻き込まれてしまう!
「そ、それじゃあ!」
「あっ……はい」
逃げろぉ!!
俺が走る寸前に背後から微かな声が聞こえて来た。
「あ、クラス委員長丁度いいところに……これなんだけど」
あの人クラス委員長なんだ。
「ちょっと!待ちなさい!雪くん!この婚姻届に実印が朱印か押せばいい話なのよ!」
まずぅい!志保がもう迫って来ている!
「雪くん!今日という今日は絶対に逃さないわよ!美代に横槍入れさせない為にも事後にしちゃえば済む話じゃない!」
あいつとうとう冷静じゃなくなってる。
どうも考える事を放棄している。
もし仮に俺が志保と結婚しよう物なら美代に間違いなく殺される。
かなぁ〜しみのぉ〜って流れちゃうから。
「安心なさい!私達がすることはただ一つ!結婚よ!」
「落ち着け!収入もないし俺たちにはまだ早すぎるだろ!学校もあるし!」
「ふっ……残念だったわね!私は貯金が600万ほどあるわ!これを元手に二人で何かするのよ!」
なんでそんなに貯金してんだよ!
バイトでそんなに貯まる物なのか?
まさか夜のアルバイトじゃないだろうな?
「学校はどうするんだよ!」
「二人で退学しましょう」
「おかしいだろ!この間は早退するだけであんなに怒ってたのに!なんでそんな簡単に退学なんて言う選択肢が出て来るんだ!」
どうも志保と美代は基本的には正常な判断が出来るが俺の事となると見境がないみたいだ。
ただ……。
まぁね?
別に結婚する事自体は構わない。
志保だってめっちゃ可愛いし?
運動も勉強も出来てめちゃくちゃ尽くしてくれそうだし?
努力家でお願いすればなんだかんだ許してくれそうだし?
構わないんだが……。
「雪く〜ん、みっけ〜」
美代がそれを許さないよね。
実は志保より美代の方がよっぽど狡猾で頭が回るのだ。
このおっとりぽわぽわした感じは素なのだが頭が思考モードに入るとフル回転するみたい。
俺は足を止めて今度はなんとか急ブレーキをかけたがそのまま美代の胸に突っ込んでしまう。
「いやん、雪くんってば大胆なんだから……こんなところでなんて駄目なんだからね?続きは美代の家でしよ?」
はい!
って本気で言いたい。
美代さんの胸は本当に柔らかくて、ありえないんだけどぶつかる瞬間俺の脳内では確実にもにゅって擬音が鳴ってた。
美代も志保もスペックだけで見たら本当に理想の女性なのだ。
ただ……。
何度も言うけど性格がね。
「美代!私の雪くんから離れなさい!私もそろそろ限界なのよ……貴方を殺して雪くんには申し訳ないけど指を一本失って貰うわ」
ひっ!
「そんなの駄目だよ〜美代の雪くんは髪の毛一本だってあげないよ〜その辺の男子捕まえて適当に結婚すればいいんじゃない?身体は貧相だけど顔は良いんだしきっと大丈夫だよ〜」
本当誰か助けて。
鍵とか関係なく死んじゃうから。




